第1763回 ポルトガル、アルメニアと連戦(2) 驚異的な得点力のアンドレ・ピエール・ジニャック

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■2009年に代表にデビューしたアンドレ・ピエール・ジニャック

  前回の本連載では10月のインターナショナルマッチデーに対戦するポルトガルとアルメニア戦に向けて選出された23人のメンバーのうち、復帰組の3人のうちのクリストフ・ジャレとディミトリ・ペイエについて紹介したが、今回の復帰組の最大の話題はアンドレ・ピエール・ジニャックであろう。28歳のジニャックはこの3人の中ではフランス代表へのデビューは一番古く2009年4月1日のワールドカップ予選のリトアニア戦のことである。このリトアニア戦に出場していた選手のうち、現在もフランス代表に入っているのはスティーブ・マンダンダ、バカリ・サーニャ、パトリス・エブラ、カリム・ベンゼマだけであり、これらベテラン選手の名を見るだけで、ジニャックの代表デビューからの年月を感じさせる。

■マルセイユ移籍後に不調になったジニャック

 ジニャックはフランス代表にデビューした当時はトゥールーズに所属し、デビューした2008-09シーズンには28得点をあげてリーグの得点王に輝く。また2009年から2010年にかけてはフランス代表にも定着し、2010年に南アフリカで行われたワールドカップのメンバーにも選ばれ、全3試合に出場した。しかし、このワールドカップを最後に代表から長く離れる。もちろんこの時はチームの内紛劇があったわけであるが、ジニャックが外れたのはチーム内での行動が理由ではなく、所属クラブでのふがいない成績が理由である。
 ジニャックはマルセイユの近くのマルティーグの出身であるが、2010年夏に期待を集めて名門マルセイユに移籍する。背番号も10を用意され(現在は9)、ファンも期待していたが、全く逆の結果となり、移籍初年の2010-11シーズンは30試合に出場し得点8、翌2011-12シーズンは21試合にしか出場できず、わずか1ゴールに終わる。

■チャンスを活かせなかった2013年の秋の代表復帰

 すっかり期待外れに終わった2シーズンの間はフランス代表からも外れたが、2012-13シーズンは31試合出場13得点という成績を残し、2013年の9月に代表に3年ぶりに復帰している。リーグ開幕戦でのゴールを見たデシャン監督の目につき、グルジア戦に出場したことは本連載第1597回と第1598回で紹介している。しかし、押し気味の展開の中で途中出場しながら、決定的なチャンスを逃してしまい、チームも無得点に終わってしまう。つづくベラルーシ戦では不調のカリム・ベンゼマがベンチスタートであったが、デシャン監督がピッチに送り込んだのはオリビエ・ジルーであり、ジニャックはこの試合では出場の機会に恵まれず、以後ふたたびフランス代表から遠ざかることになった。

■今季の驚異的なゴール数、ペナルティエリア外からの得点力に注目

 しかし、所属するマルセイユでは復調の兆しを見せ、2013-14シーズンは33試合に出場して16ゴールをあげる。そして今季はここまでリーグ戦8試合で8得点という驚異的な得点力を記録している。フル出場していない試合もあるが、実に86分間に1点をあげ、シュート数3.6本あたり1ゴールという数字を残している。これだけの得点力は他の有力リーグを見ても見当たらず、クリスチャーノ・ロナウドもリオネル・メッシも脱帽である。
 そしてスペースのないところから得点できるという長所だけではなく、ロングシュートの名手であるということも特筆すべきであろう。ここまでにリーグ戦で挙げたのは通算89得点(現役ではジブリル・シセの96得点に次ぐ2位)、そのうち4分の1以上はペナルティエリア外からのゴールである。通常ペナルティエリア外からの得点は15%程度であり、ペナルティエリア外のスペースがないところからの得点するジニャックは守備陣にとって守りにくい選手であろう。
 そのジニャックが昨年9月以来の代表復帰、間違いなく今回のデシャン監督が選出したメンバーの中で最も注目を集める存在である。ジニャックがポルトガル、アルメニアとの対戦でどのような活躍をするのか今から楽しみである。(続く)

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