第194回 フランスリーグ第36節 (2) リヨン、パリサンジェルマンを下して連覇に前進

■パリとリヨンを結ぶ「太陽の高速道路」

 5月に入って2回目の4連休。最終日の11日の夕方にパリに向かう道路はいずれも大渋滞。4日間のバカンスを東西南北で過ごしたパリジャンがパリにもどってくるわけだが、いつものことながら一番の渋滞はパリから南に延びるA6、つまり高速道路6号線である。このパリとリヨンを結ぶ約500キロのA6は別名「太陽の高速道路」と言われている。南仏の燦々と輝く太陽を求めて大量にパリジャンが南下する時に利用するからこのような別名がついているのである。首都のパリと第二の都市のリヨンを結ぶ高速道路であるから、フランス経済を支える大動脈であるはずだが、ビジネスよりもバカンスに重点をおくフランス人らしいネーミングであろう。

■いつもより早く始まった渋滞、今季最後のリーグ戦のテレビ中継

 さて、パリに向かうA6の渋滞がいつもの連休よりも早く始まった。サマータイムとなって日暮れは8時過ぎであり、まだ日は高いのに、フォンテーヌブローあたりで全く動かなくなってしまった渋滞にいらつくフランス人。その理由は夜9時にキックオフされるリヨン-パリサンジェルマン戦をテレビ観戦するためである。明日から仕事と言う4連休の最終日の夜にパリから渋滞の逆方向の高速を飛ばしてリヨンまで試合を観戦に行くという熱心なファンはフランスにはほとんどいない。初夏の太陽を求めて南仏にバカンスに出かけ、いつもより早く自宅に戻り、夕食は冷蔵庫の中の冷凍食品を電子レンジで温めてすまし、ソファーの上でテレビを見る、というのが一般的なパリジャンの過ごし方であろう。しかも、次節以降はリーグが大詰めを迎えるため、全10試合が同時刻にキックオフされるため、テレビ中継も多元中継となり、リーグ戦の特定の1試合をキックオフから試合終了まで90分間中継するのはこれが最後となる。
 前夜にモナコが勝ったため、パリサンジェルマンがリヨンに勝てば、前週のモナコに続き、2週連続して首位のチームをパリサンジェルマンが順位表のトップからひきずりおろすことになる。リーグ優勝が不可能となったパリジャンの唯一の楽しみである。

■ビッグクラブになりつつあるリヨン

 パリとリヨン、先述したとおり、首都と第二の都市であるが、サッカーの世界においてそれほどライバル心を強く持つわけではなかった。その理由はリヨンの実績がそれほどのものではなかったからである。リヨンはフランスだけではなく欧州の主要都市でリーグ優勝の経験のない数少ない都市であった。パリサンジェルマンにとって最大のライバルはマルセイユ、打倒マルセイユを選手もファンも念頭に思ってきた。ところが近年リヨンが勢力を伸ばし、ついに昨シーズンはリヨンがリーグ初優勝、この陰にはリヨンが着々と財政面でもビッグクラブへの道を歩み、大型補強をしてきたことも見落とせない。
 パリサンジェルマンにとってライバルにもならない存在だったリヨンが、いつの間にかフランスリーグの雄への足固めをはじめており、パリサンジェルマンにとってはこのリヨン戦で一泡吹かせようと虎視眈々と狙っている。続出した負傷者も復帰し、リヨンの首位降ろしのお膳立ては整った。しかもパリサンジェルマンが勝てば首位になるのはモナコであり、マルセイユではない。パリサンジェルマンのファンであれば、パリサンジェルマンの敗戦以上に見たくないものはマルセイユの優勝であろう。心置きなくリヨン戦に集中することができる。過去10年のリヨンでの成績はパリサンジェルマンの1勝4分5敗、唯一の勝利は優勝したシーズンの1993-94シーズンのことであり、特に過去3年間は3連敗している。

■リヨンが首位キープ、混戦にピリオドか

 ホームゲームでのパリサンジェルマンとの相性の良さもあるが、リヨンは前年の覇者にふさわしい戦いをした。リヨンはここ一番の戦いの方法を熟知している。25分に主将のソニー・アンデルソンが先制点をあげ、この1点をリヨンが守りきる。リヨンはリーグ終盤最大の敵から勝ち点3を獲得し、首位をキープしたのである。
 マルセイユがリーグ優勝から離れて久しいことをこの連載で何回か紹介してきたが、実はマルセイユ5連覇の後の9シーズンで、フランスリーグで連覇を果たしたチームはない。過去9シーズンで7チームが優勝し、2度優勝したチームもナント(1994-95と2000-01)とモナコ(1996-97と1999-2000)だけである。このように優勝チームが分散していることは他の主要国では例がない。フランスリーグは今年だけではなく、歴史的にも混戦なのである。その中で昨年初優勝したばかりのリヨンが混戦にピリオドを打つのかもしれない。(この項、終わり)

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