第1882回 ラグビー代表、ワールドカップに向けて始動 (2) 議論を巻き起こしたハーフ団の人選

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■選出された36人のプロフィール

 5月20日に発表された7月の合宿メンバー36人、平均年齢は27.5歳、4年前の同時期に選ばれた32人と同じ平均年齢である。平均キャップ数は28で、こちらは前回同時期の33より若干少ない。36人中11人はこれまでにワールドカップに出場した経験がある。2011年大会に出場したのは9人、ニャンガとミシャラクは2007年大会以来の返り咲きとなる。
 36人全員が国内のクラブに所属しており、最多は欧州カップ準優勝でフランス国内で優勝したカストルからの7人。これに次ぐのはトゥールーズの6人である。欧州チャンピオンのトゥーロンから5人、ラシンメトロからも5人である。以下、スタッド・フランセ、モンペリエ、カストルから3人、ラロッシェルから2人、ボルドー・ベグレスとバイヨンヌから1人となっている。

■人材の宝庫、ハーフ団の選出を疑問視するファンの声

 これらの数字を見る限り、準優勝した前回と大きな差はなく、欧州でも活躍する国内クラブから先取されているが、大きな議論となった。
 今回のメンバー選考で最も大きな議論となったのはメンバーの固定しないハーフ団であろう。ハーフ団に関してはサンタンドレ監督就任以来コンビが確立しない。フランスは伝統的にハーフ団は人材の宝庫である。今回のハーフ団の人選を見るとスクラムハーフはロリー・ココット、モルガン・パラ、セバスチャン・ティルボルドの3人、実績のあるパラは別として、ココット、ティルボルドよりはマキシム・マシュノーを推す声は少なくない。

■1年以上先発出場のないビッグネーム3人が選出されたスタンドオフ

 そしてそれ以上の議論となったのがスタンドオフである。フレデリック・ミシャラク、レミ・タレス、フランソワ・トラン・デュック、いずれも本連載の読者の方であればよくご存じの名前であろう。
 まず、代表出場歴71試合のミシャラクは2003年、2007年大会には出場したが、2011年大会はメンバーから外れており、復帰となった。しかし、ミシャラクは所属するトゥーロンが欧州チャンピオンになったものの、ロンドンのトゥイッケナムで行われた決勝戦には出場していなかった。トゥーロンでは偉大なるジョニー・ウィルキンソンの陰に隠れていたが、今年ようやくレギュラーとなる。ところが、負傷で戦列を長く離れ、準決勝のレンスター(アイルランド)戦に先発したものの散々な出来で後半早々にベンチに下がり、決勝戦でも姿を現すことはなかった。プレースキッカーとしての期待と、スクラムハーフもこなせることが選出の決め手となったのであろう。
 また、トランデュックも前回大会では活躍し、代表出場歴49試合を誇るが、昨年10月に骨折し、今シーズンはほとんど出場機会に恵まれなかった。2014年2月以来代表チームから外れており、ビッグネームの経験に賭ける形になった。そしてタレスもこの1年間は代表チームには所属しているものの、先発出場は昨年6月の豪州とのテストマッチが最後である。すなわち、過去1年間、スタンドオフとして先発出場したことのない3人が選ばれたのである。

■メンバーから外れた2人の若手スタンドオフ

 これらのビッグネームの犠牲となったのが若手のカミーユ・ロペスとジュール・プリソンである。昨年からスタンドオフのレギュラーを務めてきたのは25歳のロペスであり、その控えが23歳のプリソンであった。ロペスはシーズン終盤の負傷が響き、所属チームのスタッド・フランセで南アフリカ代表のモーン・ステインからポジションを奪ったプリソンはバックアップメンバーに辛うじて入るにとどまった。
 そして、センターのマキシム・メルモズ、ウイングのマキシム・メダールというバックスラインの人気選手が36人のリストから外れている。メルモズもメダールもまだ28歳であるが、バックスラインは若い選手が多く、経験を基にリーダーシップを発揮する選手の不在は気にかかる。
 就任以来苦しい立場が続くフィリップ・サンタンドレ監督の選んだ36人は、7月6日からマルクシスにあるナショナルトレーニングセンターでの合宿に入ったのである。(この項、終わり)

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