第1961回 新スタジアムで後半戦を迎えたリヨン (2) パルク・オランピック・リヨネの初勝利を飾る
5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■アーセナルをモデルにしたリヨン
オランピック・リヨネというクラブを運営するオランピック・リヨネグループが所有することになる新スタジアム、リヨンはロンドンのアーセナルをモデルとしてこのスタジアム建設に取り組んだ。アーセナルは2006年からそれまでのハイベリースタジアムに別れを告げ、エミレーツスタジアムを使用している。新旧スタジアムとも所有者はアーセナル自身であり、ハイベリーという名称で親しまれた旧スタジアムも正式な名称はアーセナルスタジアムである。新スタジアムであるエミレーツスタジアムは収容人員6万人、ハイベリーの3万8000人に比べて大きく増え、クラブの収益を大きく増やすことになった。
ジャン・ミッシェル・オラスという会長を持つリヨンが、クラブの商業的な成功を考えないはずはない。リヨンは新スタジアムの設計を米国の設計事務所ポピュラス社に依頼する。このポピュラス社はエミレーツスタジアムの設計を行った会社である。
■入場料収入を増やし、ネーミングライツも募集中
プレミアリーグの各クラブは1990年代以降、スタジアムを改修し、入場者数を増やすとともに、設備を整えて、入場料の単価を向上させ、入場料収入を大幅に増加させてきた。これと同じ動きをしてきたフランスのクラブはないと言えるであろう。
リヨンもこれまでの41,044人収容のジェルラン競技場から新しい59,186人収容のスタジアムに変わり、さらに高価格でのチケット販売が期待できるVIPシートをこれまでの1800席から6000席に増加させることなどにより、入場料収入を現在の1100万ユーロから5年後には7000万ユーロへ増加させようと目論んでいる。
また、このスタジアムは建設段階では光のスタジアム(リヨンはリュミエール兄弟が映画を完成させた映画発祥の地であり、リュミエール=光の街、とも言われる)などと言われてきたが、現在はパルク・オランピック・リヨネと称している。しかし、アーセナルの本拠地がエミレーツスタジアムと名乗っているようにネーミングライツによってさらなる収入を得ようと考えている。現在ネーミングライツのスポンサーを募集中であり、このネーミングライツによって年間800万ユーロから1000万ユーロの収入が入ってくると考えられている。
このように入場料収入、ネーミングライツによって財政的に大きなクラブとなるリヨンはもちろん、競技面で欧州のトップクラブに割って入りたいところである。
■新監督が新スタジアムで采配をふるうリヨン
本連載第1957回で紹介した通り、リヨンは後半戦からはブルーノ・ジェネジオが監督になる。初陣はフランスカップで下部のリーグのチーム相手にアウエーで7-0と勝利したが、やはり同じ1部のチーム、そしてホームゲームでこそ真価が問われる。
そのリヨンが迎えるトロワであるが、前半戦は未勝利で勝ち星がない。得点、失点ともに20チームの中で最下位であり、くみしやすい相手である。リヨン-トロワ戦は満員の観衆の前で1月9日17時にキックオフされた。リヨンはリーグ戦では11月8日以来勝ち星がない。今季のリヨンの不振はアレクサンドル・ラカゼットがブレーキになっているからともいえる。昨季は27得点を挙げリーグ得点王になったが、今季は前半戦でわずか6得点である。新監督の選手起用が気になったが、ラカゼットを継続してトップに起用する。
■アレクサンドル・ラカゼットが新スタジアムの第1号ゴール、リヨン快勝
試合開始からチームの力、勢いの差は明白であり、18分にラカゼットが先制点をあげる。パルク・オランピック・リヨネの第1号ゴールは地元のエースの復活弾となった。
後半に入り、67分にトロワはいったん追いつくが、72分にリヨンの勝ち越し点を決めたのは右ウイング、今季初先発という新監督に抜擢起用されたラシド・ゲザルであった。ここからリヨンは得点を重ね、81分にはジョルダン・フェリー、アディショナルタイムの93分にはクローディオ・ボービューがネットを揺らし、4-1というスコアで新しいスタジアムで最初の勝者となったのである。(この項、終わり)