第243回 2003年女子ワールドカップ(5) ブラジルに執念の引き分けもグループリーグ敗退
■全チームに決勝トーナメント進出の可能性があるグループB
女子ワールドカップのグループBは各チーム2試合を消化したところでトップはブラジルの2勝(勝ち点6、得点7、失点1、得失点差+6)、それを追ってノルウェーが1勝1敗(勝ち点3、得点3、失点4、得失点差-1)とフランスが1勝1敗(勝ち点3、得点1、失点2、得失点差-1)で勝ち点、得失点差で並び、韓国は2敗(勝ち点0、得点0、失点4、得失点差-4)となっている。
グループリーグの最終戦は男子同様2試合が同時刻に開催されることになり、現地時間で9月27日12時45分からワシントンDCでフランス-ブラジル戦、ボストンでノルウェー-韓国戦が行われる。数字の上では全てのチームに決勝トーナメント進出の可能性が残されている。フランスがブラジルに4点差以上つけて勝てば、ボストンの試合の結果に関わらず、決勝トーナメント進出となる。それ以外の場合についてはボストンの結果次第であるが、韓国の力が他のチームに比べて劣っていることを考えると、フランスがブラジルに勝ち、ノルウェーが韓国に勝つ、というケースが最もフランスが決勝トーナメントに進出するケースとしてあり得るパターンであろう。
■ロシアに負けながらも意地を見せた女子バスケットボールチーム
この1年間、外交問題で激しく火花を蹴散らしてきた仏米であるが、米国外交のホームグラウンドである首都ワシントンDCでフランスが決勝トーナメント進出を決めるということは大きな意味がある。そしてギリシャで行われているバスケットボールの女子欧州選手権でもフランスは決勝トーナメントに進出したが、決勝トーナメント1回戦で優勝候補のロシアに66-79と敗れ、オリンピック出場権の獲得はならなかった。しかし、順位決定戦ではセルビア・モンテネグロを83-61、ベルギーを94-75と大差をつけて連勝して5位を確保し、意地を見せている。
■フランスと初対戦となるブラジル女子サッカー
さて、男子の世界ランキングでは1位ブラジル、2位フランスと世界の頂点にある両国であるが、女子の世界ではフランスはブラジルと初対戦である。そればかりか、フランスにとって中南米の国との対戦も初めてのことである。ブラジルについて男子はあらためて説明するまでもないが、女子については競技人口も3万6000人とフランスよりも少なく、女子は男子の応援役といったところである。しかし、これまで3回のワールドカップにはすべて出場、前回大会では3位に入っており、アトランタオリンピックでも銀メダルを獲得、南米選手権でもこれまでに4回の優勝を誇り無敵である。世界ランキングもフランスの9位に対し、ブラジルは6位である。
■マリネット・ピション、執念の同点ゴール
ボストンの試合経過が気になる中で試合はキックオフ。立ち上がり早々、フランスは精力的に動く。ボストンでは前半からノルウェーが得点を重ね、韓国を圧倒する展開となっている。一方、ワシントンでのフランス-ブラジル戦はその後ブラジルがボールを支配するようになり、28分には決定的なチャンスをつかむが、フランスはピンチをしのぐ。両チーム無得点でハーフタイム。この時点でボストンの試合はノルウェーが韓国を4-0と大きくリード。このままでいくと、フランスにとってブラジルに4点差以上で勝たなくては決勝トーナメントに進出できない。勝負に出たエリザベート・ロワゼル監督はステファニー・ムニェレ・ベゲをハーフタイムでベンチに下げ、レティシア・トナジを投入する。
ところが、前半からしばしばフランスゴールを脅かしてきたブラジルのカティアが58分についに均衡を破り、先制点。しかし、この失点で気落ちしないのがフランスチームの特長である。勇敢にゴールに立ち向かうフランス、故意のオフサイドで時間稼ぎを行うブラジル。ロスタイムに入る前に、ボストンの試合が終了という連絡が入り、最終スコアはノルウェーが7-1の大勝。この段階で得失点差はノルウェー+5、ブラジル+7であり、得失点差で-2となるフランスの決勝トーナメントはほぼ絶望的である。しかし、4分のロスタイムの最後に待っていた光景はエースのマリネット・ピションの見事なゴールであった。ゴールインの直後、試合終了の笛が吹かれ、彼女たちのアメリカンドリームは終わった。しかし、最後の最後でブラジルに追いついたイレブンの執念は、ワールドカップ初出場のフランス女子サッカーの歴史に永遠に残るのである。(この項、終わり)