第1956回 新春の訪れ、フランスカップ (1) フランスカップにタイトル獲得の希望を託す1部勢
5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■リーグ戦はパリサンジェルマンの独走、フランスカップにかける1部勢
本連載で毎年紹介しているように、フランスで年が明けて最初のサッカーカレンダーはフランスカップのベスト32決定戦である。2015年はシャルリー・エブド襲撃事件、パリ同時多発テロと恐ろしい事件が続いた。2016年はこの重苦しい空気を払いのけたいものである。
フランスカップのベスト32決定戦は1部リーグの20チームが参戦すること、1部リーグのチームは原則としてアウエーで戦うこと、ちょうどリーグ戦の前半戦が終了し、年末年始を挟むことから各チームのコンディションが万全でないことから例年、1部勢が初戦で敗れるジャイアントキリングが多発する。ジャイアントキリングが毎年話題になるが、今年はどうだったであろうか。
フランスカップに参戦する1部勢についていうならば、すでにリーグ戦は前半戦を終えた段階でパリサンジェルマンが2位モナコに勝ち点19の差をつけて独走状態であり、パリサンジェルマン以外にとってリーグ優勝というタイトルは難しい。パリサンジェルマン以外のチームにとってはこのフランスカップは残された最大のタイトルであり、またリーグ戦を独走するパリサンジェルマンはフランスカップのタイトルホルダーであり、伝統的にカップ戦には強く、二冠を狙っている。
■順調勝ちしたGFCアジャクシオ、ナント、トゥールーズ、アンジェ、バスティア
今年のベスト32決定戦は1月2日の土曜日から始まった。20チームのうち16チームは2部以下の下位のリーグのチームと対戦する。1部勢同士のカードは2試合のみ、カーン-マルセイユ戦とニース-レンヌ戦だけである。
2日に登場した1部勢は7チーム、すべてが3部に相当するナショナルリーグ以下のチームと対戦する。最初に登場したのは例外的にホームで初戦を迎えるGFCアジャクシオである。GFCアジャクシオの相手はインド洋に浮かぶ海外県レユニオンにあるサント・マリーである。今季昇格してきたGFCアジャクシオは前半戦を12位で折り返し、納得のいく戦いであった。遠来のサント・マリーを2-0と下し、1部の貫録を見せた。これ以外にナント、トゥールーズ、アンジェ、バスティアも難なく初戦を突破した。
■延長戦で勝利した最下位トロワ
一方、苦戦したのがトロワとスタッド・ド・ランスである。トロワはリーグ戦の前半戦では1勝もできず、8分11敗の勝ち点8、19位のトゥールーズに勝ち点9の差という最下位である。そのトロワは後半戦の巻き返しのためにこのフランスカップで勢いをつけたいところである。トロワの相手はナショナルリーグのダンケルクである。トロワは2回リードするがいずれも追いつかれ試合は2-2のまま延長戦に突入する。トロワはレッドカードで1人退場しており、数的不利の中で91分以降を戦うことになった。延長前半の94分位ダンケルクがこの試合で初めてのリードを奪うが、トロワは96分に追いつき、延長後半の116分にようやく勝ち越し点を奪い、4-3と勝利する。内容的には1部勢らしからぬものであったが、トロワはリーグカップでも初戦で敗れており、今季公式戦で初勝利となったのである。
■設立25年でナショナルリーグ昇格のシャンブリーに大敗したスタッド・ド・ランス
そして早くも敗退したのがスタッド・ド・ランスである。リーグ前半戦の成績は17位、2部降格の危機に瀕している。スタッド・ド・ランスが対戦するのはシャンブリー、ナショナルリーグのチームであるが、設立は1989年と新しいクラブである。このクラブはフルビオとブルーノのルジ兄弟が作り、アマチュア選手としてしか実績のない兄弟のフルビオが会長を務め、ブルーノが監督を務めている。設立時は13部に相当するリーグでスタートしたが、その後着実にリーグを昇格し、25年かけて2014年に3部に相当するナショナルリーグに昇格した勢いのあるチームである。
このシャンブリーのウィルフリード・ルイジ・ダニエルが大活躍し、5分、9分、43分に得点し、前半ではとトリックを達成、シャンブリーは後半も追加点をあげたが、スタッド・ド・ランスは終了直前にPKで1点を返すのが精一杯で早くも姿を消したのである。(続く)