第211回 NBAファイナル (4) トニー・パーカー、頂点に立つ
■「ミスター第3クォーター」のトニー・パーカーの活躍で初戦勝利
過去4年間、ウエスタンカンファレンスの代表が勝利を収めているNBAファイナル。今年のウエスタンカンファレンスの代表はフランス人選手トニー・パーカーが所属するサンアントニオ・スパーズ、イースタンカンファレンスの代表は2年連続でニュージャージー・ネッツ。
第1戦は6月4日に休養十分のネッツがサンアントニオに乗り込む。第2クォーターを終わって42-42のタイスコア。そして第3クォーターにパーカーが「ミスター第3クォーター」の本領発揮。NBAファイナル史上4番目に若い選手であるパーカーの活躍で第3クォーターは15点差をつける。この貯金を守りきり、スパーズはファイナル初戦を101-89とものにする。この試合ティム・ダンカンとパーカーのコンビネーションがさえ、ダンカンは32得点、パーカーは16得点。そしてパーカーは16得点中13点を後半にあげ、勝利に大きく貢献した。
第2戦は終盤までもつれこみ、ネッツが87-85と競り勝つ。この試合、ネッツのジェイソン・キッドが両チーム最多の30得点の大活躍するが、不運だったのはスパーズのポイントガードのパーカー。キッドに次ぐ21得点を記録したが、チームの勝利を呼び寄せることはできず、1勝1敗で両チームはニュージャージーに移動する。
■ライバルのジェイソン・キッドにリベンジ、スパーズが先行
試合場所がカンファレンスファイナルまでと異なり、第3戦から第5戦までをニュージャージーで行い、サンアントニオで第6戦と第7戦を戦うことになる。一気に地元での3連勝で頂点を極めたいネッツ。そのネッツの出鼻をくじいたのがパーカーであった。この試合パーカーは26得点の大活躍でヒーローとなる。第2戦で後塵を拝したキッドに見事リベンジ。キッドをわずか12得点に抑える。このパーカーの活躍で東部での初戦をスパーズが84-79と制し、2勝1敗とリードする。
第4戦はNBAファイナルでも珍しいロースコアのゲーム展開となる。この試合ネッツは第3戦のヒーローのパーカーを徹底マーク。これがこの試合がロースコアになった要因である。パーカーはわずか3得点と沈黙する。どうしても初優勝を飾りたい地元ネッツの執念が優り、ネッツが77-76と1点差で2勝2敗に持ち込む。この段階でファイナルは再びサンアントニオに戻ることが決定したのである。
王手をどちらがかけるかが注目された第5戦でパーカーは復調。14得点をあげ、エースのダンカンの29得点に次ぐ、14得点を記録した。この試合で活躍したのは今季限りで引退を表明しているセンターのデビッド・ロビンソン。37歳の誕生日をファイナル中に迎えたばかりのベテランが意地を見せ、王手をかけて、地元サンアントニオに戻ることになったのである。
■パーカー不調も、ティム・ダンカン、デビッド・ロビンソンが活躍
プレーオフになってから常に4勝2敗で勝ち進んできたスパーズ。決勝も同様に第6戦で4勝目をあげたいところである。しかも舞台は地元である。試合は一進一退という表現がふさわしく、第1クォーターは25-17でネッツ、第2クォーターは21-16でスパーズ。前半を終わった段階でネッツが3点リード。ここでパーカーが「ミスター第3クォーター」としてそれまでどおりの活躍をすれば、一気にスパーズが逆転して突き放し、栄光への道を駆け上がることができたが、やはりファイナルの魔力である。パーカーはこの第6戦でブレーキ、第3クォーターは22-19でネッツ。ネッツは最終クォーターを前に6点差をつける。しかし、この試合を通じてわずか4得点に終わったパーカーに代わって活躍したのがダンカンである。21得点、20リバウンド、10アシストと3部門で2桁の数字を記録するトリプルダブルをこの大一番で記録する。スパーズ一筋の選手生活を送り、この試合を最後にコートを去るロビンソンも13得点、17リバウンド。第4クォーターはスパーズが19得点連取で見事に逆転。ファイナルスコアは88-77でスパーズが4年ぶり2度目の王座についたのである。
■西欧人として初めて頂点に立ったパーカー
最終戦は不本意な成績であったが、フランス人の若武者パーカーの活躍は深夜のフランスだけではなく、ゴールデンアワーの米国も沸かせた。今までにNBAチャンピオンとなったヨーロッパ人はわずか3人。その3人はいずれも東欧の選手(ザン・タバック:クロアチア、トニ・クーコック:クロアチア、スタニスラフ・メドベデンコ:ウクライナ)であり、初めて西欧人の選手として頂点についた。フランスのパーカーから世界のパーカーへと21歳のニューヒーローには期待が高まるばかりである。(この項、終わり)