第2251回 ワールドカップを目指し、発進(5) 5度目のフランス国内での親善試合となるウェールズ
6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■予選敗退から1週間たって決まったフランスとの親善試合
ウェールズは昨年の欧州選手権でベスト4という好成績を残しながら、ワールドカップ予選ではなかなかエンジンがかからず、終盤になって3連勝と追い上げたが、最終戦はホームで初黒星を記録した。しかもその相手が2位争いをするアイルランドということで、3位にとどまり、60年ぶりのワールドカップ本大会出場の夢が消えたウェールズ、その敗退から1週間たってフランスとの対戦が決まった。
本大会出場を決めたフランス、予選敗退したウェールズと両チームの立場は対照的であるが、フランスとしてはその次に控えるドイツとの親善試合とセットで選手の起用を考えるであろう。
■フランス国内での親善試合しか対戦記録のない両国
フランスとウェールズ、実はこれまでワールドカップ、欧州選手権の本大会や予選で対戦したことがない。伝統国でありながら不思議なことである。これまで親善試合で4回対戦している。最初の対戦は1933年で1-1の引き分け、次が1939年でフランスの2-1の勝利、そして戦後になって1953年にも6-1と勝利している。唯一のフランスの敗戦が1982年のことであり、0-1と敗れている。そしてこれら4試合全てがフランス国内での試合であり、5試合目の今回もフランスのホームゲームである。ラグビーでは毎年少なくとも6か国対抗で対戦し、1年おきにカーディフの地で試合をする両国であるが、サッカーの世界では、フランスのイレブンはウェールズの地を踏んだことがないのである。
■ワールドカップ敗退後もメンバーは変わらないウェールズ
さて、スタッド・ド・フランスは空席も目立つが6万人の観衆で埋まった。ウェールズは新チームとしての第一歩を踏み出す。11月の親善試合は10日にアウエーでフランス、14日はホームでパナマといずれも本大会に出場するチームと対戦する。今回のワールドカップ予選を戦ったメンバーが比較的若い選手が多かったため、メンバーの入れ替えは少なく、先発全員が10月のワールドカップ予選に登録されたメンバーである。エースのガレス・ベイルは負傷が癒えず、メンバーから外れたままであるが、アーセナル(イングランド)に所属するアーロン・ラムジー、バーンリー(イングランド)に所属するサム・ボークス、そして主将を務めるエバートン(イングランド)のアシュリー・ウィリアムズなどのメンバーがスタッド・ド・フランスの芝生の上に立つ。昨年の欧州選手権で四強に入ったチームのうち、ウェールズだけがスタッド・ド・フランスで試合をしなかった。八強まで範囲を広げてもウェールズ以外にはベルギーだけである。ラグビーの代表チームが少なくとも2年に1回は試合をしているスタッド・ド・フランスに初めてレッドドラゴンがやってきたのである。
■オリビエ・ジルーを中心とする攻撃陣、久々に出場のスティーブ・マンダンダ
このウェールズを迎え撃つフランスの先発メンバーであるが、GKはスティーブ・マンダンダ、DFは右からクリストフ・ジャレ、ローラン・コシエルニー、サミュエル・ウムティティ、レイバン・クルザワ、DFは低い位置にコランタン・トリッソとブレーズ・マツイディ、攻撃陣は右にキリアン・ムバッペ、中央のトップ下にアントワン・グリエズマン、左にキングスレー・コマン、そしてトップにオリビエ・ジルーである。GKであり主将であるウーゴ・ロリスの負傷欠場により、ゴールを守るマンダンダは実に昨年9月6日のベラルーシ戦以来1年2月ぶりの代表チームの試合に出場する。そしてキャプテンマークはマツイディの左腕に巻かれることになった。
4-2-3-1システムで、ジルーの得点力、そしてそれを支えるムバッペ、グリエズマン、コマンという攻撃力は問題がないが、負傷者が多く、ジャレ、ウムティティなど代表の試合から遠ざかっていた選手の多い守備陣にとってはテストとなるであろう。(続く)