第2025回 欧州選手権の直前の2試合で連勝(3) 1984年大会直前にも対戦したスコットランド
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■カメルーン戦の課題と収穫
守備の乱れから2失点を喫しながら、終了間際にディミトリ・パイエがFKを直接ゴールに決めて勝利したフランス、課題と収穫が明らかになった1戦であった。課題はラファエル・バランがいなくなったストッパー陣である。アディル・ラミを追加招集したが、2年半ぶりの代表での試合でラミは安定感を欠き、2失点の原因となった。収穫はパイエのFKである。このところのフランスはFKから直接得点を決めることがなかった。相手にとってペナルティエリアの外であれば安心してファウルをすることができる。しかし、今回がFKからのゴール2得点目というパイエがカリム・ベンゼマ、マチュー・バルブエナの離脱によってポジションがめぐってきたチャンスを活かし、新たな武器をフランスチームは手に入れた。
■1部復帰を決めたメスで6年ぶりに国際試合
本大会前の最後の試合はメスでスコットランドと戦う。メスでのフランス代表の試合は2005年5月のハンガリー戦、2010年10月のルクセンブルク戦についで3試合目となる。メスは本連載第2019回でも紹介したとおり、2部の最終戦でルアーブルに勝ち点、得失点差で追いつかれたが、総得点の差で3位に滑り込み、1部に復帰する。1部昇格よりも先にこのフランス代表戦の日程は決まっていたが、メスのファンにとっては1部復帰に勝るとも劣らぬプレゼントとなった。
メスのサンサンポリアン競技場は25000人収容であるが、チケットは売り切れ、1200人のスコットランドのサポーターが一角に陣取った。
■2008年欧州選手権予選でフランスに連勝したスコットランド
スコットランドは今回の欧州選手権予選ではグループDで4位に終わり、1996年を最後に本大会から遠ざかっている。また、ワールドカップでも1998年大会が最後の本大会であり、今世紀に入ってからは国際大会の舞台に立てずにいる。しかしながらフランスとの対戦成績は8勝7敗と勝ち越している。そしてスコットランドはフランスに対して過去の遺産で勝ち越しているわけではない。直近の両国の対戦は2008年欧州選手権の予選であり、このときスコットランドはホーム、アウエーともフランスに勝利し、それまでの負け越しを逆転したのである。
■ディディエ・デシャンが代表初ゴールを決めたスコットランド戦
そして注目はこの試合の両監督である。フランスを率いるのはディディエ・デシャン、改めて紹介するまでもないが、選手としてフランス代表出場試合数103を誇る。意外なことにフランス代表としての得点は4点にとどまっているが、デシャンが代表初ゴールを決めたのが代表4戦目となったスコットランド戦であった。デシャンの代表デビューは1989年4月29日のワールドカップ予選のユーゴスラビア戦、翌年のワールドカップが苦しくなった状況での新人の起用であった。そのデシャンの代表初ゴールが生まれたのは予選もあと2試合となった同年10月11日のスコットランド戦であった。勝てばワールドカップ出場が決まるスコットランドに対し、前半26分にデシャンが目の覚めるようなゴールで先制点、この若武者のゴールで勢いづいたフランスは3-0とスコットランドを一蹴する。
この試合には現在スコットランド代表の監督を務めているゴードン・ストラッカンも出場していた。27年前のパリでの完敗の記憶は消えていないであろう。監督としてもクラブレベルでは実績を残したストラッカンも代表監督としては持ち駒の制約もあり苦戦しているが、開幕前最後の試合で開催国を一泡吹かせたいところである。
3回目の優勝を狙うフランスであるが、最初の優勝は地元開催の1984年、この時も大会前最後の親善試合の相手はスコットランドであった。1984年6月1日にマルセイユのベロドロームで行われた試合、この試合にもストラッカンは先発出場している。そしてこの試合は前半に2点あげたフランスが勝利し、その後の本大会でも優勝する。さて歴史は繰り返すであろうか。(続く)