第2118回 100年目を迎えたフランスカップ(3) リーグ首位のニースが最下位のロリアンに敗れる
6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■1部に勝てず、下位リーグ勢に取りこぼした2部勢
前々回と前回の本連載ではフランスカップでの2部勢の戦いぶりについて紹介してきた。1部勢が参戦してきたベスト32決定戦で2部勢の4チームが1部勢と対戦したが、1部勢を下したのは1部18位のメッスに勝利した2部3位のRCランスだけである。前回紹介した以外に2部勢はベスト32決定戦でスタッド・ド・ランスが5部に相当するサレグミンに敗れており、ラバル、GFCアジャクシオと合わせて3チームが下位のリーグのチームに敗れている。また2部勢同士の対戦が1カードだけあり、オセールとトロワが戦った。オセールが先制したものの、トロワに逆転されたが、終了間際に追いつき、延長戦に突入した。延長戦では延長後半にオセールが2点を入れて突き放し、2年前の準優勝チームとしての意地を見せたのである。
結局、ベスト32決定戦を勝ち抜いた2部勢はランス、ニオール、ストラスブール、オセールの4チームだけである。また、ブレストはCFA2部のフルーリーとパリ近郊で対戦することになっていたが、グラウンドが凍結し、試合は1月18日に延期された。すなわち、2部20チームのうち、ベスト16決定戦に進出するのは4チームないしは5チームと今年も厳しい戦いとなった。
■メッス以外は下位リーグ勢を圧倒した1部勢
そしてここからの主役は1部勢である。ジャイアントキリングが話題になるフランスカップであるが、近年はベスト32決定戦の段階で1部の上位勢が下位リーグのチームに敗れることは珍しくなった。上記のとおり、2部勢との対戦も3勝1敗で乗り切ったが、それ以外に下位のリーグと対戦したのは8チームであるがすべて勝利している。この8試合はすべて90分で決着がつき、8試合中7試合が2点差以上であった。すなわち1部勢のうち下位リーグのチームと対戦したチームは12チームあったが、敗れたのはメッスだけだったことになる。
■順当にリーグ下位のチームを下したマルセイユ、パリサンジェルマン、リヨン
一方、近年のフランスカップで話題になるのが1部勢同士のカードである。今回も1部勢同士のカードが4試合組まれた。ベスト32決定戦には1部勢20チームを含む64チームが出場し、所属リーグを考慮することなく抽選が行われる。したがって3分の1弱の確率で1部勢と対戦することになる。今年はロリアン(前期最下位)-ニース(首位)、トゥールーズ(9位)-マルセイユ(6位)、リヨン(4位)-モンペリエ(11位)、パリサンジェルマン(3位)-バスティア(14位)という4試合が組まれた。
この中で最も注目を集めたのは古豪同士の対戦となったトゥールーズ-マルセイユ戦であった。両チームは昨季のフランスカップではいずれもパリサンジェルマンに敗れているが、特に決勝で敗れたマルセイユは今年こそライバルに勝利してフランスカップを獲得したいところである。この試合は予想通りの熱戦となり、後半開始早々にマルセイユはレミ・カベラの先制点でリードしたが、トゥールーズも57分位ジミー・デュルマズのゴールで追いつき、延長戦となる。延長戦では107分位カベラが決勝点をあげて、マルセイユが勝利した。
また、3連覇を狙うパリサンジェルマンはバスティア相手に7-0、リヨンもモンペリエに5-0とそれぞれ実績のある上位チームはホームで大勝、今年最初の試合で幸先の良いスタートを切った。
■リーグ最下位のロリアンが首位のニースに逆転勝利
しかし、思わぬ結果となったのがニースである。ロリアンは最下位であり、ニースはロリアンでは2010年を最後に負けていないという相性の良さもある。ニースはアラッサン・プレアが先制点を奪う。しかし、ロリアンは71分にかつて天才少年と言われアーセナルに所属したジェレミー・アリアディエールのゴールで同点に追いつく。すでに33歳となったベテランのゴールがロリアンに火をつけ、75分にバリッド・メルーが逆転ゴールを決める。
1部勢は16チームがベスト16決定戦に進出したものの、リーグ首位のニースが最下位のロリアンに敗れるというジャイアントキリングが起こり、姿を消したのである。(この項、終わり)