第1994回 試練の続くラグビーフランス代表 (6) スコットランドに敗れ、優勝を逃す

 5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■監督交代、メンバーを入れ替えたイングランドとフランスが上位

 新人を大量に起用したギ・ノベ新体制のフランス代表、これまで紹介してきたとおり、イタリア、アイルランドに競り勝ちながら、ウェールズ戦では敵陣深く攻め込む時間が多かったが、肝心なところで反則を犯し、10-19と敗れてしまった。
 昨年のワールドカップで欧州勢は準決勝に進むことができず、フランス、アイルランド、スコットランド、ウェールズは準々決勝で南半球勢に敗れ、イングランドとイタリアは予選プールで敗退しており、欧州勢にとっては史上最悪の成績となった。各チームとも巻き返しを図りたいところであるが、フランスとイングランドは監督を交代し、新メンバーを大量に入れて今年の6か国対抗に臨んだのに対し、スコットランド、アイルランド、ウェールズ、イタリアは監督を続投、そしてメンバーの入れ替えも少ない。
 このような中で、第3節を終えた段階でフランスは2勝1敗の2位、首位は3連勝のイングランドである。結果としては監督、メンバーを入れ替えた2チームが上位を占めている。

■ウェールズ戦に勝利したイングランドがグランドスラムに王手

 第3節は3月12日の土曜日にアイルランド-イタリア戦、イングランド-ウェールズ戦、3月13日の日曜日にスコットランド-フランス戦が行われた。ワールドカップの予選プール敗退から6か国対抗3連勝と、新監督の手腕が注目を集めているイングランドはウェールズ相手に4連勝を目指す。イングランドは前半に16-0と圧倒し、楽勝かと思われたが、終盤にウェールズが猛反撃を仕掛け、さらにイングランドはシンビンで数的不利になり、ウェールズは74分と77分に連続トライ(いずれもゴール成功)で4点差に迫る。最終的にイングランドが逃げ切った。またイングランドは英国3協会との対戦に全勝し、トリプルクラウンを達成し、グランドスラムに王手をかけた。
 フランスはスコットランド戦に勝利し、3月19日の最終節でのイングランドとの直接対決にも勝利すれば、イングランドと4勝1敗で並び、得失点差での争いとなる。そのためにもフランスはスコットランド相手に大量得点差をつけて勝利したい。

■経験のある選手を起用したフランス

 第2節で対戦したアイルランド、第3節で対戦したウェールズと異なり、フランスはスコットランド相手に近年は好成績を残している。フランスがスコットランドに敗れたのは2006年が最後でほぼ10年間負けなしである。また2006年のフランスの敗戦はスコットランドの本拠地であるマレーフィールドでのものであるが、マレーフィールドでのスコットランド戦のその前の敗戦となると1996年にまでさかのぼらなくてはならない。
 ウェールズ戦の敗戦の経験からフランスはロックのヨアン・マエストリ、ウイングにウェスレイ・フォファナという経験のある選手を起用する。そしてゲームをコントロールするハーフ団はスクラムハーフにマキシム・マシュノー、スタンドオフにフランソワ・トラン・デュックのコンビとなる。その中でプロップのジェファーソン・ポワレ、フランカーのヤクバ・カマラ、ウイングのビルミ・バカタワという新メンバーが先発している。

■先制するがペナルティゴールで逆転、キッカーに悩むフランス敗戦

 試合はフランスが4分に主将のギレム・ギラドがあっさりとトライを奪い、先制する。トラン・デュックがゴールを外し、この試合もフランスはキッカーに悩むことになる。対するスコットランドは主将のグレイグ・レイドローが連続してペナルティゴールを決め、逆転する。さらにスチュワート・ホッジ、ダンカン・テイラーがトライを挙げ、18-5と大差をつける。フランスも前半終了間際にガエル・フィクーがトライし、キッカーをマシュノーに代えてゴールも決まり、6点差で折り返す。
 後半に入り、スコットランドは長距離のペナルティゴールをホッジが決める。その後、フランスが優勢な展開となり、マシュノーがペナルティゴールを連続して3点差に迫る。しかし、地元の声援を受けたスコットランドは65分に空飛ぶオランダ人ことティム・ビサーがタッチラインすれすれにトライをあげる。このトライが決め手となってスコットランドはフランス戦10年ぶりの勝利、そしてイングランドの優勝が決まり、フランスは優勝を逃したのである。(続く)

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