第2366回 フランス、輝く2回目の優勝(4) 決勝戦に臨む2人の大統領
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■広大な国土、異例のキックオフ時間
20年ぶり2回目の優勝を狙うフランス、東欧勢としての初優勝を狙うクロアチアの決勝戦は、7月15日、モスクワ時間で18時にメイン会場のルジニキ競技場でキックオフされる。フランスでは17時にあたるが、これまで欧州域内で行われたワールドカップの決勝はフランスでは20時あるいは21時にキックオフされてきたが、これはロシアが広大な面積を誇る国土を有するからである。実際に試合が行われるのは、西はカリーニングラード、東はエカテリンブルグ、両都市の時差は3時間あり、これはこれまでの大会では1994年の米国大会と同じであるが、ロシアの最東端とモスクワの時差は実に5時間、シベリア地区ではキックオフ時間は22時となり、ロシアとしてはシベリアのファンにも配意してこのようなキックオフ時間となった。
■メイン会場のルジニキ競技場
メイン会場であるルジニキ競技場はロシアを代表する大競技場である。ソ連は1952年のヘルシンキオリンピックに初出場、米国に次ぐ22個の金メダルを獲得し、スポーツが国威発揚の手段として有効であることを認識し、ソ連のナショナリズムの象徴として1955年にレーニン競技場として建設された。1980年のモスクワオリンピックでもメイン会場となり、ソ連解体後の1992年に地名であるルジニキ競技場と改称された。1999年のUEFAカップの決勝が行われ、マルセイユはイタリアのパルマと対戦したが、0-3と敗れている。2008年にはチャンピオンズリーグの決勝が行われ、史上初のイングランド勢対決となったチェルシー-マンチェスターユナイテッド戦はロシア人富豪がオーナーのチェルシーが敗退した。しかし、この時の試合の運営は高く評価され、2013年には世界陸上選手権を開催することとなった。世界陸上開催の後は、今回のワールドカップに向けて大改修を施し、サッカー専用競技場に生まれ変わったのである。人工芝であったが、スコットランドの技術者の力によってハイブリッド人工芝となった。
■両国ともルジニキ競技場では2試合目
この会場でフランスは一次リーグ最終戦のデンマーク戦を戦い、クロアチアは準決勝のイングランド戦を戦っており、ともに2試合目となる。フランスのデンマーク戦はすでに決勝トーナメント進出を決めていたこともあり、フランスにとっては不本意なスコアレスドロー、クロアチアのイングランド戦は序盤から苦戦したが、逆転勝ちを収め、4日後の決勝に駒を進めている。
■フランスのエマニュエル・マクロン大統領、クロアチアのコリンダ・グラバル・キタロビッチ大統領
そしてワールドカップ決勝ともなれば、注目するのは両国のファンだけではない。フランスはエマニュエル・マクロン大統領、クロアチアのコリンダ・グラバル・キタロビッチ大統領の2人が席を共にする。
フランスのマクロン大統領は10日にサンクトペテルブルクで行われたベルギー戦に続いて2試合目の観戦となる。さらに大会開幕前の6月5日には大統領が合宿中のメンバーを激励にクレールフォンテーヌに訪問するという異例の動きをしている。
一方のグラバル・キタロビッチ大統領は決勝トーナメント1回戦のデンマーク戦には赤と白の市松模様のユニフォームに身を包んでサポーター席で観戦、準々決勝は開催国ロシアとの対戦、FIFAのジャンニ・インファンティーニ会長、ロシアのドミトリ・メドベージェフ首相とともにメインスタンドで観戦している。グラバル・キタロビッチ大統領もサッカーファンで知られている。かつてディナモ・ザグレブの役員を務め、その後は代理人を務め、ルカ・モドリッチの移籍金を横領した容疑で裁判にかかったズドラブコ・マミッチから金銭的な支援を受けていたが、代表チームの快進撃がスキャンダルを忘れさせた。
準決勝のフランス-ベルギー戦のサミュエル・ウムティティのヘディングシュートの決まった後のマクロン大統領のガッツポーズは今大会のベストショットの1つと言えるであろう。ファンであるマルセイユがこのルジニキ競技場でパルマに敗れた時、21歳のマクロン大統領はシアンスポの学生であった。
2人の大統領は決勝の3日前、NATOの会合で顔を合わせたばかりである。さて、トリコロールかダミアンか、いずれの大統領に勝利がもたらされるのだろうか。(続く)