第253回 欧州選手権予選を振り返る(2) グランドスラムを達成した29人

■抜群の得点力と守備を見せつけた今回のグランドスラム

前回の本連載ではフランス代表史上2度目のグランドスラムとなった今回の欧州選手権予選と最初のグランドスラムである1992年大会予選と比較した。1992年大会予選の時の方が予選突破、グランドスラムとも難しい相手との戦いであったが、チームがスタートした時期を考慮すれば、ワールド惨敗直後にチームをスタートさせた今回のグランドスラムは高く評価することができる。また、忘れてはならないのは相手に恵まれたとはいえ、全く危なげない試合内容でグランドスラムを達成したことである。8試合で実に29得点、そしてわずか2失点というスコアは他の欧州諸国の追随を許さない。得点数、失点数とも今大会の予選に出場した50チームのトップである。攻撃面でフランスに次ぐのは23得点のチェコ、守備面でフランスに次ぐのは3失点のスウェーデンである。ちなみに1992年大会予選成績は8試合で20得点、6失点であり、8試合中5試合は1点差の試合であった。

■予選8試合に29人が出場

 昨年のワールドカップで無得点、3失点と惨敗した直後のチームを立て直したジャック・サンティーニ監督の選手起用については大きく注目すべきであろう。ワールドカップのメンバーから単純にベテランを外し、若手を起用するという図式ではなく、年齢には関係なく国内外のリーグ戦で活躍している選手を次々に登用した。予選8試合に出場した選手は29人であるが、ポジション別に見ると非常に興味深いことがわかる。まず、GKはファビアン・バルテスが7試合に出場、グレゴリー・クーペは初戦のキプロス戦だけの出場にとどまった。

■ベテランDF陣に食い込んだウィリアム・ガラス

 DFは10人の選手が出場している。8試合すべてに先発出場しているリリアン・テュラム、最終戦のイスラエル戦以外の7試合に先発出場したミカエル・シルベストルのような軸となっている選手がいる一方、フィリップ・メクセス、ジャン・アラン・ブームソンなど4人の若手選手は1試合しか出場のチャンスがなかった。昨年のワールドカップではストッパーの高齢化が話題になり、フランク・ルブッフが代表チームを去ることになったが、注目のポスト・ルブッフの後釜として期待されるのが4試合に出場したウィリアム・ガラスである。チェルシーの同僚であるマルセル・デサイーと予選でコンビを組んだのは2試合であったが、親善試合も含めると7試合でコンビを組んでおり、レギュラーメンバーに定着したと言えよう。むしろ心配なのは負傷が絶えないデサイーの体調であろう。しかしそのデサイーも5試合に出場し、出場したすべての試合でキャプテンマークを巻いており、責任感あふれるプレーを見せている。

■磐石のレギュラー陣に挑戦する若手MF、課題の残る3人目以降のFW

 MFも12人の選手が出場し、サンティーニ監督がさまざまな選手をテストしていることと、フランスのサッカー選手の才能が最も集中しやすいポジションであり、多くの才能がこのポジションに集中していることを物語っている。しかしながら、軸となる選手は固定しており、ジネディーヌ・ジダン、クロード・マケレレ、シルバン・ビルトールが7試合出場、パトリック・ビエイラが6試合出場しており、この4人が中心となって中盤が形成されている。そして、ワールドカップ惨敗を知らないロベール・ピレスも負傷から復帰し、3試合に出場している。そして試合出場数は少ないがブノワ・ペドレッティ、ジェローム・ロタンなどは若い才能を感じさせてくれた。レギュラーの壁は厚いが、フランスリーグでも中盤にすばらしい選手がいることを再認識した次第である。
 そしてFWはわずか5人の選手しか起用していない。6得点を挙げたティエリー・アンリ(7試合出場)、ダビッド・トレゼゲ(5試合出場)の2人は立派な成績を残しているが、それに次ぐ選手スティーブ・マルレ(5試合出場、2得点)、ジブリル・シセ(3試合出場、1得点)、シドニー・ゴブー(4試合出場、無得点)という数字は物足りない。得点力は水物であり、アンリ-トレゼゲの2トップがいつ不調になるかわからない。そのときのためにも昨年のワールドカップ直前に代表入りしたシセの飛躍を望みたいところである。(続く)

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