第1959回 新春の訪れ、フランスカップ (4) 1部勢17チームがベスト32に進出
5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■モンペリエ、ムスタファ・ヤタバレのゴールで辛勝
前回の本連載ではチャンピオンズリーグに出場しているパリサンジェルマン、ヨーロッパリーグ組のボルドーとサンテチエンヌが苦戦しながら初戦を突破したことを紹介したが、それ以外に1月3日に下部のリーグのチームと戦った1部勢は苦戦したチームが多かった。
モンペリエは前半戦を終了して15位、監督をかつて選手として在籍したパスカル・バイユに代えて、新年最初の試合に臨む。相手はCFA2部のエペルネイ、順位も11位であるから好調なチームとは言えない。そのCFA2部の中位のチーム相手にモンペリエは得点が奪えず、ようやく後半の62分にムスタファ・ヤタバレがあげたゴールで薄氷の勝利となる。
■リールもアミアン相手に1-0の勝利
また、リールはCFAのアミアンと対戦する。このカードは2年前も同じベスト32決定戦で実現しており、その時はリールが3-1と勝利している。リールが以前使用していたビルヌーブダスクの北競技場は前々回の本連載で紹介した通り、ワスカルがパリサンジェルマンを迎え、1万1000人のファンが集まったが、このリールが訪れたアミアンも6000人の観衆が集まった。リールを率いるのはかつて日本でも指揮を執ったフレデリック・アントネッティ監督であるが、リールは42分にPKで挙げた1点どまりで初戦突破となる。
■モナコ、ガンガンは大差の勝利
それ以外にこの下部のチームと対戦した1部勢はモナコとギャンガンであった。モナコは7部に相当するDHRのサンジャンボーリューとの対戦である。モナコとの対戦に9000人のファンが集まる。序盤は両チーム無得点であったが、21分にラシナ・トラオレが先制点を奪うとモナコはゴールラッシュ、トラオレが4得点などで5-0と大量リードする。後半もモナコのゴールラッシュかと思われたが、後半開始時にトラオレの姿が見えない。審判に対する暴言でハーフタイム中に退場処分となったのである。1人少ないモナコであったが、後半も5点を追加する。サンジャンボーリューも終盤に2点を返す。モナコは10-2というスコアで今年初めての試合を飾ったのである。
そして6部に相当するDHのシャンティと対戦したギャンガンは前半こそ無得点であったが、後半に入り攻撃陣に火が付き、4-0と勝利した。
ここまで本連載では下部のリーグのクラブと対戦した1部勢16チームを紹介してきた。大勝も辛勝もあったが、結果的に敗れたのは前々回の本連載で紹介したスタッド・ド・ランスだけであり、15勝1敗という近年にない好成績だったのである。
■1部勢決戦は2試合ともPK戦、マルセイユ、レンヌが勝利
そして1部勢同士の対戦、1月3日にカーン-マルセイユ戦、4日にニース-レンヌ戦を残すだけとなった。リーグ4位でヨーロッパリーグ圏内のカーンの本拠地で行われた試合、マルセイユは苦しい戦いとなる。2人の負傷交代、さらにはカリム・レキックが退場処分となる。試合は0-0のまま延長戦に入るが決着はつかず、PK戦となる。ここでヒーローが現われた。マルセイユのGKスティーブ・マンダンダである。カーンの蹴った4本中3本をストップ、3人連続で成功させたマルセイユが勝利し、今年初めての1部勢同士の戦いを制したのである。
1月4日、最後のカードはニース-レンヌ戦、赤黒のチーム同士の対戦であるが、ホームのレンヌが白いユニフォームを着用する。この試合も前日の1部同志の戦い同様、退場者が出て、延長戦でも決着がつかず、PK戦にもつれ込む試合となった。先蹴はニース、ハテム・ベンアルファが決めるが、5人ずつ蹴り終わったところで4-4、サドンデスとなる。ニースの9人目のキックをフランス代表にも入ったことのあるブノワ・コスティルがストップ、レンヌは最後のキッカーが成功させて勝ち抜いたのである。
ベスト32に1部勢が17チームも入り、結果だけ見れば近年にない無風のフランスカップ初戦となったのである。(この項、終わり)