第250回 2003ラグビーワールドカップ開幕(2) 北半球の雄、フランス
■南半球の挑戦状を受けた北半球の伝統国
前回はラグビーのワールドカップが世界一決定戦と言う特色に重きをおいた大会運営、年間スケジュールになっていることを紹介した。日頃から対抗戦や親善試合を行っている強豪国に加え、それに次ぐ実力の国や予選を勝ちあがってきた国が一堂に会し、サッカーのワールドカップをしのぐ1月半の期間にわたって11会場で行われるのがラグビーのワールドカップである。従来、ラグビーは世界一や欧州一を決めるための選手権大会を開くのではなく、双方合意したチーム同士が対抗定期戦や親善試合を行うのが本来のあり方という考え方が支配的であった。かつてはオリンピックの種目にも入ったこともあったが、世界選手権やワールドカップは長らく開催されなかった。ところが1980年代に入り、南半球の豪州、ニュージーランドが世界選手権、ワールドカップを開催しよう、という提案を行い、北半球の諸国がそれに応じてワールドカップを開催した経緯がある。したがって、世界一にこだわる機会は4年に1回、このワールドカップである。
フランスを含む北半球5か国、南半球3か国の強豪はこれまでの大会で順当に成績を残しているが、挑戦状をたたきつけた南半球の国が伝統を誇る北半球の国に優っている。そして南半球の国に一歩及ばない北半球の国で最もいい成績を残しているのがフランスであり、フランスにおけるラグビーのワールドカップへの関心は高いのである。
■第1回大会で早くも北半球の雄に
今までのフランスの戦績を振り返ってみると、第1回大会は準優勝、第2回大会はベスト8、第3回大会3位、第4回大会準優勝と安定した成績を残している。また、これまで北半球の強豪とは5回戦い3勝1分1敗、南半球の強豪とは5回戦い2勝3敗と言う成績である。北半球の対戦国でフランスが敗れたのは第2回大会の準々決勝のイングランド戦だけであり、そのイングランドに対しては次の第3回大会の3位決定戦で19-9と勝利している。一方、南半球の国との対戦については第1回大会の準決勝の豪州戦で劇的な勝利をおさめ、北半球の強豪が初めて南半球の強豪を破ると言う歴史的快挙を遂げている。そして挑戦状を受けた北半球の代表として決勝に駒を進め、決勝の相手は優勝候補ナンバーワンのニュージーランドである。北半球の期待を一手に背負って戦ったブルーであるが、オールブラックスの前に9-29と屈したのであるが、この戦いは北半球の雄としての地位を早くも印象付けたのである。
■フランスに勝利したチームは必ず優勝
続く第2回大会は南半球の強豪との戦いの機会の恵まれず、南アフリカで開催された第3回大会では準決勝で優勝することになる南アフリカと対戦する。地元の大声援、国際スポーツ界に復帰した南アフリカへの注目と言う圧倒的に不利な中でフランスは南アフリカに挑む。残念ながら15-19と惜敗するが、この大会でも北半球勢最高の3位を獲得したのである。
そして第4回大会で圧倒的に支持を集めた優勝候補はニュージーランドである。フランスはグループリーグ、準々決勝まで強豪以外と対戦し、難なく4連勝。しかしそのフランスもニュージーランドには歯が立たないと予想されていたが、大会史に残る名勝負を演じ、優勝候補を43-31と破り、決勝に進出する。決勝では優勝した豪州に力及ばず12-35と大敗するが、4回大会のうち3大会で北半球チームでは最高の成績を残していることは名実共に北半球の雄であると言ってもよいであろう。
さらに、いままで4敗しているが、フランスに勝利したチームは必ず優勝している。組み合わせにさえ恵まれていれば、常に決勝に進出している可能性もあるはずである。
■サッカー以上に注目を集めるラグビーのワールドカップ
そして、サッカーでフランスがしばしば見せてしまう取りこぼしがない、ということも注目できる。これまで述べてきた8強以外に今までフィジー、アルゼンチン、カナダなど、強豪国とほぼ同じ実力を持つ国とも対戦しているが、1度として負けたことがないということも評価すべきであろう。
世界一を決めるにふさわしい大会で、フランスは世界一に限りなく近い戦いを今までしてきた。これがラグビーのワールドカップがサッカーのワールドカップ以上の注目をフランスで集めている理由であろう。(続く)