第2035回 アイルランドに逆転勝利 (1) 因縁のアイルランドとリヨンで対戦
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■ティエリー・アンリのハンドが見逃されてワールドカップに出場したフランス
グループリーグ最終日の最終試合の終了後、ようやくフランスの決勝トーナメント1回戦の対戦相手がアイルランドに決まった。
アイルランドというと本連載の読者の皆様であれば2010年ワールドカップ南アフリカ大会予選のプレーオフを思い出されるであろう。2大会連続でワールドカップ予選で対決した両国、第1戦はダブリンで行われ、フランスが1-0と先勝、4日後のスタッド・ド・フランスでの第2戦は前半の33分にアイルランドの主将ロビー・キーンがゴールを決めて、通算スコアを1-1とする。90分間では決着がつかず、延長戦に突入する。延長前半の103分、今度はフランスの主将のティエリー・アンリが事件を起こした、ペナルティエリア内でボールを受けたアンリの手に明らかにボールが当たり、手でコントロールされたボールをゴール前にあげて、ウィリアム・ギャラスがヘディングでシュートを決める。結局、この1点が決め手となってフランスが本大会出場を決めるが、アンリ自身もハンドを認め、八百長疑惑も取りざたされるなど、後味の悪い幕切れとなった。本大会に出場したフランスは南アフリカではチームに内紛がおこり、惨敗したのは周知のとおりである。
■フランス代表が試合をしたことがないリヨンのパルク・オランピック・リヨネ
それ以来のアイルランドとの対戦となった。舞台はスタッド・ド・フランスではなくリヨンのパルク・オランピック・リヨネである。今年1月にオープンした新スタジアム、実はフランス代表はこのスタジアムに初登場する。今回の欧州選手権では1998年のワールドカップ以降に完成したスタジアムは4か所あるが、2011年に完成したニースのアリアンツ・リビエラ競技場は2014年6月1日にパラグアイと親善試合を行い、2012年に完成したリールのピエール・モーロワ競技場はちょうどその1週間後にジャマイカと試合を行っており、すでに本大会でもグループリーグ最終戦でスイスと対戦している。2015年5月に完成したボルドーのマットミュット・アトランティック競技場も同年9月にセルビアを迎えて試合を行っている。唯一このリヨンのパルク・オランピック・リヨネだけフランス代表が試合をしたことのないスタジアムなのである。
リーグ戦でもこの新スタジアムで試合をした経験があるのはリヨンに所属するクリストフ・ジャレ、サミュエル・ウムティティ以外にブレーズ・マツイディ、控えのGKのスティーブ・マンダンダとブノワ・コスティルくらいである。
■決勝トーナメントでは成績が悪い過去10年間のフランス
また、国際大会の決勝トーナメントでフランスは近年なかなか勝利することができない。2年前のワールドカップこそ、決勝トーナメント1回戦でナイジェリアに勝利したが、準々決勝でドイツに敗れている。2012年の欧州選手権は1回戦(準々決勝)でスペインに敗れている。2010年のワールドカップ、2008年の欧州選手権はグループリーグで敗れており、決勝トーナメントで欧州あるいは南米のチームに勝利したのは今から10年前のワールドカップの準決勝のポルトガル戦のことである。
■勢いに乗るアイルランド、5年前の試合に出場した選手たち
フランスは6月26日に行われたグループリーグ最終戦ではスイスとの低調な試合内容に終わり、それから1週間の間隔を置き、また日曜日に試合となる。一方、相手のアイルランドはグループリーグ最終戦は6月30日の水曜日であり、中3日での試合となるが、グループリーグ最終戦でのイタリア戦でのドラマチックな勝利はチームを勢いづけた。
5年前のスタッド・ド・フランスでの試合に出場していた選手で今回のメンバーに入っているのはフランスはGKのウーゴ・ロリスと両サイドバックのバカリ・サーニャとパトリス・エブラ、攻撃陣ではアンドレ・ピエール・ジニャックである。
復讐に燃えるアイルランドはGKのシェイ・ギブン、DFのジョン・オシェイ、MFのグレン・ウェーラン、エイダン・マクギーディ、そして35歳となったFWのロビー・キーンも忘れてはならないのである。(続く)