第2022回 パリサンジェルマン、2年連続三冠(2) 今季最終戦も主役はズラタン・イブラヒモビッチ
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■パリサンジェルマンに対し9連敗中のマルセイユ
例年にない注目を集めた顔合わせとなった今季のフランスカップ決勝、一般に販売されるチケットは1万8000枚であったが、あっという間に売り切れた。
フランスのクラシコと言われるパリサンジェルマンとマルセイユの戦いであるが、近年はパリサンジェルマンが一方的に勝利を重ねており、マルセイユは2012年10月12日にベロドロームで行われたリーグ戦で2-2と引き分けたのを最後に9連敗を喫している。
■財力の差でパリサンジェルマンに軍配
マルセイユがパリサンジェルマンに勝てなくなったのは相性ではなく、財力によるものであると言えよう。1980年代後半から1990年代初めにかけてマルセイユの会長はベルナール・タピ、圧倒的な財政力をバックに国内外のスター選手を集めたマルセイユは栄華を誇った。チャンピオンズリーグ決勝でマルセイユと同じように財力をバックにして選手補強を行ったシルビオ・ベルルスコーニが会長を務めたイタリアのACミランを下し、フランス勢として初の欧州制覇を果たしたかと思われたが、八百長疑惑によりタイトルは剥奪、クラブも2部降格、ビッグクラブではなくなってしまった。そこから復活したマルセイユは2000年代にはパリサンジェルマンを上回るクラブの財政規模を取り戻すにいたった。
2011年にはパリサンジェルマンの1.5倍の財政規模であったが、逆転したのは2012年のことである。マルセイユの年間予算1億3000万ユーロに対し、パリサンジェルマンの年間予算は1億5000万ユーロとなる。カタール資本の出資を契機にビッグクラブとなったパリサンジェルマンはその後も年間予算の規模を拡大し、ついに現在は4億9000万ユーロになり、1億2500万ユーロにとどまるマルセイユのほぼ5倍の財政規模をバックに大型補強を続けている。この結果として過去10年間の国内タイトル数はマルセイユの4(リーグ1、リーグカップ3)に対し、パリサンジェルマンは11(リーグ4、カップ3、リーグカップ4)という差に表れているのである。
■先制されるが追いついたマルセイユ
試合はマルセイユにキックオフで始まり、開始早々にマルセイユがサルバトーレ・シリグの守るゴールを襲うが、先制点はその直後にパリサンジェルマンがあげた。2分のブレーズ・マツイディのシュートがこの試合最初の得点となる。これに対してマルセイユも果敢に反撃を試み、5分にはフローリアン・トーバンが左足で強烈なシュート、パリサンジェルマンのチアゴ・シウバ、マクスウェルがスライディングするが遅く、マルセイユは同点に追いつく。
■ズラタン・イブラヒモビッチ、最終戦でも2ゴール
前半は1-1の同点で折り返したが、後半開始直後にマルセイユのニコラ・ヌクルがマツイディをペナルティエリア内で倒し、ここで主役が登場する。ズラタン・イブラヒモビッチがPKで勝ち越し点をあげる。イブラヒモビッチはこれでマルセイユ戦通算10得点目となる。6点のパウレタを大きく引き離す数字である。さらにイブラヒモビッチは57分にはエディンソン・カバーニのゴールをアシストする。3-1とパリサンジェルマンがリードを広げて試合は終盤に入る。82分にもマツイディのパスをオフサイドライン上で受けたイブラヒモビッチがスティーブ・マンダンダの守るゴールのネットを揺らし、マルセイユ戦通算11ゴールとなり、4-1とする。マルセイユも87分にミッチー・バシャウィが反撃のゴールを決めるが、パリサンジェルマンが4-2と勝利し、2年連続の三冠を達成したのである。
パリサンジェルマンがフランスカップを獲得したことにより、リーグ6位のサンテチエンヌが来季のヨーロッパリーグの予備戦3回戦から参戦することになり、リーグ4位のリールはヨーロッパリーグの本戦から出場することになった。
フランスではチャンピオンズトロフィーも含めると毎年4つのタイトルが争われるが、パリサンジェルマンが年間予算でマルセイユを上回った2012-13シーズン以降、パリサンジェルマンは16タイトル中12タイトルを獲得している。
今季最終の試合でもイブラヒモビッチが主役のパリサンジェルマンが栄冠を掲げたのである。(この項、終わり)