連覇を狙うフランス・サッカー ワールドカップ予選を戦うフランス-タヒチ、3度目の挑戦(前編)

■フランスの海外領土、タヒチ

 今年は来年のワールドカップに向けた「予選イヤー」である。前回大会優勝のフランスは予選を免除され、親善試合を重ねているが、ワールドカップ予選にフランスが無関係というわけではない。フランス「国内」でワールドカップ予選を戦っているイレブンが存在するからである。それが今回紹介するフランスの海外領土、タヒチである。
 多くの欧州人がロマンと冒険を求めて訪れた「地上の楽園」タヒチの歴史を簡単に説明しよう。
 タヒチ島を主島とするフランス領ポリネシアには、16世紀からスペイン人、ポルトガル人の船が行き来していたが、18世紀後半にはイギリス海軍のサミュエル・ウォリス、フランスのルイ・アントワン・ブーゲンビル、イギリスのジェームズ・クックなどがこの地を訪れる。南国特有の寛容さを持ち合わせたタヒチの人々は、欧州の大国からの訪問者を受け入れ、やがて英仏からの宣教師団も上陸する。19世紀に入り、タヒチを中心とする近隣諸島を支配していたポマレ王朝は欧州列強に対する策を練るが、1842年にはタヒチ、モーレア両島をフランスの保護領とする条約に署名。イギリスも巻き返しを図るが、1890年にはこの地域の主権をフランスに譲渡してしまう。これによってフランスは、オセアニア圏における初めての植民地を誕生させたのである。
 1950年代から60年代にかけて、世界中で植民地の独立運動が起こる。その際にこの地域は、フランスから独立することを選択しなかった。1957年に「フランス領ポリネシア」と命名され、1958年には第5共和制への移行に先立ち住民投票が行われ、フランスの海外領土(TOM)となることを選択して現在に至っている。
 フランスには本土以外に、海外県(DOM)と海外領土(TOM)がある。海外県はインド洋のレユニオン、カリブ海のグアドループなど4つあり、県として独立し、本国にある95の県に準ずるかたちとなっている。一方、海外領土はフランス領ポリネシア以外にオセアニアのニューカレドニアなど合計5つ存在する。海外県よりも広範な自治権を有し、本土から派遣されてきた高等弁務官の下で地方議会が行われるが、一方で本土の上院・下院にも議員を送っているのである。

■唯一の海外県・海外領土の代表チーム

 さて、この数多くある海外県、海外領土(DOM-TOMとフランス語で称する)の中で唯一「代表チーム」を有しているのが、このタヒチである。1935年に来訪したリー陛下号の乗組員のチームに対して選抜チームを作り、7-0で勝ったのがタヒチ・サッカーの暁である。1963年から参加している南太平洋大会では、優勝が5回、準優勝と3位がそれぞれ2回と、タヒチは強豪ぶりを発揮してきた。彼らが世界を目指さないわけがない。タヒチ・サッカー協会は1989年に設立され、翌年の2月には国際サッカー連盟(FIFA)のメンバーとなっている。1992年にはワールドカップ・アメリカ大会の予選に出場した。
 記念すべき初のワールドカップ予選の試合では、ソロモン諸島に1-1で引き分け、プレーオフまで進出した豪州に連敗したが、最終戦でソロモン諸島に4-2と快勝し、ワールドカップ予選での初勝利をあげた。
 続くフランス大会予選では2次リーグから登場したが、ソロモン諸島と1分1敗、前回に続きプレーオフまで進出した豪州に0-5、0-2とまたも連敗し、2度目の挑戦も実らなかった。(後編に続く)

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