第1766回 ポルトガル、アルメニアと連戦 (5) 進境著しいアルメニアと対戦
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■21歳コンビ、ポール・ポグバとラファエル・バラン
フランスはフェルナンド・サントス新監督が就任したポルトガルを2-1と下し、ワールドカップ以降の戦績はこれで2勝1分、2016年の欧州選手権優勝に向けて手ごたえのあるスタートを切っている。この好スタートの原動力となっているのは中盤のポール・ポグバとストッパーのラファエル・バランというチーム最年少の21歳のコンビである。ポグバはセルビア戦、ポルトガル戦で得点もあげている。一方のバランはこの数年、フランスの弱点と言われていたストッパーを難なく務め、ポルトガル戦でもクリスチャーノ・ロナウドを完封している。2人は昨年代表にデビューし、ポグバは19試合に出場、バランは14試合に出場しているが、このコンビはかつてのディディエ・デシャンとローラン・ブランを彷彿させる。
■スイス人のベルナール・シャランデス監督が率いるアルメニア
さて、ポルトガル戦勝利の3日後の10月14日、アルメニアとエレバンで戦う。アルメニアはグループIの第4シードである。アルメニアは昨年のワールドカップ予選で敗退し、新監督にスイス人のベルナール・シャランデスが就任する。スイスで様々なクラブチームの監督を務めてきた63歳のシャランデスにとって初めての国外でのキャリアがアルメニア代表チームの監督である。かつてはマルセイユやツーロンで活躍し、現在はバランシエンヌの監督を務めるベルナール・カゾニがアルメニア代表の監督を2004年から翌年にかけて務めたことがある。本連載でもしばしば紹介している通り、フランス人がアフリカの代表チームの監督を務めることはあっても、欧州の他の国の代表監督を務めることは珍しいであろう。
■これまでフランスが3連勝しているアルメニア
これまでフランスはアルメニアと3回戦っている。アルメニアはソ連の解体に伴い、1992年から代表チームの活動をしているが、最初のフランスとの対戦は1996年の欧州選手権イングランド大会直前のことである。アルメニアにとってこの欧州選手権イングランド大会は最初の国際大会の予選となったが、1勝2分7敗という成績で6チームで争われたグループ2で最下位に終わる。一方のフランスはグループ1の2位で本大会出場、フランスにとって大会前のスパーリングマッチとなり、ビルヌーブ・ダスクでの試合、フランスは2-0と勝利する。
そして2000年の欧州選手権予選では同じグループ4で戦う。1999年3月31日にサンドニで対戦し、フランスは2-0と勝利、アウエーでの試合は同年9月8日に行われ3-2とフランスが勝利、これまでの対戦はフランスの3戦3勝である。そしてこれらの3試合に出場していたのが現在のフランス代表監督のディディエ・デシャンであり、母親がアルメニア人のユーリ・ジョルカエフなのである。
■徐々に力を蓄えてきたアルメニア、セルビアとドロー
過去の戦績ではフランスが圧倒しているが、その後アルメニアは着実に力をつけてきている。フランスと戦った2000年欧州選手権予選では6チーム中5位となり、2012年欧州選手権予選では6チーム中3位とプレーオフまであと一息に迫った。そして昨年まで行われた2014年ワールドカップ予選ではグループBで6チーム中5位に終わったが、このグループは大混戦で2位のデンマークと5位のアルメニアの勝ち点差はわずかに3であった。アルメニアは着実にFIFAランキングも高め、チーム創立から2009年までは3ケタ順位であったが、今年2月には30位まで順位を上昇させた。
アルメニアは第1戦はデンマークに1-2と敗れているが、10月11日にホームで行われたセルビア戦では驚きを与える。ドイツのドルトムントで活躍するヘンリク・ムヒタリアン、ロシアのスパルタク・モスクワの攻撃を支えるユーラ・モフシシャンとアラス・エズビリズがいずれも負傷により欠場する中、セルビア相手に守勢の戦いを強いられる。しかしながら、73分、ストッパーのロバート・アーズマニアンがヘディングで先制点、このまま逃げ切るかと思われたがセルビアは試合終了間際の90分、ゾラン・トシッチが同点ゴール、アルメニアは白星を惜しいところで逃したが、セルビア戦の引き分けにより手ごたえをつかんだのである。(続き)