第2044回 延長戦でポルトガルに敗れる(2) 優位を予想されたフランス
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■絶好調のアントワン・グリエズマン、采配がさえるディディエ・デシャン監督
エースのクリスチャーノ・ロナウドを擁し優勝候補の一角とみられていたポルトガル、グループリーグ、決勝トーナメントともに組み合わせに恵まれて決勝に進出してきた感は否めない。
対するフランスは、すでに決勝トーナメント進出を決めていたグループリーグの最終戦のスイス戦、先勝トーナメント1回戦のアイルランド戦の前半以外は危なげない試合運びで決勝に進出する。そして特筆すべき点は2点であろう。まず、試合ごとにヒーローが入れ替わっていくというこのような国際大会で優勝するチームにふさわしいパターンに加え、大会終盤にきてアントワン・グリエズマンが絶好調であり、準決勝のドイツ戦での2得点を含め、通算6ゴールとなり得点王争いのトップに立っていることである。そしてもう1点はデシャン監督の采配がことごとく的中する。苦戦を強いられた決勝トーナメント1回戦のアイルランド戦では前半に先行されたが、後半に入りシステムとメンバーを変えて逆転劇を演じる。さらに、続くアイスランド戦では守備の要のアディル・ラミが出場停止となり、サミュエル・ウムティティを代表にデビューさせ、続くドイツ戦でも起用し、ドイツの攻撃陣を完封した。
■過去の対戦成績で圧倒したフランス、直近の親善試合でも連勝
このように大会の終盤に入って勢いを増してきたフランスは過去の戦績もポルトガルを圧倒している。過去24回の対戦成績はフランス18勝、ポルトガル5勝、引き分けは1回だけである。今大会のフランスは開催国ということで予選が免除となったが、予選のグループIに入ったとみなされ、グループIのチームとホームアンドアウエーで親善試合を戦ってきた。ポルトガルはグループIに入り、フランスと対戦している。予選で同じグループだったチームが本大会の決勝で顔を合わせるというのは極めて珍しいケースである。肝心の結果であるが、フランスが連勝している。2014年10月11日にはスタッド・ド・フランスで対戦し、前半にカリム・ベンゼマ、後半にポール・ポグバが得点をあげ、2-1と勝利している。2015年9月4日には試合終盤の85分にマチュー・バルブエナが右足でシュートを決め、1-0と勝利している。
■ポルトガルの最後の勝利はフランスがメンバーを落とした1975年の親善試合
ポルトガルがフランスに勝利したのは1975年4月26日にコロンブで行われた親善試合が最後である。フランスは0-2で敗れたが、この試合の3日前にチャンピオンズカップの準決勝のサンテチエンヌ-バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)戦が行われ、フランスはサンテチエンヌ勢を欠く陣容であり、ベストメンバーではなかった。なおこの試合は1924年のパリ・オリンピックのメイン会場となったイブ・デュ・マノワール競技場で行われた現段階では最後のフランス代表戦である。
■欧州選手権、ワールドカップの準決勝で3回ポルトガルを下したフランス
それ以来フランスはポルトガルに負けていないが、欧州選手権、ワールドカップの準決勝でことごとくポルトガルを接戦の末下している。近いところでは2006年ワールドカップ・ドイツ大会の準決勝、ポルトガルは試合を支配しながらも得点をあげることができず、逆にフランスは33分にティエリー・アンリがリカルド・カルバーリョにペナルティエリア内でファウルを受け、フランスはPKを獲得、これをジネディーヌ・ジダンが決め、フランスが決勝に進出する。
2000年欧州選手権でも準決勝で対戦、ポルトガルはヌーノ・ゴメス、フランスはアンリがゴールを決めて、試合は延長戦に入る。延長後半の117分にポルトガルのアベル・ザビエルがペナルティエリア内でハンド、ジダンがペナルティを決め、ゴールデンゴール方式の試合に終止符を打った。
そして1984年の欧州選手権ではマルセイユで行われた準決勝で対戦、本連載第2041回で紹介したとおり、延長戦に入っても双方が得点をあげ、ミッシェル・プラティニのゴールが決勝点となった。このようにフランスはポルトガルを国際大会の準決勝で3たび下したのである。(続く)