第2401回 アイスランドと親善試合(2) 欧州選手権で鮮烈な印象を残したアイスランド
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■9月に入ってから決定したアイスランドとの対戦
唯一の新人、タンギ・ヌドンベレを含む23人で戦うアイスランドとの親善試合、ドイツとのUEFAネーションズリーグの第3戦。フランスは7試合を戦ったワールドカップ終了明けの9月の連戦はいずれもUEFAネーションズリーグという公式戦であったために、フランスが親善試合を戦うのは今年6月9日のリヨンでの米国戦以来10試合ぶりのこととなる。
この親善試合が決まったのは9月になってからであり、11月に行うウルグアイ戦の方が先に決まっている。UEFAネーションズリーグの当日に試合がない国同士のマッチメイクがいかに難しいかを物語っている。
■2回目のフランス代表戦となるギャンガン
この試合は前回の本連載でも紹介したとおりギャンガンで行われる。ギャンガンの本拠地であるルドルー競技場は1990年に完成した比較的新しい競技場である。1万8000人を収容し、イングランドスタイルの長方形の競技場であるが、アウエーの観客席のみ屋根がないという設計になっている。このギャンガンでフランス代表戦が行われるのは2009年10月10日のワールドカップ予選のフェロー諸島戦以来2回目のことである。フェロー諸島戦は本連載第1014回と第1015回で紹介したとおりであるが、フランスは5-0と大勝しグループリーグで2位を確定しプレーオフに進出することとなった。プレーオフでは疑惑のハンドもあったがアイルランドを下して出場した南アフリカの本大会では惨敗を喫する。それから8年、フランスは世界チャンピオンとなってギャンガンに戻ってきたのである。
■2年前の欧州選手権でベスト8入りしたアイスランド
さて、フランスの対戦相手はアイスランド、2年前の欧州選手権での快進撃は記憶に新しい。特にフランスで開催されたこともあり、フランスのファンにとっては強烈な印象を残した。オランダに予選で連勝し、ワールドカップ、欧州選手権を通じて初めて国際大会の本大会に出場したアイスランドは、サンテチエンヌでポルトガルと引き分け、マルセイユでもハンガリーと引き分け、勝ち点2で最終戦のオーストリア戦を迎える。オーストリア戦はメイン会場のスタッド・ド・フランスで行われる。この時点で勝ち点2のアイスランドは勝ち点でポルトガルと並び、総得点の差で2位につけている。最終戦は2試合同時にキックオフされ、終盤を迎えた段階で、ポルトガルはハンガリーと得点の取り合いで3-3、アイスランドはオーストリアと1-1のままである。勝ち点、得失点差は試合前と変わらないが、得点数でポルトガルと順位が入れ替わることになる。アディショナルタイムの94分にアルノール・トラウスタソンが決勝点を入れ、2位通過を確定、試合後のスタッド・ド・フランスはバイキングクラップの嵐となった。そしてこの嵐は続く。決勝トーナメント1回戦では母国イングランドと対戦、ウェイン・ルーニーに先制点を許すが、逆転勝ちする。
準々決勝ではスタッド・ド・フランスに戻り、開催国フランスと対戦する。フランスはオリビエ・ジルー、ポール・ポグバ、ディミトリ・パイエ、アントワン・グリエズマンが前半のうちに得点をあげ、4-0とリードして折り返すが、アイスランドは後半に2点をあげて果敢に反撃を試みる。結局、フランスが5-2と勝利するが、フランスのファンも小国の健闘を称え、スタッド・ド・フランス全体からバイキングクラップが鳴り響いたのである。
■今世紀に入ってからは国際大会の予選で対戦のない両国
このアイスランドとフランスは意外と対戦数が多く、これまでに12試合戦っている。しかし、その中の最初の10試合はいずれも前世紀のワールドカップ、欧州選手権予選での対戦であり、対戦成績はフランスの6勝4分であり、4つの引き分けはいずれもアイスランドのホームゲームである。そして21世紀に入ってから親善試合と先述の欧州選手権の本大会で対戦しているが、これはアイスランドの力が上がってきたことを物語っており、2012年5月にバランシエンヌで行われた親善試合ではアイスランドが2点を先行し、フランスが3点を奪って逆転勝ちを収めるという薄氷の勝利であった。(続く)