第272回 欧州チャンピオンズリーグ・グループリーグ(6) フランス勢、棹尾を飾る最終節

■最終節も真剣勝負のフランス勢3チーム

 これまで5回の連載で、リヨン、モナコ、マルセイユのグループリーグ第5節までの戦いについて紹介してきた。12月9日、10日に行われる最終節はすべてのチームにとって重要な意味を持つことになった。まず、第5節で首位陥落したリヨンは勝てば決勝トーナメント進出となるが、引き分け以下では決勝トーナメント進出は不可能となる。マルセイユは決勝トーナメントこそ逃したが、グループリーグで3位になればUEFAカップ出場となり、最終戦で負けるわけにはいかない。そして決勝トーナメント進出を決定したリヨンも真剣である。

■マルセイユ、アウエーでドロー、UEFAカップへ

 このようにそれぞれの思いのある最終節で先陣を切ったのはUEFAカップ出場を目指すマルセイユであった。グループFは2強(レアル・マドリッド、ポルト)2弱(マルセイユ、パルチザン・ベオグラード)という構図であり、上位2チームが最終節を前に決勝トーナメント進出を決め、勝ち点3のマルセイユが敵地に乗り込んで勝ち点2のパルチザン・ベオグラードと直接対決をする。引き分け以上ならば3位を確保できるが、チャンピオンズリーグでは3連敗、しかも国内リーグでも調子を落としている。一方、元ドイツ代表の闘将ローター・マテウス監督が率いるホームのパルチザン・ベオグラードは勝つことが必要であり、12月9日、厳寒のパルチザン・スタジアムは初勝利を期待する3万観衆で膨れ上がった。この大一番にマルセイユは20歳のジェレミー・ガバノンを起用。この欧州カップ初登場となる若いGKが驚きのプレーを見せる。両チーム無得点で迎えた後半に入り、勝利を求めるパルチザン・ベオグラードは攻撃を重視し、守備が手薄になったところをついて60分にエジプト代表のアーメード・ミドが先制点を上げ、UEFAカップに大きく前進する。そしてパルチザンの反撃を80分のアンドリア・デリバシッチの1点に抑えて、1-1のドローとなる。12年前のレッドスター・ベオグラード戦は悔しいドローとなったマルセイユであるが、今回は歓喜のドロー、マルセイユはグループFで3位を確保、UEFAカップで欧州の戦いを続けることになったのである。

■リヨン、終盤で劇的な決勝点で決勝トーナメントへ

 このマルセイユの敵地でのドローで意気揚がるフランス勢は翌12月10日にリヨンとモナコが登場した。混戦のグループAでリヨンは勝利しない限り、決勝トーナメント進出は不可能である。3位のリヨンは勝ち点でトップと並んでいるが、引き分け以下の場合はUEFAカップ出場以下となる。ホームのリヨンは立ち上がりから攻めまくり、6分にはエウベルが先制点を上げる。守勢のセルチックは25分に同点に追いつく。一方的に攻めつづけるリヨンは勝ち越し点が奪えぬままハーフタイム。後半に入り、52分にジュニーニョが35メートルのロングシュートを放ち、これがゴールネットを揺らす。ミュンヘンではバイエルン・ミュンヘンがリードしており、このまま終了すれば、リヨンが首位で決勝トーナメントに進出する。ところが、その後もピンチをしのぎつづけたセルチックは75分に再び同点に追いつく。残り15分スコアが動かなければ、リヨンは3位にとどまることになる。
 絶望感が漂う中、近年何度も奇跡が起こったジェルラン競技場では残り4分のところで、主審のウルス・マイヤー氏がペナルティスポットを指差した。このPKをジュニーニョが決めて、リヨンは終盤で勝ち越し、グループ首位で決勝トーナメントに駒を進め、クラブ史上初めて欧州チャンピオンズリーグでベスト16以上に勝ち残ったのである。

■スコアレスドローのモナコは首位で日程終了

 そしてすでに決勝トーナメント進出を決めているモナコであるが、グループリーグを首位で突破したい。なぜならばグループリーグで首位のチームはシード扱いとなり、決勝トーナメント1回戦でグループリーグ2位のチームと対戦し、しかも勝敗の決する第2戦をホームで戦うことができるからである。最終節を迎える段階でグループCはモナコとラコルーニャが勝ち点で並び、得失点差でモナコが上回っている。モナコは、最下位が決定しUEFAカップの可能性もないAEKアテネとアウエーで対戦、ライバルのラコルーニャもアウエーでPSVアイントホーヘンと対戦する。ライバルャの試合経過が気になる中でモナコはモチベーションを失った相手からゴールを奪えない。一方、アイントホーヘンでは3位が確定しているPSVアイントホーヘンが終始先行し、ラコルーニャも2度追いつくが、結局ロスタイムにアイントホーヘンが決勝点を上げて、ホームのファンを喜ばせる。この結果、グループリーグ最終戦をスコアレスドローで終えたモナコが勝ち点で上回り、首位で決勝トーナメントに進出し、フランス勢は近年にない好成績で越年するのである。(この項、終わり)

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