第2010回 国内三冠を狙うパリサンジェルマン(2) ズラタン・イブラヒモビッチの一撃で14回目の決勝進出
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■パリサンジェルマンのゴールを守るサルバトーレ・シリグ
主審が肉離れのためにリタイアし、第四の審判が笛を吹くというアクシデントが前半20分過ぎに起こり、ロリアンのファンはパリサンジェルマンに勝利というアクシデントを期待する。ロリアンのファンが注目するのはパリサンジェルマンのゴールを守っているサルバトーレ・シリグである。イタリア代表のシリグはパリサンジェルマンでは以前はレギュラーであったが、今季はケビン・トラップの陰に隠れた第2GKに甘んじている。今季は9試合しか出場しておらず、試合から遠ざかっているところを突きたいところである。しかし、そのシリグも今季出場した9試合では全勝、わずか3失点という盤石の数字を誇る。
パリサンジェルマンにズラタン・イブラヒモビッチあれば、ロリアンにはマジード・ワリスありである。ガーナ代表として2014年のワールドカップにも出場し、グループリーグ最終戦のポルトガル戦ではアサモア・ギャンとともに2トップを組んでいる。
■守勢のロリアンはカウンターアタックで見せ場を作る
試合を支配したのはパリサンジェルマンであったが、最初にゴール前で見せ場を作ったのはロリアンであった。33分にロリアンのラファエル・ゲレイロがパリサンジェルマンのマルキーニョスにペナルティエリア内で倒されるが、代わった主審のセバスチャン・モレイラ氏はペナルティを与えなかった。
一方のパリサンジェルマン、アウエーの不利をものともせず、高いボール保持率を示す。しかしながらパリサンジェルマンも枠内に飛んだシュートは1本だけ、対するロリアンは枠内シュートはなしということで、前半は両チームとも無得点に終わる。
ロリアンのキックオフで始まった後半、ロリアンは62分にようやくこの試合初めての枠内へのシュートをワリスが放ち、チアゴ・シウバの足の間を抜けるが、シリグがボールをキャッチする。また72分にもロリアンはチャンスをつかむが、ここもシリグがチームを救う。シリグは今季のなかでも出色の出来を見せ、ロリアンの得点を許さない。
■ズラタン・イブラヒモビッチ、個人技から得点
カウンターアタック中心のロリアンに対し、ボールを支配しながら決定機を作れないパリサンジェルマンようやく先制点を入れる。75分、アンヘル・ディマリアからのクロスを受けたイブラヒモビッチが個人技でロリアンの守備陣をかわしてシュート、ロリアンのGKのバンジャマン・ルコントのセーブも及ばず、オレンジと黒のスタジアムが沈黙する。
先制されたロリアンのイレブンの闘志は衰えず、アディショナルタイムのCKのチャンスにはGKのルコントも前線に上がったが、得点はならず、パリサンジェルマンが決勝進出、国内三冠に近づいたのである。
■決勝の相手はソショーとマルセイユの勝者
フランスカップで14回目の決勝進出を決めたパリサンジェルマンの相手はその翌日に決まる。4月20日に2部のソショーがマルセイユを迎える1戦である。ジャイアントキリングも期待したいが、パリサンジェルマンの国内三冠を阻むことができるのはライバルであるマルセイユであるという声もある。ソショーは2部リーグで15位、対するマルセイユは1部で15位と奇しくも1部と2部の15位対決となった。
この両チームは2007年の決勝戦で対戦している。第717回の本連載で紹介している通り、ジャック・シラク大統領が最後に臨席したこの試合、マルセイユが先制し、ソショーが追い付き、延長戦となり、延長戦でもマルセイユが先行したが、ソショーが追い付き、PK戦で決着をつけることになった。PK戦でGKのテディ・リシェールが活躍したソショーは実に70年ぶりのフランスカップ優勝となった。ソショーは合わせて前座試合のガンバルデラカップでも優勝しており、兄弟優勝を記録した。一方のマルセイユはカップファイナルで敗れ続けており、1990年代初頭以来の久しぶりのタイトルを目指したが、敗れ去っている。
2007年の決勝を戦った両チームはその後大きく変わったのである。(続く)