第8回 フランス、アルジェリアと初対戦(4) 英雄ラバ・マジェール、再び指揮官に
■新体制で再出発するアルジェリア・サッカー
アルジェリアは過去3年間で5人が監督を務めるという混迷の時期にある。昨年から今年にかけてはワールドカップ予選とアフリカ選手権予選が平行して行われたこともあり、今年に入ってから行った親善試合は2月にスロバキアをアルジェに迎えた1試合だけである。そしてようやく来年のアフリカ選手権の本大会に照準を絞ることになり、アルジェリアは代表監督の交代とほぼ同時期にスポーツ大臣、サッカー協会会長も交代しており、新体制でフランス戦に挑むことになる。
紹介が遅れたが、現在の代表監督はラバ・マジェール、前回の連載で紹介したとおり、アルジェリアがワールドカップに初出場し、西ドイツから大金星をあげた試合の先制ゴールの主であり、アルジェリアサッカー史上に残るワールドカップ本大会初ゴールを決めた英雄である。
■1987年、2つのビッグゲームでの大活躍
しかし、日本のサッカーファンの皆さんならば1987年の雪のインターコンチネンタルカップでの延長戦でのゴールが印象に深いはずである。ポルトガルの中でもベンフィカに次ぐチームであるポルトは名将アルツール・ジョルジに率いられ1987年5月27日の欧州チャンピオンズカップの決勝に進出する。相手は西ドイツのバイエルンミュンヘンである。ウィーンで行われたこの試合、バイエルンの優勢が予想され、後半半ばを過ぎても1-0でリード。しかし、ここでマジェールが同点ゴールと勝ち越し点のアシストを連続して決めて、バイエルンの東京行きを阻んだのである。以降、バイエルンは涙をのみ続け、ようやく今年インターコンチネンタルカップに出場することになったのである。
このマジェールの活躍はウィーンから雪の東京へ引き継がれることとなる。南米代表はウルグアイのペニャロール、1961年のインターコンチネンタルカップで同じポルトガルのベンフィカをプレーオフの末破り、世界一に輝いたということでポルトガル勢としては因縁の相手である。東京開催史上唯一の降雪下で行われたこの試合、グランドでは熱戦となり、試合は延長へともつれ込む。そして延長後半の109分、マジェールが決勝点をあげ、ポルトガルのチームとして初めてインターコンチネンタルカップを制覇したのである。マジェールは東京開催となってからはインターコンチネンタルカップ史上で最も活躍したアフリカの選手であろう。
■指揮官として再びアルジェリアに
マジェールは元フランス代表のラシッド・メクルーフィの指導をジュニア時代に受け、テクニシャンとしてその素質を開花し、1978年に20才で代表入りする。マジェールは代表チームでも屋台骨となり、1990年のアフリカ選手権制覇の原動力となり、代表キャップ95試合を数える。1991年に現役引退、その後は指導者としての道を歩む。1994年には34才で代表監督に就任し、当時世界最年少の代表監督と話題になるが、成績不振で1年で解任。捲土重来を期し、トップチームの監督をトミスラフ・イビッチが務めていたポルトでユース監督として出直し、クレールフォンテーヌでの指導者講習会に出席するなどして、1999年にはカタールのアル・ワクラでリーグ制覇を果たす。そして、今年7月7日、英雄が再び7月5日スタジアムに戻ってきたのである。3年間に5回も代表監督が更迭されるというアルジェリアにおいてマジェールが5年契約であったということはマジェールに対する期待の大きさを表しているであろう。(続く)