第2064回 再始動したフランス代表(2) 欧州選手権のメンバーが主体となった23人
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■代表出場歴のない4人
8月25日にディディエ・デシャン監督は9月1日のイタリアとの親善試合、9月6日のベラルーシとのワールドカップ予選の2試合に臨む23人のメンバーを発表した。前回の本連載では35歳のパトリス・エブラがメンバーから外れたことについて言及したが、今回は新メンバーを中心に欧州選手権に出場しなかったメンバーについて紹介しよう。
まず、これまでに代表で試合に出場したことのない選手が4人いる。GKのブノワ・コスティル、アルフォンス・アレオラ、DFのセバスチャン・コルシア、ジブリル・シディベである。
■ウーゴ・ロリス、バカリ・サーニャの負傷によってポストが空いたGKと右DF
GKは第1GKのウーゴ・ロリスの負傷による離脱のために1つポストが空いた。コスティルとアレオラは欧州選手権で第3GKの座を争い、欧州選手権にエントリーしたのはコスティルであったが、コスティルはまだ代表での出場経験はない。他方、アレオラは23歳であり、所属するパリサンジェルマンでも試合出場の機会は少ないが、ロリス、スティーブ・マンダンダ(31歳)、コスティル(29歳)の年齢を考えれば、将来の背番号1として期待される人材である。
また、DFのコルシアとシディベも欧州選手権のメンバーであった右サイドDFのバカリ・サーニャの負傷、クリストフ・ジャレの体調不良によってメンバー入りした。実はこの2人は今夏まではリールのチームメイトであった。シディベはこの夏モナコに移籍し、本連載でも紹介したチャンピオンズリーグの予備戦、プレーオフに早速出場し、活躍している。右サイドのDFはサーニャ、ジャレが外れたことにより、2人の代表未経験者の争いとなるが、欧州選手権のバックアップメンバーであったシディベが一歩リードしているといえるであろう。
■リヨンの快進撃を支えるアレクサンドル・ラガゼットが復帰
それ以外の復帰組に注目しよう。左サイドのDFはエブラが選出されなかったことによりレイバン・クルザワが復帰し、ルカ・ディーニュとポジション争いをする。両サイドはベテラン選手の不在による若手のポジション争いとなるが、なんといっても心強いのは中央のラファエル・バランの復帰である。
一方、攻撃陣での復帰組はアレクサンドル・ラカゼットとナビル・フェキルというリヨン所属の2人である。リヨンはシーズン開幕直前のチャンピオンズトロフィー(通常の国ではスーパーカップに相当)ではパリサンジェルマンに大敗し、どうなることかと思われたが、リーグが開幕してからは2連勝で首位である。このリヨンの快進撃を支えるのがラカゼットであり、開幕戦のアウエーのナンシー戦でハットトリック、第2節のカーン戦でもPKではある2得点をあげ、2試合で早くも5得点をマークし、リヨンの全得点は欧州選手権でバックアップメンバーになっていたポストプレーヤーによるものである。すでに、オリビエ・ジルー、アンドレ・ピエール・ジニャック、アントワン・グリエズマンという同タイプの選手がいるが、デシャン監督もリストに名を入れざるを得ないであろう。
他方、同じリヨンから選出されたフェキルはラカゼットほどのパフォーマンスを示しているわけではないが、23歳のFWの将来に対する期待の表れと言えるであろう。
■今回もメンバーから外れたカリム・ベンゼマとマチュー・バルブエナ
一方、今回もメンバーから外れたのはカリム・ベンゼマは当然であるが、デシャン監督の就任以来重用されていたマチュー・バルブエナは今回もまたリストから外れている。昨年の秋まではデシャンのチームのバッテリーともいえる2人であったが、不幸な事件が2人を代表チームから遠ざけた。また欧州選手権にはバックアップメンバーとして入ったハテム・ベンアルファの名前もない。さらにラッサナ・ディアラもエンゴロ・カンテの出現によって存在理由が乏しくなった。
基本的には欧州選手権の準優勝チームをベースとする23人が2年後のワールドカップに向けて始動したのである。(終わり)