第2275回 2018年ワールドカップ展望 (5) 準々決勝で山場を迎えるフランス

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■フランスの初戦は第4シードの豪州

 前回の本連載では出場32チームのグループ分けについて紹介したが、今回はフランスを中心に大会を展望してみよう。
 フランスはグループCになり、大会3日目の16日に豪州とカザンで対戦、21日にエカテリンブルクでペルーと対戦、26日にモスクワのルジニキ競技場でデンマークと対戦する。このグループCはフランスが一歩リード、ペルーとデンマークが2位争い、そしてやや力が劣ると思われるのが豪州である。
 ワールドカップや欧州選手権という長丁場の大会の場合、フランスのように上位を狙うチームは決勝トーナメントに照準を合わせてチームマネジメントを行う。したがってグループリーグではエネルギーを消費せずに、勝ち残りたい。そういう意味では、初戦の豪州戦で確実に勝ち点3をあげ、2位争いをするデンマーク、ペルーとの対戦が第2戦以降となっているのは望ましい対戦順であろう。

■決勝トーナメント1回戦でのアルゼンチンとの対戦を回避したいフランス

 ただ、フランスはグループを首位で通過したい。なぜならば2位通過の場合は決勝トーナメントの初戦はグループDの首位と対戦する。グループDの顔ぶれはアルゼンチン、クロアチア、アイスランド、ナイジェリアであり、アルゼンチンの力が頭一つ抜け出ており、決勝トーナメントの初戦でアルゼンチンとの対戦は回避したいところである。
 さらに、ロシアという広大な国における移動の問題もある。グループリーグでフランスはカザン、エカテリンブルク、モスクワと移動するが、カザンはモスクワの東方800キロ、エカテリンブルクはカザンのさらに800キロ東方というようにほぼ水平に移動する。首位通過の場合は1回戦をカザン、準々決勝をニジニ・ノブゴロド、準決勝をサンクトペテルブルクで戦い、モスクワでの決勝に進む。一方、2位通過の場合は1回戦をロストフ、準々決勝をソチ、準決勝、決勝はモスクワとなる。2位通過の準決勝、決勝が同一会場というのは魅力であるが、ロストフ、ソチという南部の都市では高温になることも考えられ、移動距離だけではなく、コンディショニングにも苦労することが予想される。
 そういうことでフランスはグループリーグでは第3戦までベストメンバーで戦い、首位突破を果たすであろう。

■予選でも同グループだったクロアチアとアイスランド

 決勝トーナメントの1回戦の相手はグループDの2位、クロアチアとアイスランドの争いとみられるが、この両チームは欧州予選でも同じグループであり、直接対決では1勝1敗で、得失点差ではクロアチアが上回っていたが、全体の順位はアイスランドが首位、クロアチアが2位になっている。どちらのチームが出てくるにせよ、フランスは1回戦を突破できるであろう。

■ポルトガルとスペインが争うグループBの勝ち上がりチームと準々決勝で対戦

 問題は準々決勝である。グループAの首位とグループBの2位の勝者との対戦となる。グループAの第1シードは開催国のロシアであるが、ロシアのFIFAランキングは出場国中最下位、ホームアドバンテージに期待するしかない。ところが第2シード以下もウルグアイ、エジプト、サウジアラビアと精彩を欠くメンバーである。どのチームが出てきてもフランスは退けることができるだろう。
 一方、厄介なのがグループBである。グループBの第1シードはポルトガル、第2シードはスペイン、第3シードはイラン、第4シードがモロッコである。ポルトガルとスペインの決勝トーナメント進出が有力であるが、いずれのチームが2位になってもフランスにとっては手ごわい。ポルトガルには一昨年の欧州選手権の決勝、スペインとも昨年3月の親善試合、いずれもスタッド・ド・フランスで敗れている。したがって、フランスにとってはグループBのチームと対戦する準々決勝が大きな関門になるであろう。
 前回大会は優勝したドイツに準々決勝で敗れている。そして準優勝した2006年大会は優勝候補のブラジルに勝利している。さて今回はどのような準々決勝になるであろうか。(続く)

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