第1733回 回顧・ワールドカップブラジル大会(4) ビッグクラブとなったパリサンジェルマンとモナコ

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■イタリア代表の国外組は3人ともパリサンジェルマン

 前回の本連載では決勝トーナメントで活躍したフランスのクラブの選手について紹介したが、グループリーグで敗退したチームにも多くのフランスのクラブに所属する選手がいた。
 まず、今大会は本連載の第1730回でも紹介した通り、欧州の強豪リーグを有する国が次々と敗退した。スペイン、イングランド、イタリア、ポルトガル、ロシアがそれに値する。これらの国のリーグは多数の外国人選手が在籍しており、自国の選手が活躍するチャンスを奪われているという指摘もある。イングランド、ロシア、イタリアの場合はほとんどの選手が国内リーグに所属しているが、スペイン、ポルトガルの場合は、他国のビッグクラブに所属している選手も多い。
 このような状況の中で特異な例としてこれらの国の選手を受け入れているパリサンジェルマンとモナコがあげられる。この両チームはこれまでの本連載で決勝トーナメントに進出した国の選手を抱えているが、欧州で有力リーグを持つ国の代表選手も獲得している。
 グループDで敗退したイタリアは23人の登録選手中20人が自国のセリエAに所属しているが、それ以外の選手はパリサンジェルマンの選手である。GKのサルバトーレ・シリグ、MFのチアゴ・モッタ、マルコ・ベラッティの3人である。移籍当時の監督がイタリア人のカルロ・アンチェロッティであったということもあるが、国外のクラブで指揮を執るイタリア人監督が多数いる。本来は第2GKであったシリグは開幕直前のジャンルイジ・ブッフォンの負傷により初戦のイングランド戦に出場する。第2戦以降はブッフォンにその座を譲るが、シリグの出場した試合だけがイタリアが勝利した試合となった。また、中盤のベラッティはイングランド戦、ウルグアイ戦に先発出場したが、いずれの試合も後半にチアゴ・モッタと交代している。代表チーム、しかも他国のチームで同じクラブの選手同士が交代することは極めて珍しいケースであろう。パリサンジェルマンは合計で10人の選手がワールドカップに出場したが、イタリア代表における選手交代はビッグクラブであることを象徴しているであろう。

■2人のGKがワールドカップに出場したモナコ

 コロンビア代表で得点王となったハメス・ロドリゲスを擁するモナコにはポルトガルのジョアン・モウチーニョがいる。欧州予選12試合すべてにフル出場したMFは本大会でも3試合すべてにフル出場、しかしながら決勝トーナメントには届かなかった。さらにモナコは今回のワールドカップに2人のGKを送り込んでいる。控えのGKは第1731回で紹介したアルゼンチンのセルヒオ・ロメロ、正GKはクロアチア代表のダニエル・スパシッチである。ロメロは全試合に出場したが、逆にスパシッチは出場機会に恵まれなかった。1つのクラブチームから2人のGKをワールドカップに送り込むということも珍しいであろう。

■5人がフランスのクラブに所属しているコートジボワール

 最後に紹介するのがグループリーグで敗退したフランス語圏のアフリカ勢のコートジボワールとカメルーンである。コートジボワールはグループリーグの最後の試合のロスタイムに与えたPKで敗退が決定した。コートジボワールには5人のフランスのクラブの選手がいる。右サイドバックとして日本戦で2点のお膳立てをしたセルジュ・オーリエはトゥールーズに所属している。またサロモン・カルーはリールの選手である。この2人は3試合に出場したが、トゥールーズのジャン・アクパ、サンテチエンヌのマックス・グラデル、イスマエル・ディオマンドは1試合のみの出場にとどまった。

■国外では最多7人のフランス勢を抱えるカメルーン

 そして3連敗に終わったカメルーンはマルセイユのニコラ・エンクル、ボルドーのランドリー・エンゲモ、ナンシーのベンジャミン・ムカンジョ、ロリアンのバンサン・アブバカル、レンヌのジャン・マクーン、リヨンのアンリ・ベディモ、RCランスのエドガー・サリと7人のフランスのクラブの選手がいた。この中で活躍したのはエンクル、3試合にフル出場しただけではなく、サミュエル・エトーの負傷により、第2戦以降は主将を務めたが、チームは3連敗となった。(続く)

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