第2289回 崖っぷちのラグビー代表(3) 日本にパワーで圧倒され、引き分ける
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■新顔のそろったフランカー、スリークォーターバックス陣
前回の本連載で紹介した通り、ギ・ノベス監督は日本戦にフランソワ・トラン・デュック、ルイ・ピカモール、スコット・スぺディングなどのベテラン勢をメンバーに復帰させた一方で、フランカー陣とスリークォーターバックには新顔をそろえた。
6番の左フランカーには11月11日のニュージーランド戦で代表デビューを果たしたジュディカエル・カンコリエ、7番の右フランカーには11月14日にリヨンで行われたテストマッチ認定外のニュージーランド戦で活躍した初代表のセクー・マカルー、11番左のウィングには同じく初代表、リヨンの試合で2トライをあげたガブリエル・ラクロワ、12番の左センターにはこの日が代表3試合目となるアンリ・シャバンシー、13番の右センターには6月の南アフリカでの代表デビュー戦でトライをあげたダミアン・プヌー、14番の右ウィングのテディ・トマはこれが代表8試合目と一番のキャリアを誇る。
このように新旧のメンバーが入り混じったフランス代表、その混迷の深刻さを象徴している。
■ラグビーの都トゥールーズでトンガに圧勝した日本
一方の日本代表であるが、前週末の18日にトンガとラグビーの都、トゥールーズのエルネスト・ワロンでテストマッチを行った。この競技場で行うこと自体、この一戦がフランスのファンにとって見逃せない試合であることを意味しているであろう。その注目の試合、日本は5トライをあげ、トンガをノートライに押さえ、39-6と大勝する。この試合を見れば日本がニュージーランドやイングランド並みの力を有するワールドカップの優勝候補であることを誰しもが認識したはずであり、トゥールーズ出身のノベス監督もこの試合を見てベテラン勢の起用を決めたはずである。
■ブーイングで迎えられたハーフタイム
フランス代表史上初めて人工芝の上で行われるテストマッチとなった日本戦、日本は前週のトンガ戦とほぼ同じメンバーで臨む。試合はフランスのキックオフで始まったが、開始早々の3分にはフランスのバックス陣の連携のミスから自陣5メートルスクラムのピンチを迎える。ここでフランスはオフサイドの反則、日本は田村優がPGを決めて3点を先行する。その後も日本はフランス陣内でゲームを進めるが、12分にフランスは敵陣に入り、ボールを支配していた密集プレーで日本のリーチマイケルが反則を犯す。45メートルのPGをトラン・デュックが決めてフランスはようやく追いつく。体格に勝るフランスはモールで押し込む攻撃を続けるが、この試合初めてのトライは23分、日本の松島幸太郎のランにフランスの守備陣はついていけず、スクラムハーフの流大につなぎ、最後はフッカーの堀江翔太がトライをあげ、8-3と再びリードする。
これに対し、フランスは30分にトラン・デュックがPGを決めて2点差に詰め寄り、前半終了間際にプロップのラバ・スリマニがトライをあげて、ゴールも決まり、13-8と逆転をして前半を折り返す。リードしているとは言え、試合内容の悪さにナンテールのファンはブーイングでロッカールームに戻るフランスのメンバーを迎え入れる。
■パワーで完敗、トライ数でも下回り、引き分けに終わる
フランスは後半も立て直すことはできなかった。後半開始早々の42分、日本は姫野和樹が突進、ラファエレティモシーがフランスのタックルを振り切ってトライをあげ、13-13の同点に追いつく。完全にフランスの力負けでトライを許した。田村がゴールも決めて日本が15-13と再逆転する。その直後にもペナルティを得た日本はアマナキ・レレィ・マフィがそのまま突進、フランスの防御網は完全にこじ開けられる。幸い、日本のノックオンに救われたが、パワーの差は明らかであった。
49分にラクロワがトライ(ゴール成功)したフランスはまた逆転、5点リードしたが、そのラクロワは61分にシンビンとなる。日本はPGで2点差に迫り、フランスもPGを決めて再び5点差で終盤を迎えた。そして73分に日本はヴァルアサエリ愛がトライを決めてついに同点、田村のゴールが外れて、結局引き分けたが、トライ数では下回り、ファンの怒りは爆発したのである。(続く)