第2194回 シーズン終了後の3連戦(7) 決勝点はウスマン・ダンベレ、バカンス前最後の試合で6年ぶりに勝利
6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■同時多発テロ直後の前回の対戦
フランスはこれまでイングランドに10勝6分24敗と大きく負け越している。直近の対戦は2015年11月17日、ロンドンのウェンブリーでの親善試合である。この時は4日前にパリで同時多発テロが起こり、ドイツとの親善試合を行っていたスタッド・ド・フランスでも犠牲者が出た。イングランド戦は開催が危ぶまれたが、両国の関係者の英断と努力によって試合が決行され、この時はウェンブリーの大型ビジョンにフランス国歌の「ラ・マルセイエーズ」の歌詞が映し出されている。肝心の試合結果であるが、0-2とフランスは敗れている。先制点は当時まだ19歳だったデル・アリ、今回は代表から外れたウェイン・ルーニーが追加点を記録している。
■オリビエ・ジルーとキリアン・ムバッペの2トップ
さて、青の上下と赤のストッキングのフランス代表、先発メンバーは次のとおりである。GKはウーゴ・ロリス、DFは右からジブリル・シディベ、ラファエル・バラン、サミュエル・ウムティティ、バンジャマン・マンディ、MFは守備的な位置にエンゴロ・カンテとポール・ポグバ、両翼が右にウスマン・ダンベレ、左にトマ・ルマール、FWを2トップにし、オリビエ・ジルーとキリアン・ムバッペが並ぶという布陣である。カンテ、ダンベレ、ムバッペの3人がこの3連戦で初めて先発する。また2トップも初めて採用し、ディディエ・デシャン監督はオプションを広げておきたいのであろう。2年前のイングランド戦に出場していたメンバーはロリスとバランだけ、多くのメンバーがその後に代表入りし、世代交代が一気に進んだことを物語っている。
■先制を許したフランス、前半に逆転
試合はイングランドの主将のハリー・ケインが所属のトットナム・ホットスパーの同様のロリスから先制点を決める。9分にスターリングからバートランドにつなぎ、クロスをゴールに決める。フランスはスタッド・ド・フランスでの試合は失点が続き、パリ同時多発テロのあった2015年11月13日のドイツ戦で完封勝利を収めたのを最後に、それ以降8試合連続での失点となった。
22分にフランスはゴール前30メートルの好位置でFKのチャンスを得る。キッカーのルマールがゴール前のジルーに合わせ、ジルーがヘディングシュート、これをイングランドのGKトム・ヒートンがパンチングでクリア、しかしこのクリアボールをゴール前に上がっていたウムティティが右足でシュート、フランスが追い付いた。さらに前半終了間際の43分にはダンベレのシュートをヒートンがよく反応し、ゴールは許さなかったが、こぼれたボールをシディベがシュート、フランスは逆転して後半を迎える。
■PKで追いつかれたが、ウスマン・ダンベレが決勝点
後半立ち上がりの48分、ペナルティエリア内にボールを持ち込んでGKのロリスと一対一になったアリに対してバランがタックルする。ビデオ判定の結果、PKとなり、バランは退場を命じられる。フランスは3月のルクセンブルク、スペインとの連戦でもそれぞれ1つずつPKを与えており、早くも今年3つ目のPK献上、昨年1年間の数字と並んでしまった。また親善試合での退場は1996年のメキシコ戦のフランク・ルブッフ以来21年ぶりのことである。イングランドはケインが決めて同点に追いつく。
2トップの一角のジルーをベンチに下げてストッパーのローラン・コシエルニーを投入したフランスはムバッペの1トップとなる。数的不利となったフランスであるが、若い選手たちが試合を組み立てる意思は変わらない。78分にはルマール、ポグバ、ムバッペとパスをつなぎ、ムバッペが右サイドからクロスをあげる。これをダンベレがシュートし、後半から登場したイングランドのGKジャック・バトランドの守るゴールを破り、フランスはイングランドに7年ぶりに勝利する。フランスがバカンス前の最後の試合で勝利したのは2011年以来6年ぶりのことである。(この項、終わり)