第1967回 荒れに荒れたフランスカップ (1) パリサンジェルマン、トゥールーズに逆転勝利
5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■週半ばに行われるフランスカップベスト16決定戦
本連載の第1956回から第1959回にかけてフランスカップのベスト32決定戦の模様を紹介した。1部勢の初戦となるこの年始のベスト32決定戦は例年多くのジャイアントキリングが起こることで注目されるが、今年は下部のリーグのクラブに敗れたチームはスタッド・ド・ランスのみ、そして1部勢同士の対戦で敗れたカーンとニースを除く17チームがベスト16決定戦に進出した。
フランスカップで1部勢が出場するベスト32決定戦以降で週末に行われるのは初戦のベスト32決定戦と最後の決勝戦だけであり、ベスト16決定戦から準決勝までの4試合はリーグ戦の合間をぬって週の半ばに行われる。ただし、ナショナルリーグ以下のチームの出場する試合の場合は週末にも試合が設定される。
■わずか12日の間に3回行われるパリサンジェルマン-トゥールーズ戦
ベスト16決定戦は1月16日の土曜日から1月23日の土曜日までにかけて行われた。そして最初の16日の土曜日は4部に相当するCFA同士のサンマロとスタッド・モントワの対戦である。サンマロがラグビー部門で有名なスタッド・モントワを破ってベスト16一番乗りを決める。
1部勢が登場し始めたのは1月19日の火曜日からである。この日は1部勢同士の対戦3試合があり、8チームが登場した。中でも一番注目を集めたのがパリサンジェルマン-トゥールーズの1戦である。国内三冠に加え、チャンピオンズリーグ制覇で四冠を目指すパリサンジェルマンについてはこれ以上紹介するまでもないであろう。
一方、トゥールーズはリーグ戦では降格圏内であるが、前回までの本連載で紹介した通り12月以降負けておらず、前週に行われたリーグカップの準々決勝ではマルセイユに勝利し、準決勝進出を決めている。
準々決勝後に準決勝の抽選があり、1月27日にパリサンジェルマンと対戦することになっている。さらに1月16日にはリーグ戦の第21節で対戦する。つまりこの両チームは1月16日のリーグ戦(トゥールーズ)、1月19日のフランスカップ(パリ)、1月27日のリーグカップ(パリ)とわずか12日間のうちに3回も対戦するのである。1部勢が参戦している段階の国内三大タイトルがすべて行われるのは1月とフランスカップの準決勝とリーグカップの決勝が行われる4月だけであり、このように10日間の間に3回も対戦するということは極めて珍しいことであろう。
■第1ラウンドのリーグ戦はパリサンジェルマンが圧倒
第1ラウンドのリーグ戦、トゥールーズの市営競技場には3万人を超える観客が集まった。試合はアウエーのパリサンジェルマンが一方的に支配する。ボール保持率も75パーセント、パスを自由自在につなぐ。一方、リーグで最もレッドカードが多いトゥールーズは厳しい守りを見せる。気迫で勝るトゥールーズはパリサンジェルマンに対し、競り合いで勝ち、得点を許さず、健闘する。しかし、パリサンジェルマンに勝利を呼び寄せたのはズラタン・イブラヒモビッチであった。後半に入って73分、CKからイブラヒモビッチがヘディングで得点を決める。この決勝点でパリサンジェルマンが勝利する。
■トゥールーズの先制も実らず、ズラタン・イブラヒモビッチが決勝点
そして3日後の第2ラウンドは舞台を変えてパルク・デ・プランス。パリサンジェルマンは先発を9人入れ替える。若手を多く起用し、イブラヒモビッチもベンチにいる。トゥールーズは11分にパリサンジェルマンの守備の乱れを突いてワンツーが決まり、フランソワ・ムーバンジェのゴールで先制する。前半はこのままトゥールーズが1点リードして折り返す。ハーフタイムにはパルク・デ・プランスの観客からブーイングが起こる。
パリサンジェルマンは54分に3日前の試合にも先発したダビド・ルイスがゴールを決めて同点に追いつく。64分には選手を交代し、イブラヒモビッチ、ルーカスがピッチに入る。このまま延長戦かと思われた88分、トゥールーズの選手がペナルティエリア内で痛恨のファウル、主審はPKをパリサンジェルマンに与える。このPKをイブラヒモビッチが決め、パリサンジェルマンが競り勝ったのである。(続く)