第289回 2004年アフリカ選手権(2) グループBの3人のフランス人監督
■4チーム中3チームがフランス人監督のグループB
今回のアフリカ選手権に出場する5人のフランス人監督のうち前回はチュニジアのロジェ・ルメール監督とギニアのミッシェル・デュスイエ監督を紹介したが、今回は残りの3人を紹介しよう。残り3人は、ブルキナファソのジャン・ポール・ラビエ、マリのアンリ・スタンブリ、セネガルのギ・ステファンであり、奇しくも3人ともグループBのチームの指揮官である。
■第二のトルシエになれるかジャン・ポール・ラビエ
日本の皆様にとってはこの3か国のうち、日本代表前監督のフィリップ・トルシエが指揮をとったこともあるブルキナファソが一番気になるであろう。地元開催の1998年大会では、トルシエ率いる「エタロン(フランス語で種馬と言う意味)」という愛称の代表チームが快進撃を果たし、準決勝に進出する。しかしその後は元に戻り、2002年大会では本大会に出場したものの、グループリーグ最下位で敗退している。ここにきて地元開催の国際試合では好成績を残すトルシエの功績をあらためて認識する次第である。ラビエは1970年代から1980年代にかけてフランスのクラブチームで活躍したが、1986年に負傷のため31歳で現役を引退、指導者の道に入っている。ガンガン、アンジェなど2部に所属していたクラブの監督を務める。いつの日か国外で活躍したいと願っていたラビエにブルキナファソから声がかかったのは2002年7月のことであった。ラビエにとって最初のミッションはアフリカ選手権予選を勝ち抜いて5大会連続出場を果たすことであり、コンゴ共和国、中央アフリカ、モザンビークを破って目標を達成したのである。しかし、本大会のグループBはセネガル、マリ、ケニヤと強豪揃いである。このグループを勝ち抜けば、ラビエは第二のトルシエになることができるであろう。
■国際経験豊かなアンリ・スタンブリ
次に、前回開催国のマリを率いるスタンブリは国際経験が豊富である。アルジェリア戦争下にアルジェリアで生まれ、マルセイユのGKとして活躍、引退後はマルセイユの監督にもなり、八百長疑惑で2部に降格したマルセイユを1部復帰させた時の監督である。1998年にはギニア代表の監督に就任、その際のアフリカ選手権で敗れた相手がマリである。ギニア代表監督の後、スイスのシオンの監督を務め、2001年末から2003年初めまでフランスのスダンの監督であった。マリの監督となったのは昨年の9月のことであるが、マリは今大会で注目のチームである。それは今年から認められるようになった二重国籍選手に関わる新ルール(二重国籍を有する場合はユース代表の経験があっても別の国でフル代表になることができる)を活用し、フランス国籍を有する2人の選手を早速登録している。また22人の登録選手のうちほぼ半数の10人はフランスのクラブに所属しており、一昨年のワールドカップで活躍したセネガルの再来と言う声も高い。
■自らをフランスから追い出した国の指揮をとるギ・ステファン
そしてブルーノ・メツと言う偉大なフランス人監督の後を引き継いだのが、ギ・ステファンである。フランス国内で輝かしい功績を残している。FWの選手として1980年代までフランスのクラブで活躍し、1987年にカーンの監督になったのを始めに、アヌシー、リヨン、ボルドーの監督も務めている。そして1998年にフランス代表のコーチとなって世界一に貢献、そしてエメ・ジャッケ監督が去った後も引き続きロジェ・ルメール監督を補佐し、2000年欧州選手権を制覇、そして2002年のワールドカップを迎える。結果はご存知のとおり、惨敗であり、その責任をとってステファンもフランスを去る。そのステファンが指揮をとることになったのが、自分をフランスから追い出すことになったセネガルの代表監督だったのである。セネガルは前回大会で準優勝、同年に行われたワールドカップではベスト8と華々しい成果を残したが、その主力はフランスのクラブに所属している選手であった。彼らの多くはフランス以外のビッグクラブに移籍したが、それでも今回メンバーのうちフランスのクラブに所属している選手は22人中12人を数える。前任者のメツ同様、フランスリーグで彼らを熟知しているステファンは前回大会を上回る成績を残すことができるのであろうか。(続く)