第1857回 ラグビーの欧州カップ、トゥーロン3連覇(1) 最多優勝回数を誇るフランスのクラブ

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■国内無敵のパリサンジェルマンも欧州では頂点に届かず

 前回までの本連載ではフランスリーグについて紹介し、最終節を前にパリサンジェルマンが3季連続5回目の優勝を決めたことを紹介した。パリサンジェルマンは大型補強を繰り返し、今季はリーグ戦だけではなく、他のタイトルでも順調で、リーグカップを制し、フランスカップも決勝に残っている。5月30日の決勝でオセールに勝利すれば、フランスサッカー史上初の三冠を達成することになる。
 しかし無敵のパリサンジェルマンも欧州の舞台ではチャンピオンズリーグの準々決勝でスペインのバルセロナに敗れている。同じく大型補強をしているモナコもチャンピオンズリーグの準々決勝でユベントス(イタリア)に敗れている。このように国内では他チームを圧倒する力を持っていても欧州の舞台ではなかなか頂点に立つことができないのがフランスのサッカーと言えるであろう。ちなみに、今年のチャンピオンズリーグの決勝に残ったのは準々決勝でフランス勢を倒したバルセロナとユベントスという顔合わせである。

■欧州の頂点になかなか立てないフランスのサッカークラブ

 そしてこれはパリサンジェルマンやモナコ、あるいは今季だけの事象ではない。チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグという現在の欧州の二大タイトル、さらにはその前身のチャンピオンズカップ、カップウィナーズカップ、UEFAカップという欧州三大カップ時代から通算して、フランス勢が優勝したのは1996年にパリサンジェルマンがカップウィナーズカップで優勝したのが最初で最後である。この間、代表チームはワールドカップ優勝1回、欧州選手権でも2回優勝している。また、決してフランスが構造的にクラブレベルが低いわけではなく、今季のチャンピオンズリーグでもベスト8のうち2チームをフランス勢が占めており、上位にはいくものの、頂点にたどり着けない、という状況はチャンピオンズリーグの前身のチャンピオンズカップの最初の決勝でスタッド・ド・ランスがスペインのレアル・マドリッドに敗れて以来の不思議な伝統であろう。

■フランス勢がこれまでに7回優勝したラグビーの欧州カップ

 さて、そのようにありがたくない伝統を今年も受け継いでしまったフランスのクラブサッカーであるが、それとは逆の姿を見せているのがラグビーである。ラグビーでチャンピオンズリーグに相当する存在が欧州カップである。この欧州カップは1995-96シーズンから始まり、サッカーのチャンピオンズリーグ同様、各国リーグの上位チームが参戦し、予選プールを行い、決勝トーナメントを行うという形式である。(ただしホームアンドアウエーではなく、いずれかの本拠地で1回戦制で行われ、決勝だけはチャンピオンズリーグ同様あらかじめ決められた都市で開催される)
 今年で記念すべき20回目を迎えるわけであるが、第1回の大会ではトゥールーズがカーディフ(ウェールズ)を延長戦の末破って優勝した。続く第2回大会でもブリーブがレスター(イングランド)を破りフランス勢が連覇を果たしている。過去19回の大会でフランス勢の優勝は実に7回(トゥールーズ4回、トゥーロン2回、ブリーブ1回)、これはイングランドとアイルランドの各6回を押さえてトップである。もちろん、ラグビーの場合はサッカーと異なり、欧州のトップレベルのクラブのある国は限られているが、イングランド勢同士の決勝もアイルランド勢同士の決勝もこれまでに1回しかない。フランスのラグビーがクラブレベルにおいて欧州をリードしていることは間違いない。

■他国勢との決勝の戦績が振るわないフランス勢

 フランスは優勝が7回あるだけではなく、準優勝も10回を数える。実はフランスの7回の優勝のうち、フランス勢同士の決勝戦で行ったことが4回もあるのである。逆にフランス勢が決勝で他国勢と対戦した時の戦績は9戦してわずか3勝、この決勝での他国勢に対する勝率の悪さがサッカーの世界と同じシルバーメダルコレクターたる所以なのかもしれない。 そして今年の欧州カップでもフランス勢が大活躍したのである。(続く)

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