第2451回 ラグビー6か国対抗開幕(1) 親子二代の代表、ロマン・エンタマック

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■6か国対抗でステップアップしたいフランス

 今年最大のスポーツイベントはラグビーワールドカップ、これまでの連載でフランス代表の迷走を紹介してきたが、2月の初めには6か国対抗が開幕する
 フランスにとって2018年の最大の衝撃は11月のテストマッチの最終戦、すなわち2018年最後の試合でフィジーに負けたことである。振り返ってみれば、2017年も最終戦で日本と引き分け、ギ・ノベス更迭に結びついた。2年連続で暗い気持ちで新年を迎えたフランスラグビー界である。しかし、昨年の成績を見るならば早春の6か国対抗は6月のニュージーランド遠征、11月のテストマッチよりも良い成績を残しており、ここで秋の本番に向けたステップアップをしたいところである。

■首位争いをするトゥールーズ、クレルモン、ラロッシェルから18人を選出

 就任して2年目となったジャック・ブルネル監督は1月9日に6か国対抗に向けた31人のメンバーを発表した。このメンバー構成には2つの特徴があった。まずは選手の所属クラブである。トゥールーズから7人、クレルモンから6人、ラロッシェルから5人とこの3チームからだけでほぼ6割を占めている。メンバーが発表された時点のリーグの成績は首位がクレルモン、2位がトゥールーズ、3位がラロッシェルであり、リーグ戦で好調なチームから選手を多く選出した。また、クレルモンは6か国対抗の開幕戦とチームの日本遠征が重なり、厳しいメンバー構成で日本に向かうことになる。

■新人5人を起用、南アフリカ出身のポール・ウィレムス

 そしてもう1つの特徴は代表出場歴がゼロの選手が5人もいることである。さらに代表出場歴が1試合という選手も3人いる。ワールドカップの7か月前になってこれだけの新人を起用せざるを得ないフランスのチーム事情の苦しさを示している。代表出場歴のない5人であるが、プロップのドリアン・アルデゲリ(トゥールーズ)、ロックのポール・ウィレムス(モンペリエ)、第三列のグレゴリー・アルドリット(ラロッシェル)、センターのロマン・エンタマック(トゥールーズ)、フルバックのトマ・ラモス(トゥールーズ)である。
 ウィレムスは南アフリカ生まれであるが、少年時代にはナミビアに住んでいたこともあり、ナミビアの18歳以下の代表としてプレーしたこともある。そして2012年の20歳以下のワールドカップで南アフリカが優勝した時の主将である。2014年にフランスに渡り、グルノーブルに所属するが、そのウィレムスの活躍を見たのが南アフリカ代表の監督も務め、当時モンペリエの監督であったジェイク・ホワイトである。現在はトヨタ自動車の監督を務めていることから日本の皆様ならばよくご存じであろう。ホワイト監督はウィレムスをモンペリエに呼び、モンペリエで活躍することとなる。そして3年間フランスに在住してプレーしていることからフランス代表の資格を得る。秋のテストマッチ後にフランス代表入りの準備があることを表明し、今回フランス代表のジャージを着ることになったのである。

■父エミールも偉大な代表選手であったロマン・エンタマック

 もう1人の注目はエンタマックである。名字からわかるとおり、1990年代にフランス代表として活躍したエミール・エンタマックの息子である。カメルーンを出自とする父エミールはリヨン生まれであるが、バックスの選手としてトゥールーズ一筋に17年間プレーした。ロマン・エンタマックはトゥールーズ生まれでトゥールーズに所属している。昨年は20歳以下の6か国対抗と20歳以下のワールドカップのいずれにも出場し優勝しており、低迷するフランス代表の救世主としてファンは期待していた。開幕戦に出場するとなれば19歳9か月で代表にデビューすることになる。思えば父エミールが代表にデビューしたのは1994年2月のことであり、当時19歳8か月であり、それ以降48キャップを重ねた。
 もし、エンタマックが出場するならばポジションはセンター、このポジションには昨年夏のニュージーランド遠征で主将を務めたマチュー・バスタローがいる。ブルネル監督はどちらを先発に起用するのであろうか。(続く)

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