第226回 2003-04シーズン開幕(2) 優勝候補筆頭のマルセイユ、連勝スタート
■新戦力で「失われた10年」からの再起を図るマルセイユ
前回の本連載では3連覇を目指すリヨンが今年も開幕戦で勝利をあげることができなかったことを紹介したが、今回はシーズン前の優勝予想でリヨンを押さえて最も支持を集めたマルセイユについて紹介しよう。
フランス・サッカーの都を自称するマルセイユであるが、5連覇を果たした最後のシーズンは1992-93である。その後リーグだけではなく、国内外の他のタイトルとも無縁であり、すでに栄光から離れて10年の歳月が経過してしまった。しかし、昨年のリーグでは終始首位を争い、3位にとどまったものの、久しぶりにサッカーの都を熱狂させたことは記憶に新しい。今年はベテランを放出し、若手選手を補強し、「失われた10年」を取り戻すべく、スタッフの意気込みも並々ならぬものがある。
主な新戦力を紹介するとFWにはエジプトのミドをアヤックスから、コートボワールのディディエ・ドログバをガンガンから獲得、この2人が2トップのレギュラー候補である。MFにもセネガル代表として昨年のワールドカップに出場したシルバン・エンディアエをリールから、チェコのスラバン・プラハからステバン・バシェックを獲得し、従来からの選手も合わせ、攻撃陣のレギュラーはほぼ全員が外国人選手となった。一方、守備陣に関してはカタールのクラブに移籍したフランク・ルブッフの後釜として、現役フランス代表のフィリップ・クリスタンバルをバルセロナから獲得し、サイドバックにはセネガル代表のハビブ・ベイエをストラスブールから獲得している。熱狂的なファンの期待に応えようと、近年マルセイユは大物の外国人選手の獲得に走りがちであったが、今年の補強は明らかに有望な若手に的を絞り、チームの若返りを図っていることが明白である。また、アヤックスやバルセロナと言う国外のビッグクラブからの選手獲得もファンの期待を高めている。
■ガンガン奇策、フラット3でマルセイユを迎え撃つ
さて、8月2日のマルセイユの初戦はガンガンでのアウエーゲームである。昨年もガンガンは初戦を迎え、2年連続でビッグクラブを地元に迎えての開幕戦となった。さて、ここでガンガンのベルトラン・マルシャンは奇策を打つ。ガンガンは元来4バックのシステムであったが、前日、3バックのリールがリヨンを完封したことを受けて、急遽3バックにシステムを変更する。また、変更の理由はリールの成功だけではなく、このシステムの産みの親とも言うべきフィリップ・トルシエがちょうどこの時期にカタール代表を率いてフランス国内に遠征してきたことも影響しているであろう。
■交代出場のイブラヒマ・バカヨコがロスタイムに決勝点
そしてこの3バックシステムが功を奏し、強力なマルセイユの攻撃陣はボールを支配して攻撃するものの、無得点に押さえられる。後半に入りマルセイユのアラン・ペラン監督はエンディアエ、ラミネ・サコー、イブラヒマ・バカヨコを次々とピッチに送り出すが、ゴールネットを揺らすことはできず、ガンガンのファンは2年連続の開幕戦での強豪相手のドローを期待した。しかし、今年のマルセイユは監督ならびに選手の優勝予想でトップになるだけのことはある。ロスタイムに入ったばかりの91分にドログバのパスを受けたバカヨコが決勝点を上げ、貴重な勝ち点3を獲得したのである。
■移籍組の活躍でマルセイユ連勝スタート
マルセイユの第2戦は地元ベロドロームでの試合である。他の試合より1日早い8日に行われたこの試合の相手はオセール、優勝予想でも5位に入っている有力チームである。バカンス中とは言え、強豪相手の開幕戦にベロドロームは5万8000人の大観衆で空色に染まった。オセールは1週間前の地元での開幕戦でニースに敗れており、マルセイユでの戦いと言っても勝ち星の欲しいところである。そしてこの試合はマルセイユの今季の補強が正しいものであったことを印象付ける試合となった。58分にミドのゴールはバシェックからドログバ、ドログバからミド、と移籍してきた選手のパスが得点につながったものである。移籍組が演じたこの試合唯一の得点シーンはマルセイユのファンに開幕2連勝と言うバカンス中の最高のプレゼントとなった。
一方、前年覇者のリヨンも第2節は地元での試合、こちらもモナコと言う強豪相手の試合であったが、リヨンが3-1とモナコを圧倒。優勝候補らしい試合となった。第2節を終わった段階で連勝スタートはマルセイユのほかニース、アジャクシオ、リール、逆に連敗スタートはオセール、ボルドー、ガンガンである。マルセイユ、リヨン以外にも注目すべきチームは少なくない。これから10か月間続く20チームによるドラマに今年も注目したい。(この項、終わり)