第1938回 本年最終戦のイングランド戦 (2) フランス代表、9回目のウェンブリー

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■欧州選手権予選を10戦全勝で勝ち抜いたイングランド

 ワールドカップでは1990年イタリア大会、欧州選手権では1996年イングランド大会以来準決勝進出の経験のないイングランド、この間に多くのスターが純白のユニフォームに袖を通したが、本大会では思うような結果を残すことができない。また、1994年のワールドカップ米国大会以外はすべて本大会のチケットを手に入れているが、危うく予選落ち、土壇場でようやく本大会出場というケースも少なくない。
 そのようなイングランドであるが来年の欧州選手権の予選はグループEでスイス、スロベニア、エストニア、リトアニア、サンマリノと対戦、10戦全勝というグランドスラムでフランス行きを決定した。この予選には9グループ53チームが出場しているが、全勝はイングランドだけ、それに近いのがグループGで9勝1分のオーストリア、9勝1敗のスペイン(グループC)、7勝1敗のポルトガル(グループI)などである。イングランドは世界ランキングを9位まで引き上げている。

■強豪相手の親善試合では勝てないイングランド

 予選では10戦全勝、得点31、失点わずかに3という圧勝したイングランドであったが、重要なのは主に同レベルの相手と行われる親善試合である。2014年のワールドカップ終了後の2014年後半にノルウェー、スコットランド相手には勝利したものの、2015年に入り、3月にイタリア、6月にアイルランド相手に引き分け、フランス戦の直前の11月13日にはスペインとアウエーで対戦し、0-2と敗れている。すなわち、ある程度の力量のチームにはこの2年間勝利していない。そういう点でも世界ランキング24位と低迷はしているがフランス相手に勝利し、来年に向けた明るい兆しをつかみたいところである。

■ブリュッセルのボードワン国王競技場の次に多くの試合を行っているウェンブリー

 聖地ウェンブリーでは1999年の勝利以来負けていないフランス、今回が9回目のウェンブリーでの試合となる。これまでに8試合しているが、7試合はイングランドとの対戦、残る1試合は1966年ワールドカップのグループリーグのメキシコ戦である。フランス代表が国外で最も多く試合をした競技場はベルギーのブリュッセルのボードワン国王競技場である。これまでに22試合戦っており、この日はベルギーがスペインを迎えて親善試合を行う予定であったがテロの影響を受けて中止になっている。それに次いでフランスが多く試合をしているのがスイスのシャルミル競技場であり、9回戦っている。これら陸続きの隣国での対戦が多いが、この日のイングランド戦でウェンブリーが2位に並ぶことになった。

■ウェンブリーで英国以外のチームで初めて試合を行ったフランス

 第二次世界大戦前にフランスはアウエーでイングランドと対戦しているが、それらの会場はウェンブリーではなく、ロイヤルパークやホワイトハートレーン(現在のトットナムの本拠地)であった。初めてフランスがウェンブリーで試合をしたのは1945年5月26日のことであり、結果は2-2のドローであった。
 フランスの出場したこの試合は英国(スコットランド、ウェールズ、アイルランド)以外のチームが初めて試合を行うという歴史的なものとなった。以降、イングランドとフランスの試合はアーセナルの本拠地のハイベリーで2試合、ロンドン以外のシェフィールドで1試合行った以外はウェンブリーで行われている。
 フランスが英国以外のチームとして初めてウェンブリーの芝の上に立ったのは先述の通り1945年5月26日、ドイツが降伏して欧州に平和が訪れたのはその月の8日のことである。ロンドンと言えば、第二次世界大戦でドイツ軍の攻撃でパリが陥落、シャルル・ドゴールはロンドンに亡命、亡命政府である自由フランスを結成し、ロンドンからBBCラジオを通じて対独抗戦をフランスに向けて呼びかけた地である。このように70年前のイングランド-フランス戦は平和の訪れを欧州に印象づける試合となった。
 それから70年、2015年11月17日のイングランド-フランス戦は世界に平和をアピールする試合となったのである。(続く)

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