第1724回 ナイジェリアに勝利(3) 終盤の2ゴールで準々決勝進出
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■活躍の目立つ北中米カリブ海、アフリカ勢
決勝トーナメント1回戦、初めての真昼の13時キックオフ、初めて標高のある内陸部での試合ということでフランスの立ち上がりの動きは決してよくはなかった。このフランス-ナイジェリア戦は決勝トーナメントの3日目、通算して5試合目である。最初にベスト8へ名乗りを上げたのは南米勢対決を制したブラジルとコロンビアであった。欧州勢が姿を現したのは前日のことであり、オランダがメキシコを2-1と振り切って初めて欧州勢としてベスト8に入ったが、ギリシャはコスタリカにPK戦で敗れてしまう。南米開催の大会ではこれまでも南米勢が好成績を残してきたが、今大会はこれに加えて北中米カリブ海(コスタリカ、米国、メキシコ)、そしてアフリカ勢(ナイジェリア、アルジェリア)の活躍も目立つ。
■フランスを攻めたてるナイジェリアの攻撃
そのアフリカのチャンピオンチームであるナイジェリアは欧州予選をプレーオフの末に勝ち抜いてきたフランスに対し、積極果敢なドリブルで攻め立て、序盤は完全にナイジェリアのペースとなる。
このナイジェリアの攻撃の中心となったのが右サイドのピーター・オデムウィンギーである。ナイジェリア人とロシア人のハーフであるオデムウィンギーは2005年から2年間リールに所属する。リールでは自らのゴールでチーム史上初めてのチャンピオンズリーグ決勝トーナメント進出に導くなどの活躍を見せる。リールを離れた後、母親の母国のロシアのロコモティフ・モスクワを経て、プレミアリーグのチームに所属し、今年初めにカーディフからストークに移籍している。このワールドカップでもボスニア・ヘルツェゴビナ戦で決勝点をあげ、実にナイジェリアにとって16年ぶりのワールドカップ勝利をもたらした。
そして右サイドのオデムウィンギーからのパスを前線で受けたのがエマニュエル・エメニケである。エメニケのシュートは立ち上がりからしばしばフランスのゴールを襲うが、得点には至らない。そして19分、アメード・ムサが左サイドからクロスを上げ、エメニケが合わせてゴールネットを揺らす。しかしこれはオフサイドの判定でノーゴール。助かったフランスはここから息を吹き返す。
■フランスリーグのナンバーワンGK、ビンセント・エニェアマ
今大会で成長著しいポール・ポグバが攻め上がり、右サイドのマチュー・バルブエナとワンツーパスをかわして前進、ポグバはシュートを放つが、ナイジェリアのGKビンセント・エニェアマの好セーブにより、得点ならず。エニェアマは2011年からリールに移籍し、イスラエルのマッカビ・テルアビブに一時期移籍し、2013年にリールに復帰する。リールではスーパーセーブを連発し、フランスリーグでは1993年にガエタン・ウアールが記録した1176分無失点に続く、1062分無失点という記録を持っている。フランスリーグナンバーワンという評価のあるエニェアマはフランスにとっては大きな壁である。
ようやくエンジンのかかったフランスではあるが、前半は無得点に終わる。大量点を奪った、ホンジュラス戦、スイス戦から一転し、エクアドル戦から通算して無得点の時間が続く。
■ポール・ポグバのヘディングシュートで先制、ロスタイムにはオウンゴールで追加点
後半に入ってもフランスは前半よりは動きはよくなったが、相変わらずナイジェリアの攻撃を許す展開は続く。ここで健闘したのがフランスの守備陣である。スイス戦では2失点したが、それ以外は無失点。この守備の健闘が勝利を呼ぶ。62分にジルーに代えてアントワン・グリエズマンを投入、82分にフランスはバルブエナが左からCK、このCKに対しナイジェリアのエニェアマがパンチングしたが、そのボールがファーサイドのポグバの真正面に、ポグバがヘディングで先制点、フランスにとってはスイス戦以来実に189分ぶりの得点である。
そして後半のロスタイム、今度は右CK、ショートコーナーでカリム・ベンゼマに渡すが、ベンゼマはチャンスありと判断してバルブエナにリターン、バルブエナはゴール前のグリエズマンに合わせるが、ナイジェリアのジョセフ・ヨボが痛恨のオウンゴール、フランスは2-0で勝利し、2大会ぶりの準々決勝へ進出したのである。(この項、終わり)