第70回 決勝を迎えるリーグカップ
■日本ではナビスコカップにあたる大会
前回は4部リーグに相当するCFA(アマチュアリーグ)に所属するカレーが準決勝に進出したフランスカップを取り上げたが、今回はもう一つのカップ戦であるリーグカップを取り上げたい。
上位のプロチームのみによってノックアウト方式で争われるリーグカップは、世界各国で行われており、日本でも2000年度のナビスコカップが4月12日に開幕した。日本では1973年にリーグカップが始まっているが、フランスで始まったのは1991-1992シーズンと歴史が浅い。また当初は試合数を多くしてレベルアップを図るとともに、本拠地以外のスタジアムで試合を開催し、サッカーの普及を図っていくという意味あいもあり、出場メンバーも一軍半から二軍という大会であり、シーズンオフに近い時期に行われていた。
■欧州カップ戦の再編の中で変化したリーグカップの位置づけ
しかし、1994-95のシーズンからリーグカップの意味あいが変わってきた。まず、決勝を従来の地方都市からフランスカップの決勝と同じパリのパルク・デ・プランスで行うことになり、日程面も調整され、各チームともリーグ戦やフランスカップと同じ陣容で戦うようになった。次に1996-97のシーズン以降、イングランドにならい優勝チームにUEFAカップの出場権が与えられるようになり、この年の優勝チームのストラスブールはリーグで9位ながらUEFAカップに出場したのである。そしてスタッド・ド・フランスが完成して、初めてクラブチームがこのピッチに立ったのは1998年4月4日のリーグカップのファイナリスト、パリサンジェルマンとボルドーであった(PK戦の末、パリサンジェルマンの勝利)。
さらに今シーズンからはUEFAカップとカップウィナーズカップとが統合したため、フランスカップの優勝チームもUEFAカップに出場することになった。したがって欧州のカップ戦を目指すという点ではフランスカップもリーグカップも同じ位置づけになり、新興のリーグカップの地位は相対的に向上したのである。来年度の欧州カップにはフランスからはチャンピオンズリーグにリーグ上位の3チーム、UEFAカップにはリーグの4位チーム、フランスカップの勝者、リーグカップの勝者の3チームが出場することになっている。リーグカップの決勝が行われるのは4月22日であり、フランスカップの決勝(5月7日)やリーグの最終節(5月20日)よりも早く、来季の欧州カップの出場権をいち早く獲得することができるタイトルである。
優勝するための試合数は、通常は5試合、下位リーグのチームでも6試合と多くはない。フランスカップの場合は、1部リーグのチームでカップを獲得するためには6試合、2部リーグの場合は7試合連続して勝たなくてはならない。このように早く、簡単に欧州カップへの出場権が与えられるタイトルとなり、今年の大会には1部の18チーム、2部の20チームに加え、3部にあたるナショナルリーグからはプロのボーベ、マルチーグ、レッドスターの3チームの合計41チームがエントリーし、11月の予備戦に始まり、過密日程の中でも無理のないスケジュールで大会が行われているのである。
欧州カップへのチケットがかかった大会は盛り上がり、その結果としてリーグカップの賞金がアップするとともに、テレビでも多く放映されるようになった。賞金総額は1億フラン(約15億円)であり、昨年に比べて1000万フラン増えている。優勝チームには賞金総額の5分の1にあたる2000万フラン(約3億円)、準優勝チームにも1000万フラン(約1.5億円)が与えられる。予備戦で敗退したチームでも65万フラン(約1000万円)を獲得できる。
■リーグカップを支えるテレビマネー
このビッグマネーを支えているのがテレビの放映権である。通常フランスの地上波でのサッカー中継は民放のTF1(1チャンネル)が行い、複数の試合が同時進行するワールドカップや欧州選手権の本大会ではフランス国営放送のFrance 2(2チャンネル)とFrance 3(3チャンネル)も放映する。しかしリーグカップはフランス国営放送が5600万フラン(約8.4億円)という放映権料を支払い、独占的に中継している。ベスト16決定戦から決勝まで15試合生中継することになっており、その内訳はベスト16決定戦4試合、ベスト8決定戦4試合、準々決勝以降の7試合は全試合となっている。
ここで注目したいことは、順位や所属リーグを勘案せずに組み合わせを行っていることである。1部リーグが登場するベスト16決定戦の段階から、ドローの魔力で有力チーム同士の対戦がいくつかは存在する。このような有力チーム同士の対戦を時間帯をずらして行い、フランス国営放送は自らの持つ二つのチャネルで生中継することができるのである。
今年の場合、基本的に土曜日の夜に行われるベスト16決定戦の16試合のうち、1部リーグ所属チーム同士の試合が5試合あった。これらのうち、オセール-モナコという注目カードをゴールデンアワーの金曜日の夜、トロワ-ボルドーを土曜日の午後、サンテエチエンヌ-ナントを日曜日の午後、人気チームのマルセイユとバスティアの対戦(奇しくも本連載第7回の「フリアニの悲劇」の再現である)をゴールデンアワーである日曜日の夜というようにキックオフの日時を変更し、二つのチャネルで生中継したのである。フランス国営放送が二つのチャネルを持つ優位性を本連載第11回でテニスのローランギャロスを紹介したときに述べたが、この優位性をリーグカップの放映でも活かしたのである。
■今年の決勝カードは「パリサンジェルマン-グーニョン」
さて、今季のリーグ戦ではモナコが独走態勢をとり、すでに4位以内を決定しているため欧州カップのチケット一番乗りとならないが、4月22日に行われる決勝は1部のパリサンジェルマンと2部のグーニョンの間で争われる。グーニョンはローヌ・アルプ地方にあり、ワールドカップ・フランス大会に出場した日本代表がエクスレバンでの合宿中に練習試合を行った相手である。グーニョンは準決勝で3部にあたるナショナルリーグの名門レッドスターをPK戦で下し、初タイトルを目指す。
パリジャンが期待していた首都ダービーは実現しなかったが、今まで2回の決勝で負けなしのパリサンジェルマンも気合い十分で、3度目のタイトルを目指すのである。