第1945回 ようこそフランスへ (5) 驚きの第5シード、北アイルランドとアルバニア

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ワールドカップに3回出場経験のある北アイルランド

 前回の本連載では第5シードのアイスランドが本大会の出場権を得たことを紹介したが、アイスランド以外に2つの第5シードのチームがグループリーグで2位以内に入り本大会出場を決めている。
 その1つがグループFの北アイルランドである。グループFは第1シードのギリシャが最下位に落ちたことについて本連載第1942回で紹介したが、このグループの首位突破を果たしたのが第5シードの北アイルランドであった。もともとはアイルランド島全体でアイルランド代表チームを構成していたが、アイルランド島の南部が英国から独立してから、英国にとどまった北部が北アイルランドとなり、南部がアイルランド代表チームを継承している。
 北アイルランドは1958年のワールドカップに出場、グループリーグを突破している。また1980年代には1982年大会と1986年大会に連続出場し、中でも1982年大会は開催国のスペインに勝利し、2次リーグに進出している。

■ダビッド・ハーリーなきチームが驚異の快進撃

 しかし、その後はワールドカップ出場からは遠ざかっており、2006年大会予選でイングランドに1-0で勝利したことだけが国民の誇りである。
 一方、欧州選手権については今まで一度も予選を突破したことがない。ただ、2008年大会の予選でスペインを下しており、この時ハットトリックを決めたのが北アイルランド史上最高のストライカーであるダビッド・ハーリー、この予選では得点王に輝いているが本大会出場はならなかった。その国民的英雄も2013年に引退し、ギリシャ、ハンガリー、ルーマニアなど比較的くみしやすい相手が並んだ今回の予選に対する国民の期待は決して高くはなかった。
 ところが北アイルランドはいい意味で国民の期待を裏切る。初戦はアウエーのハンガリー戦、終盤に先制されたが、残り10分で2得点を奪い、鮮やかな逆転勝利。第2戦はフェロー諸島に順当勝ち、そして第3戦はアウエーでギリシャに2-0と堂々の勝利。ルーマニアにアウエーでは敗れたが、負け知らずで勝ち点を積み重ねていった。
 残り2試合となった10月8日、北アイルランドはベルファストに第1シードのギリシャを迎える。予選前はこの試合でギリシャが本大会出場を決めると予想していたファンも多かったであろう。しかし、北アイルランドはギリシャを圧倒、3-1と勝利し、欧州選手権本大会初出場を決め、さらに最終的にはグループFの首位となったのである。

■親善試合でフランスに勝利したアルバニア

 そしてもう1つの驚きはアルバニアであった。欧州最貧国と言われ、これまで国際大会の本大会出場はおろか、予選での勝利もままならない国であった。しかし、グループIに入り、フランスと親善試合を2回行い、本連載第1872回と第1873回でも紹介したが、フランスはアルバニアに史上初めて敗れている。そしてこれはフロックではなくアルバニアが近年力をつけていることも紹介した通りである。

■最終戦でアルメニアに勝利し、うれしい初出場

 グループIはシード順にポルトガル、デンマーク、セルビア、アルメニア、そしてアルバニア。いわば最も低い位置からの大逆転となった。まず初戦で第1シードのポルトガルにアウエーで勝利、これでチームは勢いづき、第2戦はデンマークとホームでドロー、そして第3戦はセルビアとのアウエーの試合であったが没収試合となり、アルバニアに勝ち点3がもたらされた。その後も無敗を続け、ようやくポルトガルが2015年9月7日に黒星をつけ、この時点でアルバニアはデンマークに抜かれ、3位になる。続く10月8日のセルビア戦も敗れ、2試合連続してホームで黒星となる。最終戦は10月11日、デンマークは全日程終了、アルバニアはアウエーでアルメニアに勝てば2位に浮上する。引き分け以下の場合はデンマークが2位となる。この試合オウンゴールで先制したアルバニアは追加点をあげ、3-0と快勝、欧州最貧国から欧州最高の舞台へ進んだのである。(続く)

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