第2435回 2019年ラグビーワールドカップ展望 (2) エデンパークの初戦は大敗
8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ワールドカップ直前のサッカー代表は足踏み、ラグビー代表への期待
6月のニュージーランド遠征、ちょうど第1戦が行われた直前にはワールドカップに向けて準備を進めていたサッカーのフランス代表がレンヌで米国と対戦し、1-1のドロー、スコアや試合内容もさることながら、オリビエ・ジルーが負傷退場し、本大会に向けて不安材料を抱えることとなった。結局はロシアでは優勝することになるが、この時点でフランスの優勝を予想するサッカーファンは多くはなかった。一方、ラグビーの代表は長期にわたる停滞から脱するのではないかとの期待を集めた。
■オールブラックスに11連敗中のフランス
フランスは2017年の6月も南アフリカに遠征し、南アフリカ代表と3試合テストマッチを行っているが、2018年はニュージーランドとの3連戦となる。ニュージーランドと3連戦をするのは2013年の6月以来のことである。ワールドカップでは2勝5敗であるが、それ以外のテストマッチではフランスは10勝1分41敗と大きく負け越している。
2013年6月のニュージーランド遠征もフランスは3連敗を喫しており、フランスがニュージーランドの最後に勝利したのは2009年6月にニュージーランドのダニーデンでの第1テストマッチのことである。それ以来11連敗であり、連敗記録を更新中である。
■マチュー・バスタローを主将に起用
フランス代表はこの南半球遠征の主将にマチュー・バスタローを起用する。本連載第2297回で紹介した通り、スコットランド戦後に夜間外出していた多くの代表選手がメンバーから外れ、3年ぶりにバスタローは代表に復帰した。そして3月に行われたウェールズ戦では主将として試合に出場した。バスタローは初めて代表チームで主将を務めたが、試合は惜敗であり、ジャック・ブルネル監督の評価もよく、続くニュージーランド遠征で主将に抜擢されたわけである。
昨年11月のスタッド・ド・フランスでの対戦以来のニュージーランド戦、フランスの先発メンバーはFWのフロントローは左からダニー・プリゾ、カミーユ・シャ、ウイニ・アトニオ、ロックはポール・ガブリヤーグとヨアン・マエストリ、バックローは左右にジュディカエル・カンコリエ、ケビン・グルドン、中央にファビアン・サンコニー、ハーフ団はスクラムハーフにモルガン・パラ、スタンドオフはアントニー・ベロー、スリークォーターバックは左からレミー・グロッソ、ジョフレイ・ドゥーマイルー、バスタロー、テディ・トマ、フルバックはマキシム・メダールというメンバーである。
ブルネル監督は就任後最初に31人のメンバーを選んだが、この試合に先発しているのは5人だけである。わずか4か月でメンバーがこれだけ入れ替わっていることがフランス代表の課題である。そしてバスタローをチームの支柱に据えたわけである。
■前半はリードして折り返すも、後半に失点を重ね大敗
試合はフランスがその期待に応えた。6分にはグロッソが先制トライ、その後もパラがペナルティゴールを重ね、前半は11-8と3点リードしてハーフタイムを迎える。
不名誉な連敗記録をオールブラックスの本拠地エデンパークで止めることができるか、という矢先のことであった。47分にボーデン・バレットのペナルティゴールで追いつかれ、50分にはガブリヤーグがハイタックルによるイエローカードで10分間退出する。この10分間にニュージーランドのフッカーのコーディ・テーラーとウイングのベン・スミスにトライを奪われ、11-30と大きくリードされる。その後、人数差がなくなってもニュージーランドの勢いをフランスは止めることができず、試合最後の20分間に5トライを献上する。フランスは後半は全く得点をあげることができず、最終スコアは11-52と大敗した。41点差の敗戦はこれまでのオールブラックス戦では史上4番目に悪い成績である。フランスはオールブラックスの本拠地での大敗でツアー初戦を終えたのである。(続く)