第166回 フランス・サッカーの危機(1) 関心が下がる一方の欧州カップ戦、代表戦
■大きな反響を呼んだ5年間にわたる調査結果
昨年以来、本連載で継続的にフランス・サッカーの危機を取り上げてきた。そして筆者の危機感を裏付けるような調査結果が2月19日のレキップ紙で発表され、フランス国内で大きな反響を呼んだ。この調査結果はテレビのニュースでも取り上げられ、日本のNHK衛星放送でも放映されたようである。日本の読者の方から、早速その詳細について教えてほしいというリクエストもあったので、取り上げることにしよう。
この調査は毎月電話で1,000名程度にアンケートをしているもので、2001年8月まではBVA社、2001年9月以降はルイ・アリス社によって継続的に行われてきた。レキップ紙ではフランスでワールドカップが開催された直後の1998-99シーズンから今シーズンまで5年分のデータを紹介している。国内の3大タイトルである「フランスリーグ」、「フランスカップ」、「リーグカップ」、そして国際試合として「チャンピオンズリーグ」、「UEFAカップ」という欧州カップならびに「フランス代表の試合」という6つのカテゴリーについて「非常に関心がある」「関心がある」「少し関心がある」「関心がない」という4段階の回答を売るためにアンケートを行った。
■実力低下により激しい落ち込みを示したUEFAカップ
これによると一番関心の下がり方の激しかったのが「UEFAカップ」である。「非常に関心がある」「関心がある」のいずれかを回答した比率の1998-99シーズンから今シーズンまでの数値の推移を紹介すると、60%、52%、46%、38%、39%と激減している。UEFAカップは各国のリーグから実力のあるチームが複数参加できるため、フランスからの出場チームの数が毎年違う。フランスリーグのレベルが高ければたくさんのチームが参戦し、逆の場合は参加チームが少なくなる。つまり成績が人気に直結する仕組みになっており、フランスのクラブチームがUEFAカップでこれといった成績を残さないとファンの関心は低くなる一方である。
■フランス人スター選手の活躍するチャンピオンズリーグも関心は単純減少
現在、日本で最も注目を集めている「チャンピオンズリーグ」に関しても人気低下の流れは止まらない。「チャンピオンズリーグ」はフランスリーグから複数チームが登場しているが、ファンの見方も「我らがチーム」「フランス代表のチーム」の戦いだけではなく、欧州すなわち世界のトップレベルのチームや選手の活躍にも関心が集まるはずである。近年はフランス代表のクラブは目立った成績を残さないものの、フランス人選手がビッグクラブに所属し、世界選抜の紅白戦とも言える非常にハイレベルのチャンピオンズカップ決勝には必ずフランス人のスター選手が出場している。しかしながら、1998-99シーズン以降、経年別に「非常に関心がある」と「関心がある」の合計は58%、51%、50%、44%、43%と単純減少しているのである。
この2つの欧州カップに関する数字の低下を見る限り、フランス人はフランス勢の振るわないUEFAカップに関心を失ってきただけではなく、フランス人選手が他国のビッグクラブに所属して活躍するチャンピオンズリーグについても関心を失ってきた、ということが言えるであろう。
■意外と関心を集めない代表戦も低下傾向
一方、同じ国際試合でもクラブ単位ではなく代表チームについてはどうだろうか。1998年の地元開催のワールドカップ優勝でのフランス国民の熱狂、そして続く2000年の欧州選手権も優勝と、日本の皆様は非常に国民の関心が高いと想像されるであろう。ところが、経年別の数字を見ると、「非常に関心がある」と「関心がある」の合計数値はワールドカップ優勝直後ですら56%とチャンピオンズリーグ、UEFAカップというクラブ単位の国際試合に及ばない。
そしてこの数字は苦戦しながら欧州選手権予選突破を決め、本大会で優勝した1999-2000シーズンには53%とダウンする。前回優勝国としてワールドカップ予選を免除され、強豪相手の親善試合で連戦連勝した2000-01のシーズンは54%とほぼ横ばいを保ったものの、2001-02シーズンは欧州以外の弱小国相手に親善試合で取りこぼしが続き、ワールドカップ本大会でも惨敗して51%と低下、そしてジャック・サンティーニ新監督が国内クラブの若手選手を起用し始めた今シーズンも48%と低下傾向をストップすることはできなかった。
そして国内の大会の数字を見るとさらに興味深いことがわかるのである。(続く)