第2293回 崖っぷちのラグビー代表(7) アイルランドにラストプレーで逆転負け

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ロースコアでの惜敗が続くアイルランド戦

 ジャック・ブルネル体制の初戦となる2月3日のアイルランド戦、昨年の6か国対抗では最終戦でイングランドの連勝記録をストップした実力のあるチームとの対戦である。過去の対戦成績はフランスが56勝2分34敗と勝ち越しているが、2010年代に入ってからはアイルランドが一方的に白星を重ねている。2010年代に入ってからは2回の6か国対抗と2011年のワールドカップ直前の2回の真夏のテストマッチでフランスが4連勝したのを最後にアイルランドが5勝1分1敗と大きくリードしている。ただし、2015年のワールドカップの準々決勝の9-24という敗戦を除くとロースコアのゲームばかりであり、僅差で敗れている。

■胸スポンサーにアルトラッド社

 昨秋に2023年のワールドカップの自国開催が決定したフランスは胸スポンサーが代わる。フランス協会は新たなスポンサー探しを行ったが、手をあげたのはわずか1社、このあたりもフランス代表に対する世間の注目度が落ちてきていることを表している。5年契約で3500万ユーロという契約を勝ち取ったのはアルトラッド社である。シリア出身の実業家モヘド・アルトラッド氏が1985年に設立した建設関連の企業である。アルトラッド氏はアーンスト・ヤングが決定する2015年の世界ナンバーワンの起業家に選出されている。熱心なラグビーファンの方はこの会社の名前をご覧になったこともあるであろう。現在、TOP14で首位争いをするモンペリエの会長を務めているのがアルトラッド氏であり、本拠地もネーミングライツでアルトラッド競技場という名称になっている。フランス協会は他国の胸スポンサーのような巨大企業、国内の特定のチームとの関連の強くない企業をスポンサーとして期待していたが、1社しか候補がなければ選択の余地はない。

■守勢のフランスも食い下がり、テディ・トマが逆転トライを決める

 試合は雨の降る中、フランスの19歳のスタンドオフ、マチュー・ジャリベールのキックオフで始まる。明らかにフランスはチームの成熟度が低く、アイルランドにスペースを攻められる。そして2分には自陣でオフサイドの反則、アイルランドのスタンドオフ、ジョナサン・セクストンに易々とペナルティゴールを決められる。また、フランスはオフサイドなど規律を欠くプレーが多く、21分にもラックの中で反則、セクストンにペナルティゴールを決められて0-6と差が広がる。天候同様、暗雲の立ち込めたフランスであったが、34分には主将のギレーム・ギラドがアイルランドのフルバックのロブ・カーニーにプレッシャーをかけてノットリリースザボールの反則を誘う。この日キッカーを務めるマキシム・マシュノーのキックが決まり、フランスは3-6と迫る。ただし、前半終了間際にフランスはセバスチャン・バーマイナが反則、セクストンがペナルティゴールを決めてアイルランドが6点リードして折り返す。
 守勢一方のフランスであったが、得点差は広がっておらず、これまで通りのロースコアの展開となる。しかしながら48分にはレミ・ラメラがオフサイドの反則、セクストンがキックを決めて9点差となる。なんとか点差を離されたくないフランスは53分にジェファーソン・ポワロが相手の反則を誘う。マシュノーのキックでフランスは再び6点差にする。
 選手に疲労の影が押し寄せる終盤、両チームはリザーブのインパクトプレーヤーを投入し、フランスはハーフ団をアントワン・デュポンとアントワン・ベローに代えた。72分にはラインアウトからのこのハーフ団がボールをつないでアイルランドの守備を崩し、パスを受けたテディ・トマが快走を見せる。トマは右中間に走り込み、このゲーム最初のトライが生まれた。そしてベローのゴールも決まり、フランスは13-12とこの試合初めてリードを奪ったのである。78分にもベローはペナルティゴールを狙うが、得点ならず。

■最後に試合を決めたジョナサン・セクストンの40メートルのドロップゴール

 リードを広げることができなかったフランスに対し、アイルランドは終盤ボールを支配し、フェーズを重ねる。フランスも規律のとれた守備を続け、時計の針は80分を回る。そしてアイルランドの攻撃が21フェーズ目となったところで、セクストンが40メートルの位置からドロップゴールを狙う。直前のプレーでもアドバンテージの出ていない状況でもキックを試みたセクストン、よほど自信があるのであろう。セクストンのキックはポールの間を通り、アイルランドが15-13と逆転勝利を収めたのである。(続く)

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