第1784回 デビスカップ、またも準優勝(5) 決勝の舞台はリールのピエール・モーロワ競技場
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■準決勝と同じメンバーで決勝に臨むフランス
前回までの本連載は決勝戦で対戦するスイスの準決勝までの足取りを紹介してきた。1回戦から準決勝まで3勝2敗という僅差での勝ち上がりとなったが、世界ランキング2位のロジャー・フェデラーと4位のスタニラス・ワウリンカのシングルスでの出来がすべてと言ってもいいであろう。
フランスチームは準決勝と同じメンバー、ジョー・ウィルフリード・ツォンガ(世界ランキング12位)、ガエル・モンフィス(19位)、ジュリアン・ベネトー(25位)、リシャール・ガスケ(26位)と世界ランキング30位以内の選手がそろっている。ランキングだけであれば、21位のジル・シモンにも声をかけたいところであるが、ダブルスプレーヤーのベネトーを優先せざるを得ないであろう。スイスの3番手であるマルコ・キュディネリは世界ランキング212位であり、2人目と3人目の差が大きいスイスと世界ランキング30位以内の選手を集めたフランスとは対照的なチーム構成である。
■フランス第4の都市リール
さて、フランスにとっては1回戦から決勝までがホームコートで戦うことになった。1回戦はムイユロン・ル・キャティフ、準々決勝はナンシー、準決勝はパリのローラン・ギャロスで行われたが、決勝はリール郊外のビルヌーブ・ダスクのピエール・モーロワ競技場で行われる。本連載の読者の方であればよくご存じであろうが、サッカーのリールの本拠地である。古豪であり、強豪でもあるリールにとってスタジアムの不在が長年の課題であり、さらにこの地域の経済の低迷によりなかなかスタジアムが建設されなかった。リールはパリ、リヨン、マルセイユに次ぐフランス第4の都市である。市内にはメトロも走り、この街を発祥の地とするパン屋のポールは世界中の富裕層の朝食を演出している。
本連載でも紹介している通り、ピエール・モーロワ競技場は2012年にようやく完成し、完成当初はリール都市圏大競技場と名乗っていたが、2013年にこの地方出身の元首相の名を取ってピエール・モーロワ競技場と改称している。5万人収容の大スタジアムであり、すでに国内の試合だけではなく、チャンピオンズリーグの熱戦も繰り広げられている。さらにフランス代表も今年6月8日にジャマイカと親善試合を行っている。元来、サッカーの盛んな地方でもあり、この新スタジアムは2016年の欧州選手権の会場にもなっており、ファンにとっては楽しみは尽きない。
■サッカーの試合を延期してデビスカップ決勝を開催
そして欧州選手権の2年前、リールに世界的なスポーツイベントがやってきた。それがこのデビスカップの決勝である。11月21日から23日にかけての週末に行われるが、当初、この週末にはフランスリーグのリール-エビアン戦が予定されていた。しかし、このデビスカップファイナルのために1月7日に日程を変更、それだけ地元におけるこのイベントの重要性がよくわかる。
■デビスカップのメインスポンサー、BNPパリバ
またデビスカップは1970年代に人気が低迷し、トッププロが出場しない事態が起こった。1970年代はサッカーのインターコンチネンタルカップも同様であり、人気が低迷する危機の時代であった。サッカーのインターコンチネンタルカップを日本の自動車メーカーであるトヨタが救ったことは有名であるが、テニスのデビスカップも日本の電機メーカーであるNECがスポンサーとなり、ワールドグループ制を導入した。当時からトッププロは過密日程の中で戦っていたが、ツアーとデビスカップの日程の調整を行うことにより、世界中のトッププレーヤーが参加するようになり、今日の隆盛の元となる。
現在のスポンサーはBNPパリバ、ローラン・ルノーを擁するフランスの大手金融機関である。1973年からテニス大会のスポンサーになり、年間3000万ユーロをテニスに投じていると言われている。その巨大スポンサーの地元フランスでの開催、国民のボルテージは上がるのである。(続く)