第1751回 欧州選手権目指しスタート(6) 旧ユーゴスラビア勢に相性のいいフランス
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■失意のスコアレスドロー以降は旧ユーゴスラビア勢に3連勝したディディエ・デシャン
セルビアのディック・アドフォカート監督、フランスのディディエ・デシャン監督、それぞれ今回の対戦国には不思議な縁がある対戦となった。セルビアはシーズン開幕戦であり、新監督の初陣を首都ベオグラードで飾りたいところ、フランスはスペイン戦の勝利の勢いをそのままベオグラードに持ち込みたいところである。
デシャン監督にとっては現役時代のユーゴスラビアはデビュー戦でホームでスコアレスドローという苦い思い出となっているが、デシャン監督はデビュー以来、出場した試合では17戦連続で無敗という輝かしい記録を持っている。そしてデシャン監督が解体後の旧ユーゴスラビアのチームと戦うのは1998年ワールドカップの準決勝のクロアチア戦まで待たなければならない。この準決勝、フランスは先制を許したが、リリアン・テュラムの2得点で逆転勝ち、フランスが地元優勝したこの大会で最も危なかった試合と言えるであろう。その後デシャン監督は1999年秋のクロアチアとの親善試合、2000年4月のスロベニアとの親善試合、2000年5月のクロアチアとの親善試合に出場し、いずれも勝利している。すなわち、旧ユーゴスラビアならびに旧ユーゴスラビアが解体して誕生した各チームとの対戦で4勝1分と負けがないのである。
■旧ユーゴスラビアの解体後、旧ユーゴスラビア勢には10勝5分
この旧ユーゴスラビア各国との相性の良さはデシャン監督の引退後も続き、フランスはこれまでにボスニア・ヘルツェゴビナ(2勝2分)、クロアチア(3勝2分)、スロベニア(3勝)、セルビア(2勝1分)と対戦し、10勝5分と大きく勝ち越しているのである。セルビアとは2010年のワールドカップ予選で同じグループとなり、セルビアが首位になって本大会出場、フランスは2位にとどまり、アイルランドとのプレーオフを経てティエリー・アンリの疑惑のハンドで本大会出場を決めたが、この時もセルビアとの対戦成績はホームで2-1で勝利、アウエーでも1-1のドローである。さらにフランスは2012年の欧州選手権の直前にランス(Reims)で対戦し、本連載第1407回で紹介した通り、2-0と勝利している。
■スペイン戦と大きく入れ替わった先発メンバー
このように旧ユーゴスラビア勢に相性のいいデシャン監督とフランス代表であり、ベオグラードの競技場のピッチに立ったメンバーはスペイン戦とは大きく入れ替わった。
GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、ラファエル・バラン、ジェレミー・マチュー、ルカ・ディーニュ、MFは中盤の底にヨアン・カバイエ、攻撃的な位置の右にポール・ポグバ、左にモルガン・シュナイデルラン、FWは右にムーサ・シソッコ、左にレミ・カベラ、中央にロイック・レミーという布陣である。
ストッパーのマチューは、ローラン・コシエルニーが、合宿入り直前に所属するアーセナル(イングランド)のプレミアリーグのレスター戦で負傷し、離脱したため追加招集された。今夏、スペインリーグのバレンシアからバルセロナに移籍したマチューはすでに30歳、昨年6月の南米遠征以来の代表入りである。マチューは左サイドバックとストッパーの両方ができる。代表チームの選手にとって複数のポジションをこなすことが望ましく、かねてからの人材難に悩んでいたストッパーは、バランという人材を得たものの、まだ模索状態である。
■デシャン監督の期待と信頼が示す4人の連続先発選手
スペイン戦に続き2試合連続で先発するのはロリス、バラン、ポグバ、シソッコだけである。ロリスは主将であり、バランとポグバは若手でこれからのフランス代表を支えていく立場にあり、右サイドのシソッコはフランク・リベリーの引退後のサイド攻撃の核となる選手である。このようにデシャン監督からが特別の思いを持つメンバーがスペイン戦に続いて先発し、それ以外はメンバーを入れ替えているのである。(続く)