第2103回 ラグビー、南半球勢と3連戦(6) ニュージーランドの守備を崩せず、惜敗
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■過去の好勝負を帳消しにした昨年ワールドカップでの大敗
米国のシカゴでの試合で111年の歴史で初めてアイルランドに敗れたニュージーランドであるが、欧州に渡ってきてからはイタリア、アイルランドに対し危なげない勝利をあげて、フランスで今年最後の試合を迎える。
フランスとニュージーランドの対戦は本連載でもしばしば紹介してきたが、フランスの12勝1分44敗である。フランスは大きく負け越しているが、特にワールドカップでは印象的な戦いをしている。ただし、昨年のワールドカップ準々決勝での対戦はそれまでの好勝負を帳消しにしてしまうような試合となり、フランスは13-62と大敗している。そのカーディフでの敗戦から1年、フランスは6か国対抗、夏のアルゼンチン遠征でもチーム状態が不安定で好ゲームと凡ゲームを繰り返してきた。夏に発表したスコッドも秋に入って離脱者が続出、しかし11月の試合はサモアに大勝、豪州に惜敗とチームは立ち直っている。このところ9連敗中のニュージーランドに一矢報いたいところである。
■攻撃的な布陣を引いたフランス
スタッド・ド・フランスでの今年最後のスポーツの試合になる試合の先発メンバーは次のとおりである。FWの第一列はグザビエ・チョッキ、主将のギエーム・ギラド、ウイニ・アトニオ、第二列はセバスチャン・バーマイナとヨアン・マエストリ、フランカー陣はシャルル・オリボンとケビン・グルドン、ナンバー8はルイ・ピカモールである。ハーフ団はスクラムハーフはマキシム・マシュノー、スタンドオフはカミーユ・ロペス、スリークォーターバックは左からビリミ・バカタワ、ウェスレイ・フォファナ、レミ・ラメラ、ノア・ナカイタジ、そしてフルバックはデュランである。
豪州戦の先発メンバーとの変更は3人、左プロップのチョッキ、スタンドオフのロペス、フルバックのブライス・デュランが入れ替わった。バカタワ、デュラン、ナカイタジと並ぶバックスリーは攻撃的であり、追加招集のロペスもプレーの精度には課題があるが、アイデアに富むプレー選択をすることから攻撃的な布陣である。
■圧倒的にボールを支配したが、決め手を欠き、リードを許す
セカンドジャージーを着たニュージーランドのハカで試合は始まり、フランスのディフェンスのすきをついてニュージーランドが5分に先制トライをあげる。フランスはボール支配率で上回り、陣地でも押し込む。しかしながら、ニュージーランドの組織的なディフェンスの前にトライをあげることができず、スタッド・ド・フランスに集まった8万の観衆はフラストレーションがたまる。さらに17分にもニュージーランドはペナルティゴールを決めて10-0と差を広げる。一方的に試合を支配しながら得点を奪うことができなかったフランスの初得点は25分、中央やや左35メートルのペナルティゴールをマシュノーが決めて3点を返す。前半終了間際にもフランスはマシュノーがペナルティゴールを決めて6-10と追い上げる。ショットの差で豪州戦に敗れたフランスであり、確実に3点を積み重ねたい。
追い上げムードで始まった後半であるが、43分にフランスのハーフ団が痛恨のミス、マシュノーからロペスのパスがボーデン・バレットにインターセプトされ、90メートルを走られてトライを許す。ゴールも決まって11点差となった。ターンオーバーの数はニュージーランドの方がフランスの3倍、プレーの精度がスコアの差となった。
■新星バティスト・スランの登場でリズムが変わる
あきらめムードが出てきたスタジアムであったが、48分の選手交代でリズムが変わった。スクラムハーフをマシュノーに代え、バティスト・スランを投入する。昨季のフランスリーグの最優秀新人に選ばれたボルドー・べグルの22歳の選手である。スピードあふれるプレーで試合の流れを1人で変えてしまった。キッカーも任され、出場3分後にはペナルティゴールを決めて9-17と追い上げる。しかしフランスは58分にもまた不運な形でトライとゴールを献上し、9-24と差が広がる。
新指揮官スランの存在はボール支配率で優るフランスをゴールラインに近づけた。まず62分にはペナルティからスランが素早くリスタートし、ピカモールがトライ、ゴールも成功し、8点差になる。77分にはスランがペナルティを決めて射程距離の5点差となる。なおもフランスは攻め続けたが、ニュージーランドが逃げ切り、フランスは今年最後の試合でも黒星を喫したのである。(この項、終わり)