第2440回 2019年ラグビーワールドカップ展望 (7) 苦手アルゼンチンに勝利し、連敗を脱出
8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■競り負けの多い、現在のフランス
ラストプレーで南アフリカにトライを奪われ、逆転負けを喫したフランス、これで6カ国対抗の最終戦のウェールズ戦から通算して5連敗となった。これでジャック・ブルネル監督の就任以来の戦績は2勝7敗、ニュージーランドとの3連敗を除くと競り負けが多く、勝負弱さを感じさせる。
ワールドカップは勝利がすべての大会である。イングランド、アルゼンチンという相手に対して勝利しなくては、これまでニュージーランド、豪州とともに保ってきたワールドカップ創設以来連続での決勝トーナメント進出が途切れてしまう。
■ワールドカップの実質的なライバル、アルゼンチン
11月のテストマッチの第2戦の相手はアルゼンチンである。ワールドカップの予選プールでの最大のライバルであるといってよい。これまでフランスは50戦して35勝1分14はいと言う成績であり、世界ランキングはフランスより低い10位であるが、注目すべきは今世紀になってからの戦績である。フランスは6勝10敗と大きく負け越している。特に自国開催の2007年のワールドカップでは予選プール、3位決定戦と連敗したことはファンにとっては痛恨の経験である。ワールドカップでの力関係を考えれば、グループCではイングランドが一歩抜け出し、フランスとアルゼンチンが2位争いを見られており、本大会前年の戦いは大きな意味を持つ。
■プレッシャーのかかる試合の舞台はモダンな競技場
フランス代表が6連敗となれば、1968年から1969年に賭けて以来9年ぶりのことであり、昨年は5連敗の跡に日本と引き分けてギ・ノベス監督は辞任している。この試合で負けた場合は監督だけではなく、復帰したベテランのギエーム・ギラドやルイ・ピカモールの進退にもつながりかねない。
このようにプレッシャーのかかる中での試合はリールのピエール・モーロワ競技場で行われた。このモダンなスタジアムでフランスがアルゼンチンと試合をするのは2回目のことである。前回の2012年11月の対戦はこの競技場での初めてのラグビーの試合であり、フランスラグビー史上初めて屋根のある競技場での試合となり、フランスが39-22と勝利しており、それ以降、フランスは国内でアルゼンチンに勝利していない。
フランスの先発メンバーであるが、FWの第一列はジェファーソン・ポワロ、ギラド、セダト・ゴメスサ、ロックはセバスチャン・バーマイナとヨアン・マエストリ、フランカーは左にベンセラス・ローレ、右にアルツール・イトゥリア、ナンバー8にピカモール、ハーフ団はスクラムハーフにバティスト・サラン、スタンドオフはカミーユ・ロペス、スリークォーターバックは左からヨアン・ウジェ、ガエル・フィクー、マチュー・バスタロー、テディ・トマ、フルバックはマキシム・メダール、南アフリカ戦とはスリークォーターバックを2人入れ替えただけ、逆転負けしたとはいえ手ごたえを感じてのメンバー起用である。
■先制を許すが、3トライをあげて久しぶりの勝利
試合は開始早々の2分に動く。アルゼンチンのキック処理時にメダールが負傷し、これを機に先制トライをあげて7点をリードする。フランスもサランのペナルティゴールで3点返すが、その直後にアルゼンチンもペナルティゴールを成功、10分の段階でフランスはアルゼンチンに3-10とリードされる。その後なかなか得点が入らなかったが、25分にはフランスのバックス陣が数的優位な展開から最後はウイングのトマがトライし、サランのゴールは外れるが、8-10と追い上げる。そして33分のサランのペナルティゴールでフランスは11-10と逆転し前半を折り返す。
後半に入って46分にアルゼンチンはペナルティゴールで逆転するが、これがアルゼンチンの最後の得点となった。48分にはフィクーがアルゼンチン守備陣をかわし、右サイドのトマの今日2本目のトライで逆転する。
そして71分にはアルゼンチンゴール前5メートルのラインアウトでアルゼンチンの選手がノックオン、これをギラドが拾ってトライを決める。最終スコアは28-13、フランスは苦手アルゼンチンに勝利し、久しぶりの勝利をあげたのである。(続く)