第2248回 ワールドカップを目指し、発進(2) 負傷者続出でチャンスを得た選手たち
6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■代表初招集となる21歳のバンジャマン・パバール
ウェールズ、ドイツとの親善試合にエントリーする24人の選手、この中で代表初招集が2人、バンジャマン・パバールとスティーブン・エンゾンジである。
パバールは21歳、ドイツのシュツットガルトに所属する右サイドDFである。シュツットガルトと言えば、かつては岡崎慎司、酒井高徳、現在は浅野拓磨という日本代表選手が所属しており、日本の皆様もよくご存じのクラブであろう。パバールはリールの下部組織で育ち、アンダーエイジの代表にも入り、2015年にリールとプロ契約、そして1年たったところで2016年夏に当時2部のシュツットガルトに移籍したのである。シュツットガルトは今季1部に昇格したが、コンスタントに試合に出場している。
■28歳で代表入りしたスティーブン・エンゾンジ
もう1人のエンゾンジは28歳とかなりの年齢での代表初招集である。コロンブ出身でパリサンジェルマンの下部組織から始まり、いくつかのクラブを経て19歳の時、当時2部のアミアンとプロ契約、2年後に国内外のクラブの間での争奪戦の後、イングランドのブラックバーン・ローバースに移籍する。その後、ストーク・シティを経由して2015年にはスペインのセビリアに移籍し、現在に至っている。ポジションは中盤であるが、196センチという長身が特徴的である。フランスのアンダーエイジの代表歴もあるが、父親がコンゴ民主共和国出身であるため、コンゴ民主共和国からの代表入りの話もあったが、28歳でのフランス代表入りとなった。
■負傷者が続出する中でのメンバー編成
この2人は主力選手の負傷によってチャンスが巡ってきた。フランス代表の現在の右サイドDFのレギュラーはジブリル・シディベであり、昨秋からの予選ではほぼ不動のメンバーであったが、負傷のため離脱している。シディベに代わる右サイドDFの控え選手はこれといった人材がいない。バカリ・サーニャは所属クラブがなく試合から遠ざかっており、マチュー・ドビュッシーは所属するアーセナルではセンターバックとして試合に出場している。しばしば話題となるコルシアはディディエ・デシャン監督の構想外となり、34歳のクリストフ・ジャレしか適任がいない。ジャレの年齢を考えると若手のバックアップメンバーが必要であり、21歳のパバールが招集されたのである。
エンゾンジが招集されたのもエンゴロ・カンテが負傷しているからである。4-4-2システムを採用する場合、守備的MFが2人必要であり、28歳のエンゾンジに声がかかったという次第である。
今回の代表メンバー選出の驚きは負傷による大量の離脱者である。シディベ、カンテだけではなく、GKのウーゴ・ロリス、左サイドDFのバンジャマン・マンディ、MFのポール・ポグバ、攻撃陣ではウスマン・ダンベレ、ディミトリ・パイエ、トマ・ルマールと合計で8人のメンバーが負傷により代表から離脱した。
これだけ大量の負傷者を抱えた中でプレーオフに臨むとなればかなり厳しい状況であったであろう。
■復活組のアントニー・マルシャルとナビル・フェキル
そしてこの大量の負傷者によって代表入りのチャンスを得たのは初選出の2人だけではなく、代表から離れて久しい選手にも声がかかっている。
それがアントニー・マルシャルである。マルシャルは欧州選手権を目指すメンバーとして2015年9月に代表入りし、欧州選手権では決勝戦など3試合に出場している。しかし、昨年の10月を最後に代表から遠ざかっており、今回は1年ぶりの復帰である。
ナビル・フェキルにも注目したい。フェキルはマルシャルよりも半年早く2015年3月に代表入りしたが、同年9月のポルトガル戦で重傷を負い、半年間プレーができなくなる。代表復帰は欧州選手権後の2016年夏であったが、ここでもまた負傷により離脱、しかしデシャン監督は今年の9月に1年ぶりに復帰させ、10月の連戦こそメンバーから外れたが、今回のリストには入ったのである。(続く)