第1924回 アルメニア、デンマークに連勝(5) 2得点のオリビエ・ジルーなどリザーブ陣が大活躍

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■変則的なことの多かった1908年の初対戦

 デンマークとフランスのこれまでの対戦成績はフランスの7勝1分5敗である。最初の対戦は1908年のロンドンオリンピック、この時はデンマークが17-1と大勝している。サッカーにおける最初の世界的大会となったこのロンドンオリンピックは今から考えると変則的であり、フランスは1つの国から2つのチームがエントリーしている。さらに8チームのノックアウト方式で行ったが、ハンガリーとボヘミアが政情不安のため棄権し、6チームで行われた。フランスはAチームとBチームの2チームが出場し、Aチームは1回戦(準々決勝)の相手のボヘミアが棄権したため準決勝に進出する。一方、Bチームは1回戦でデンマークに0-9と大敗する。そしてデンマークとフランスAは準決勝で対戦し、デンマークが17-1と勝利した。準決勝で敗れたフランスは銅メダルをかけて3位決定戦に出場したのではなく、準決勝の大敗を受けて、棄権し、代わりに1回戦で敗れたスウェーデンが3位決定戦に出場する。フランスは6チームしか出場しなかった大会で5位と6位になってしまった。

■苦い思い出となった1992年と2002年のデンマーク戦

 このような変則的な試合と大会が後々まで響いたのか、フランスとデンマークの対戦はその65年後の1973年まで待たなくてはならなかった。デンマークとはワールドカップ、欧州選手権の本大会での対戦が多く、それらの予選での対戦はない。今回は親善試合であるが、デンマークはグループIに所属しており、今回が実質的に初めての予選での対戦となる。フランスでの対戦は今年3月29日にサンテチエンヌでフランスが2-0と勝利したことは本連載第1838回から第1840回で紹介した通りである。
 欧州選手権の本大会の苦い経験は1992年のスウェーデン大会、内戦状態にあったユーゴスラビアに代わって急きょ出場が決まったデンマークと優勝候補のフランスはグループリーグの最終戦で対戦、勝てば決勝トーナメント進出の可能性のあったフランスであったが、デンマークが勝利、デンマークは決勝トーナメントでも勝ち進み、優勝する。そして歴史は2002年のワールドカップでも繰り返す。開幕戦でセネガルに敗れ、続くウルグアイ戦でも引き分けたフランスは、わずかな希望を持って最終戦のデンマーク戦に臨む。2-0で勝利することが条件であったが、フランスは逆に0-2で敗れてしまい、優勝候補として臨んだ大会のグループリーグの最終戦でデンマークに敗れ、グループリーグで敗退する。

■親子二代の代表GK、カスパー・シュマイケル

 1992年の欧州選手権優勝の際の不動のGKがピーター・シュマイケル、その息子のカスパー・シュマイケルがデンマークのゴールを守る。
 予選で2位以内に入れなかったということもあり、デンマークのファンの期待はしぼみ、会場となったコペンハーゲンのパルケン競技場は収容数の半分以下の1万5000人の観衆が集まるにとどまり、さびしい風景となった。

■オリビエ・ジルー、開始6分で2ゴール、勝負を決める

 そして試合は開始早々に決着がついてしまう。この日初先発となった左サイドのアントニー・マルティアルからのパスを中央のオリビエ・ジルーがシュートする。アルメニア戦では先発から外れた2人がさっそくのデモンストレーション。ジルーのシュートはシュマイケルの届く範囲にあり、シュマイケルの手に触れたものの、ゴールとなる。さらに6分にもフランスは左サイドから仕掛ける。ルカ・ディーニュのクロスをジルーがまた得点に結びつける。開始6分という早い時点でジルーの2得点により、勝負はついてしまった。デンマークはボールを持たされているような形になり、シュートまで結びつかない。そして数少ないデンマークのチャンスはフランスの第2GKのスティーブ・マンダンダがストップする。28分、68分とデンマークの決定的なシュートを止め、マンダンダもまた第1GKのウーゴ・ロリスを脅かす存在であることを示す。
 フランスはロスタイムに1点を失ったものの、2-1と勝利する。そしてもしフランスがグループIに入っていれば、その順位は首位フランス(勝ち点23)、2位ポルトガル(21)、3位アルバニア(18)、4位デンマーク(12)、5位セルビア(5)、6位アルメニア(2)となったのである。(この項、終わり)

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