第215回 コンフェデレーションズカップ2003 (4) トルコに勝ち、決勝進出
■追悼マルク・ビビアン・フォエ選手
まず、最初にリヨンで行われたカメルーン-コロンビア戦の最中に倒れ、息を引き取ったマルク・ビビアン・フォエ選手の急逝に際し、深く哀悼の意を捧げたい。フォエ選手はワールドカップ終了後にイングランドのマンチェスター・シティに移籍したが、ランスとリヨンに所属し、リヨン所属時には初優勝に貢献している。本連載でも何度かその活躍を紹介しているが、フォエ選手のあまりにも短かった人生、そしてその最期の地が優勝の栄光に輝いたリヨンであったことを考えるならば残念で仕方がない。フォエ選手の冥福を祈ると共に、今日も世界の至るところでサッカーボールを追っているあらゆるサッカーマンの健康と無事を祈りたい。
■若手中心のチームが準決勝進出
グループリーグ全勝で準決勝に進出したフランスの相手は昨年のワールドカップ3位のトルコである。ワールドカップ準優勝のドイツが出場辞退したために繰上げ出場となったトルコであるが、昨年のワールドカップとは全くメンバーを代え、若手主体でフランス入りし、登録23人のうち代表キャップ数が二桁の選手はわずか8人である。フランス以上に経験のない選手が多いチームであるが、グループリーグ最終戦では昨年のワールドカップで2度敗れている優勝国ブラジルに対し、見事な試合運びで得点を重ねて引き分け、ブラジルと勝ち点、得失点差で並んだものの、総得点で上回り、準決勝進出を果たしている。今大会の特徴として日本をはじめとして米国、ニュージーランドなど代表歴が豊富なメンバーで臨んだチームがグループリーグで敗退し、フランス、カメルーン、コロンビア、トルコとメンバーの過半数が代表経験10試合以下というチームが準決勝に進出している。
■流れるような展開から得点を重ねた前半
フランスとトルコとの対戦は今まで親善試合が2回、最初は1996年10月にパリで対戦、そして2回目は2000年11月にイスタンブールで対戦し、いずれもフランスが4-0とトルコを一蹴している。しかしながら、昨年のワールドカップで3位になり、また大幅にメンバーを入れ替えて今大会も準決勝に進出してきたトルコの力を侮ることはできない。
さて、注目のフランスの先発メンバー。GKはグレゴリー・クーペ、DFは右からリリアン・テュラム、ウィリアム・ガラス、マルセル・デサイー、ミカエル・クリスタンバル、MFは守備的位置にブルーノ・ペドレッティ、オリビエ・ダクール、攻撃的位置にシルバン・ビルトール、ロベール・ピレス、FWはシドニー・ゴブーとティエリー・アンリ。フォエ選手の急逝というショッキングなニュースで動揺を隠せない状態でキックオフ。試合はフランスが流れるようなパスを縦横につないで先行する。まず11分、右サイドのピレスからセンタリング、ビルトールがつないでフィニッシュはアンリ、この試合でもフランスは先制する。26分にもまた右サイドから得点が生まれる。ゴブー、アンリとつないでピレスが追加点。このままフランスが今までの対戦同様得点を積み重ねるかに見えたが、42分にはトルコのカラデニズ・ゴクデニズが1点を返す。両国の対戦において222分経ったところで初めてトルコはフランスのゴールを破る。一方フランスもすかさずその1分後にビルトールが3点目。日本戦も同様であるが、失点のすぐ後に得点できるところが今大会のフランスの強みである。
■フォエ選手の元同僚クーペ、鬼気迫る表情でピンチを逃れる
ところが後半になると試合を支配したのはトルコ、開始早々の48分にサンリ・トンカイが反撃のゴール。ここからトルコが一方的に試合を進め、スタンドに集まったトルコ系移民の声も大きくなる。ジャック・サンティーニ監督も選手交代をして打開を図るが、ままならない。そして最大のピンチは試合終了間際の87分のことである。今大会相次ぐ守備的DFの離脱により、代役として獅子奮迅の活躍をしたダクールがペナルティエリア内で痛恨のファウル。トルコに同点PKのチャンスが与えられる。ゴールを背にするのは第2GKのクーペ。リヨンの選手であり急逝したフォエ選手と2シーズン苦楽を共にし、試合前には涙を流している。そのクーペの鬼気迫る表情がトルコのキッカーのオカン・イルマズを萎縮させたのであろう。ペナルティスポットから放たれたボールは力なくゴールポストの外を転がっていった。リヨン初優勝の歓喜をフォエ選手と共に分かち合ったサンティーニ監督が第2GKを起用しており、この選手起用が功を奏したわけである。
後半は一方的に押し込まれたが、フランスは決勝でフォエ選手を失ったカメルーンと対戦する。様々な思いの交錯する決勝は昨年のワールドカップ決勝と同様、6月最終日曜日の夜にキックオフされる。(続く)