第221回 シーズン開幕に備える20チーム

■一足早いバカンスを満喫したサッカー選手

 ツール・ド・フランス一色のフランスの7月であるが、8月初めにシーズンが開幕する。5月にリーグ戦、カップ戦を終えたフランスの各クラブの6月はシーズンオフとなり、コンフェデレーションズカップに出場する選手以外は一足早いバカンスを満喫した。
 しかし、バカンスには必ず終わりがある。フランスリーグの各クラブは6月の下旬にすでに練習を再開し、普通のフランス人がツール・ド・フランスの途中経過に一喜一憂する7月は合宿や練習試合で目前に迫った新シーズンへの準備に余念がない。
 ルアーブル、スダン、トロワの3チームの代わりにトゥールーズ、ルマン、メッスが昇格して新たなシーズンが始まるが、新シーズンに向けた各チームは移籍市場の動く中、急ピッチでチームを仕上げていく。練習再開のピークとなったのは6月23日の月曜日であり、マルセイユ、ナント、ソショーなど9チームがこの日から体を動かし始め、これが練習再開の第一陣である。この前日にフランス国内ではコンフェデレーションズカップのフランス-ニュージーランド戦、日本-コロンビア戦があり、大会の後半を迎えるところで各クラブが始動している。そして一番練習開始が遅かったのがボルドーであり、6月30日。この1週間の間に20チームが始動している。

■ほとんどのチームが国内で合宿

 基本的には地元で練習を行って体を慣らした後、7月に入ってツール・ド・フランスが始まる頃に合宿を開始する。レアル・マドリッドのようなビッグクラブは設備の整った中国や日本で豪華な国外合宿を行うが、フランスではそのようなクラブは存在しない。国外で合宿を行うチームもあるが、ほとんどのチームはフランス国内で合宿を行う。これはやはりクラブの財政的な問題によるところが大きい。例えばランスはヴィシーの元・国立サッカー研修所の設備を使うことにより、1週間の合宿の経費を3万ユーロに抑制することができた。その他のクラブも既存の合宿設備を使うことにより、経費を削減している。
 国内で最長の合宿を行うのがエクスレバンに7月4日から19日まで滞在するパリサンジェルマンである。エクスレバンと言えば1998年のワールドカップ・フランス大会で日本代表が合宿を行った場所であり、日本の読者の皆様はよくご存知であろう。当初のキャンプ地のリストに入っていなかった町を日本が指名し、レベルの高い日本の要求に応えられるよう合宿地としてインフラ整備を行った結果、フランス有数の合宿地となり、パリのビッグクラブが2週間以上の合宿を張ることになったのである。昨年のワールドカップで多くのチームが日本国内で合宿を行ったが、レアル・マドリッド以外にも多くの海外のビッグクラブがワールドカップの遺産を利用し、日本の皆さんは世界のトップクラスの選手を間近でご覧になる機会に恵まれているだろう。
 一方、数少ない国外合宿組は、ストラスブール、メッス、ナント、オセールの4チームだけである。このうちドイツ国境近くに位置するストラスブール、メッスはドイツのフランス国境近くで合宿を行うため「国外」と言う表現がふさわしくないであろう。純粋に国外と言えるのはスイスで行うオセールとオーストリアのチロル地方に移動するナントの2チームだけであろう。

■選手間のコミュニケーションを図る機会となる合宿

 合宿の目的は練習を積むことに加え、移籍によって新たに加わったメンバーとの共同生活により、選手間のコミュニケーションを充実させることである。広山望がこのたび加入したモンペリエはすでに7月12日に合宿を終了しており、シーズン開幕までの練習試合も残すところ1試合であり、移籍のタイミングを逸しているかもしれない。しかし、国際経験の豊富な広山には、この時期の移籍がハンディキャップとならないことを期待したい。

■唯一合宿を行わないボルドー

 このようにほとんどのチームが合宿を行う中で、唯一合宿を行わないチームが最も練習再開が遅かったボルドーである。負傷者が重なったことに加え、バカンスを取るべき6月を代表チームでの活動に費やした選手が多かったため、移動の伴う合宿をやめ、地元で連日練習に励んでいる。
 各チームが仕上げの練習試合をこなす中、すでにニース、ナント、ガンガンはインタートトカップを戦っており、7月26日には前年度リーグチャンピオンのリヨンとカップウィナーのオセールの間で争われるチャンピオンズトロフィーが行われ、8月1日のリール-リヨン戦でシーズンが始まるのである。(この項、終わり)

このページのTOPへ