第283回 フランスカップ本格化(4) マルセイユ、監督交代も実らず3年連続敗退
■監督を交代したマルセイユ
フランスカップのベスト16決定戦でホームにパリサンジェルマンを迎えることになったマルセイユ。過去のフランスカップでのパリサンジェルマン戦の成績が悪いことに加え、このところ以降調子を落としていることは本連載でも紹介してきたが、10月17日のリーグ戦でストラスブールに1-4と完敗してから、リーグ戦、フランスカップ、リーグカップ、チャンピオンズリーグ、ここまで16戦して4勝2分10敗と大きく負け越している。リーグカップはすでに初戦で敗れており、フランスカップでは第一関門のストラスブール戦はファビアン・バルテスの活躍で突破したものの第二関門のパリサンジェルマンはそれ以上の強敵である。年末年始の中断明けの初戦であるオセール戦でも0-2と敗れたマルセイユは監督交代と言う手を打った。アラン・ペラン監督を更迭、代わりにこれまで育成部門のトップであったジョゼ・アニゴを監督に起用することに決定した。
■マルセイユ出身、選手、コーチ、監督をマルセイユで経験
アニゴ新監督はマルセイユ生まれの42歳。選手としてもマルセイユで長く活躍し、まさに地元の星である。31歳で選手としてのキャリアを閉じてからはマルセイユ近郊のアンドゥームというチームの監督を務め、1997年にはマルセイユの育成部門を担当している。2001年にはトミスラフ・イビッチ監督の助監督となり、2001年7月には一時的にイビッチ監督に代わって監督を務め、4試合の指揮をとっており、これが2度目の監督と言うことになる。アニゴ監督とともにマルセイユは新体制を敷き、スタッフは育成とリクルートという2つのパートに分けられ、育成部門のトップにアルベール・エモン、リクルート部門のトップにジャン・フィリップ・デュランを配し、マルセイユ黄金時代復活のための布陣となった。
■新監督効果で連敗をストップさせたいマルセイユ
2002年7月から指揮をとっていたペラン前監督の2年半の成績は73試合で36勝11分26敗、この26敗のうち4割に相当する10敗が過去3か月に集中しているわけであり、「バルテス・ショック」はあったものの、更迭はやむをえない判断であろう。今シーズン1部リーグの監督でその座を追われたのは昨年10月に更迭されたボルドーのエリー・ボープに続き2人目である。
アニゴ監督の第1戦は1月18日のフランスリーグ第21節、地元でランスに3-2と競り勝ち、幸先良いスタートを切る。前回の本連載で紹介したとおり、一昨年、昨年とフランスカップでマルセイユはパリサンジェルマンと対戦し、接戦の末に敗退している。また、リーグ戦でも今季は昨年10月にパリでの試合に敗れ、昨季もホーム、アウエーとも0-3と完敗しており、リーグ、カップを通算して4連敗中である。ボルドーは新監督になってから順位を上げており、マルセイユも同様に新監督効果を期待したいところである。
■3年連続の延長戦、パリサンジェルマンが3年連続勝利
そして1月24日のパリサンジェルマン戦の日を迎えた。新体制で初勝利を上げたマルセイユは闘志を燃やし、本拠地ベロドロームも5万3000人の観衆で超満員となる。マルセイユの先発メンバーにはロシアへの移籍が噂されているロシアの若武者ドミトリ・シチェフも名を連ねている。ところが、先制点はアウエーチームのエースであった。ボルドーからパリサンジェルマンに今季移籍してきたポルトガル人エースのパウレタが開始早々10分にバルテスの守るゴールのネットを揺らす。マルセイユも今シーズンからチームの一員となったディディエ・ドログバが35分に同点ゴールを上げ、試合はその後両チーム譲らず、90分を終了する。3年連続のフランスカップでの対戦は3年連続の延長戦となり、両チームのライバル心が象徴されている。しかし、またもや決勝点を上げたのはパリサンジェルマンだった。バルセロナから今季加入したアルゼンチン代表のファン・ソリンが102分にゴールを上げる。120分の激闘の後、パリサンジェルマンがマルセイユに3年連続で勝利し、マルセイユはリーグカップに続き、フランスカップもトーナメント表からその名前が消えてしまったのである。
だが、この日、得点をあげた3人はいずれも今季からチームに加わったメンバーであり、昨年までの両者の戦いを経験していない選手である。そのように新メンバーが新たな歴史を刻み込んでいく両チームはこれ以上ないライバルであろう。(続く)